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標準となるか、複数のデジタル教科書を一貫した操作で扱える「CoNETS」

全国の小学校で利用開始

CoNETSの概要

 デジタル教科書の標準となるか――。デジタル教科書の共通プラットフォームを開発するCoNETSコンソーシアムが3月20日に提供開始した、小学校向けデジタル教科書と閲覧用ビューア。その内容を紹介する説明会が、CoNETSにITベンダーとして参画する日立ソリューションズのオフィスで開催された。

 CoNETSが開発したのは、出版12社(大日本図書、実教出版、開隆堂出版、三省堂、教育芸術社、光村図書出版、帝国書院、大修館書店、新興出版社啓林館、山川出版社、数研出版、日本文教出版)のデジタル教科書を一貫した操作性で使える共通プラットフォーム「CoNETS」だ。

 同プラットフォーム上では、各社のデジタル教科書が1つの仕組みで動作し、スタート画面の本棚にはインストールされたデジタル教科書が並んで表示され、統一ビューア上で共通の操作で利用できる。

各社のデジタル教科書が1つの仕組みで動作
統一ビューア上で共通の操作で利用できる

 東京学芸大学の加藤直樹准教授によれば、「従来のデジタル教科書の一番の問題が使い方がバラバラだったことで、主要5教科でも出版社が異なるのが一般的な教育現場では、端末やビューアの種類を問わず共通して教材が使える環境が求められていた」という。

 この「共通の操作感」を実現したのが、CoNETSの最大の特徴。加えて、手持ちのデータを貼り付けたり書き込んだりしてオリジナルの教材を作れるほか、理科の授業で国語の教材を参照する教科間連携など、新しい授業スタイルが可能となる。

教科間連携

 複数の出版社をまたいで、インターフェイスを統一したデジタル教科書は、国内では初とのこと。こうした動きは文科省の「学びのイノベーション事業」につづく「デジタル教材などの標準化事業」として進められているもので、将来的に国際標準化をめざした国を挙げての取り組みとなっている。

 CoNETSも国際標準化を意識しており、デジタル教科書のフォーマットは「ISO/IEC TS 30135-7:2014」として国際標準化された「EPUB3」を採用。音声・動画ファイルを扱うための独自拡張を加え、2015年1月27日にIDPF(International Digital Publishing Forum)にも登録された。現在、EPUBをデジタル教科書に拡張する「EDUPUB」の標準化活動に拍車が掛かっているが、それも見据えながら、CoNETSも標準化案を策定する見通しだ。

 また、機能実装にあたっては実証研究も実施。東京学芸大学が旗頭となり、東京都小平市立小平第七小学校と東京学芸大学附属小金井小学校の2校で実践授業を行い、子どもたちの反応を評価した。「とても使いやすい」や「とても楽しかった」といった声に加えて、いくつか問題点も見つかったため、CoNETSの製品化にあたってフィードバックを反映したという。

 デジタル教科書には何度でも書き込めたり、コンテンツにインタラクティブ性を持たせたり、子どもの学習・理解を促進するメリットがある。しかし、前述の通り、出版社・教科ごとにインターフェイスが異なり、使い勝手がバラバラだったことが課題だった。その課題を乗り越えるCoNETSが今後の標準となっていくのか――。

 4月からは全国の小学校で利用が開始された。まずは先生が使う指導用教材からの利用だが、すでに約3000校、約2万5000の教材が導入されているという。生徒が使う学習用教材についても、学習用ビューアがアプリストアで公開される4月末以降、出版各社から順次提供される予定。また、2016年には中学校向け、2017年には高校向けの教材も提供がスタートする予定だ。

実際の画面を写真で紹介

スタート画面となる本棚。各社・各教科の教科書が並んで表示される
実際の教材コンテンツ例
手書きペンで書き込み
指導用教材側ではスクリーンショット機能が用意される
ワークシートなどを作成して生徒の端末へ送信することも可能
生徒が提出したワークシートを一覧
画面を分割して比較表示できる
理科の教材から教科間連携する例
教材上にリンクを設定できる
左上にあるリンクボタンを押す
内容が関連する国語の教材へジャンプ
家庭科の教材
動画が埋め込まれている
画像をドラッグするようなインタラクティブな操作も。多数掲載されたおかずから好きな献立を組み合わせる例
iPad版。インターフェイスはiPadに最適化され、PC版と多少異なる

川島 弘之