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日立がマイナンバー対応BPOサービスを提供、公共分野でのノウハウなどを生かす

 株式会社日立製作所(以下、日立)と株式会社日立システムズは、マイナンバー制度対応に必要な業務をワンストップで代行する事業者向けサービス「マイナンバー対応BPOサービス」を、7月7日から開始する。

 日立 情報・通信システム社 公共システム事業部 官公ソリューション第三本部長の藤澤健氏は、「日立グループは、これまで個別にマイナンバー制度に対応したソリューションを提供してきたが、新たにBPOサービスを提供。マイナンバー制度の最新動向に対応し、信頼性の高いサービスを提供することになる」と、このサービスを説明。

 また日立システムズ クラウド事業推進統括本部クラウドサービス拡販本部長の中田龍二氏は、「現行業務やシステムを大きく変えることなく、日立グループと同等のセキュアなマイナンバー管理、運用体制を実現。業務の最適化を図ることができる。徹底したセキュリティ対策、日立グループでの運用ノウハウを活用して提供するものになる」と位置づけた。

日立 情報・通信システム社 公共システム事業部 官公ソリューション第三本部長の藤澤健氏
日立システムズ クラウド事業推進統括本部クラウドサービス拡販本部長の中田龍二氏
日立グループのマイナンバーソリューション
マイナンバー対応BPOサービス
サービスメニュー
サービスのイメージ

 マイナンバー対応BPOサービスは、日立グループと同一のシステムを活用するのでなく、日立グループが持つマイナンバー制度対応のノウハウを活用しているのが特徴で、公共分野におけるマイナンバー対応実績などをもとに新たに開発した、「マイナンバー管理システム」を利用する。

 これを、日立グループが持つデータセンターやコンタクトセンターと組み合わせることで、従業員のマイナンバー収集、登録、廃棄までの管理に加え、法定調書の印刷代行、ヘルプデスクまで、事業者の幅広いマイナンバー対応ニーズに応えるという。

 マイナンバー管理システムは、インターネットと直接接続しない場所に設置され、第三者が利用できないように、高度な手法で暗号化したIDデータとして保管しているという。また、利用する端末も制限。作業を行うスタッフの挙動については、セキュリティオペレーションセンターでログを監視し、情報漏えいを防ぐとした。

公共分野でのマイナンバー対応実績・ノウハウを活用
管理・運用体制・設備を最小化可能
データを持ち出せない運用管理で、高い機密性を実現している

 さらに、マイナンバーの収集には、記入者の作業効率化と誤記載の抑制を防止できる「マイナンバー収集キット」を使用。信書として授受するようにし、マイナンバーの授受が確実に行われたことを確認するために、郵便物の追跡サービスにも対応する。収集したデータは、日立システムズのBPOセンター内に設置した専用の独立区画において、OCRによる自動入力と目視での確認を併用してシステムに登録される。

 マイナンバーを記載する必要がある申告書や、法定調書の印刷代行、封入作業、シュレッダーによる書類破棄なども、すべて、日立システムズ内で一括して行うため、情報流出リスクを最小化できるとしている。

 「日立マネジメントパートナーと共同で、今年夏から運用テストを実施し、10月からのマイナンバーの付与、収集開始にあわせて、これらの機能を新サービスに組み込んで提供することになる。管理、運用体制については、組織的安全管理措置、人的安全管理措置、物理的安全管理措置、技術的安全管理措置という点で、セキュアな環境を実現できる」(日立システムズの中田本部長)という。

 また、業務を委託する企業監査義務に対応する特定個人情報保護評価書に対応した監査レポートを発行。管理者や従業員からの問い合わせには、マイナンバー制度に関する社内外の認定を取得した人材や、教育を受けた人材が対応するとのこと。

 「事業者からの問い合わせには、2015年8月にスタートするマイナンバー実務検定2級を持つ資格取得者が対応する予定であり、COPC、CMBOKといった認定を受けた環境からサービスを提供していく」(日立システムズの中田本部長)。

 なお、日立システムズのコンタクトセンターは、1000人規模の体制を持ち、国内で唯一、10年連続でCOPCを取得。CMBOKをベースにしたプロフェッショナル人材育成の実績では国内トップクラスだと説明した。

監査レポートを発行
社内外の認定取得者や教育を受けたスタッフが対応する

 これらのワンストップサービスにより、同サービスを利用する事業者は、マイナンバーの管理、運用体制、設備を最小限にできるほか、「事業者は、マイナンバーに極力触れない形で、行政機関などに申請、届け出が行える。マイナンバーの管理、運用業務に、リソースを割くことなく、本来業務に専念することが可能になる」(日立システムズの中田本部長)とのこと。これにより、「事業者のスピード経営の実現に貢献したい」(同)としている。

 同BPOサービスの対象は、数百人以上の企業から、大企業までが対象になる。参考価格は、5000人規模の会社の場合、扶養家族などの情報管理を含め、初期導入費用が600万円、年間費用が400万円になる。

 「組織的安全管理措置、人的安全管理措置、物理的安全管理措置といった仕組みを自社で用意するのに比べると、このサービスを利用したほうが、コストパフォーマンスはいいと考えている」(日立システムズの中田本部長)と語る。

 両社では、2018年度までに累計65億円の売上高を目標としており、数百社規模にサービスを提供する考えだ。「ここにきて、マイナンバー制度に対する動きが活発化しはじめている。マイナンバー制度への対応において、BPOサービスを利用するユーザーは、全体の数%程度になると考えているが、需要にあわせて、対応する人員体制を整えたい」(日立システムズの中田本部長)。

【追記・変更】

  • 初出時、「参考価格は明らかにされていない」としていましたが、その後、日立より価格の目安が公表されたため、追記しました。

大河原 克行