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オールジャパンで教育ICT推進、「ICT CONNECT 21(みらいのまなび協創会議)」発足

実現なるか、教育ICTのはっきりとした体系化

 日本のICT教育ビジョンを策定する協議会「ICT CONNECT 21(みらいのまなび協創会議)」が2月2日に発足した。さまざまな教育団体や自治体によりこれまで取り組まれてきた教育ICT化の成果も採り入れながら、その先も見据えたビジョン策定や技術標準化をめざす。

発起人らが一堂に会す

 設立されたのは、「ICT Collaborative Open Network for New Educational Concepts with Technologies」、略して「ICT CONNECT 21」という協議会。日本教育情報化振興会会長、白鴎大学教授の赤堀侃司氏を代表とし、教育関連の9団体と6社が発起人に名を連ねるほか、アドバイザリーボードとして大学教授などの計10名も参画。総務省や文部科学省からも「政府一体となって取り組むと誓う」とコミットメントがなされるなど、当日の発表会は豪華な顔ぶれがそろう内容となった。

発起人企業
アライアンス構成団体

【教育情報化関連企業】(50音順)
・大久保昇:内田洋行代表取締役社長
・栗山浩樹:NTT取締役
・東海林崇:KDDI執行役員常務
・原田泳幸:ベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長
・宮原博昭:学研ホールディングス代表取締役社長
・宮内謙:ソフトバンク代表取締役社長

【教育情報化関連団体】(50音順)
・赤堀侃司:JAPET&CEC会長、白鴎大学教授(発起人代表)
・生田考至:日本視聴覚教育協会会長
・片山敏郎:日本デジタル教科書学会会長
・加藤憲治:日本eラーニングコンソシアム会長
・小宮山宏:三菱総合研究所理事長、デジタル教科書教材協議会会長
・白井克彦:日本オープンオンライン教育推進協議会理事長
・関戸雅男:日本電子出版協会会長
・辻村哲夫:学習ソフトウェア情報研究センター理事長
・𡌶弘明:eラーニングアワードフォーラム運営事務局理事長

【アドバイザリーボード(案)】
・五十嵐俊子:日野市立平山小学校校長
・市川伸一:東京大学教授
・陰山英男:立命館大学教授
・小泉力一:尚美学園大学教授
・小宮山宏:三菱総合研究所理事長、デジタル教科書教材協議会会長
・清水泰典:東京工業大学 監事・名誉教授
・南場智子:DeNA取締役ファウンダー
・三友仁志:早稲田大学教授
・三宅なほみ:東京大学教授
・山内祐平:東京大学教授

 活動目的は、「学習・教育オープンプラットフォーム」と関連技術の標準を策定し、普及を図ることで、誰もがいつでもどこでも多様な学習・教育サービスを享受できる環境を実現すること。昨今、教育のオンライン化・ICT化が進み、場所を問わずに教育が受けられるようになったほか、「反転授業」や「アクティブラーニング」といった新たな試みも始まっている。教育のあり方も変わってきており、海外の取り組みを見ても、教員による指導に加えて子どもたちが自主的に新しい環境に触れ、自ら問題解決するスタイルが求められているという。

 こうした流れに日本も遅れを取らないようにスピードアップを図るためには、今後、誰でもいつでもどこでも学べる多種多様なデジタル教材やツールの整備が一層望まれる。一方で、それぞれのシステムや教材がバラバラに機能するのではなく、適切な標準化の下、同じフォーマットや操作方法を共有して連携すれば、より大きな効果も期待できるだろう。

 実際に先進的な自治体による教育ICTの取り組みでも、導入技術や実装方法がバラバラで、そのコスト負担をどうするかといったさまざまな課題も浮き彫りになっている。そこで、さまざまな団体・企業・有識者・政府が産官学連携し、議論を深め、ビジョンを共有し、教育ICTの標準を策定しようというわけだ。

 めざす姿として、「多種多様なコンテンツを利用でき、多様な学びを自由に行える」ようにするほか、「全国へ普及可能なコストの低減」や「教育エコシステムの活性化とビジネスの創出」、さらには「システムの輸出をはじめとした国際貢献」を視野に入れる。

 体制としては、意志決定や対外窓口となる「幹事会」の下に「ビジョン委員会」「技術標準化WG」「普及推進WG」を設立。

委員会とワーキンググループ

 ビジョン委員会では、「中長期のあるべき学習・教育環境についてのビジョンやアクションプランの策定」を主な役割とし、「国内外の関連情報の収集・分析」「実現すべきエコシステムと実現のためのデザイン」「ゴール・アクションプランの共有」が活動内容。

 まずは近々に「VISION 2020」を策定し、「2020年までに誰もが、いつでも、どこでもICTを活用して、世界最高レベルの学びに取り組めるような環境を実現する」(ベネッセ教育総合研究所の新井健一理事長)という。「ビジョンにはこれまでのICT教育に関する実証実験などの成果も採り入れ、現在の動きを後押しするようなものとし、すでに取り組んでいる先進的な自治体のこれまでの投資が無駄にならないようにする」とのこと。

ビジョン委員会の概要
6つの要素に基づく「VISION 2020」を策定

 技術標準化WGでは、「ICT利用を普及させるため、利便性、高付加価値、低負担を図る技術の向上と標準化」をめざす。当面の活動は「国内・海外の関連企画調査」「あるべき標準化の姿の共有」「企画文書案の整備・公開」。

 「日本はこの分野で先頭ではなく、すでに諸外国でさまざまなことが取り組まれている。それらをきちんと整理した上で、どうしたら学習者にとって最善となるかを考えたい。技術的なかちっとした枠組みをきめるのではなく、技術を使ってさまざまな学習が採り入れられるようなインターフェイスを作ることが目的。導入側にとって、どの機種でも使えるとなれば、コストを抑えて導入できるようになる、それが標準化のメリットとなる。また、海外展開も視野に入れるため、用語は国際標準に準拠し、ほかの標準とコラボレーションしながら、アクティブラーニングや調べ学習といった日本が誇る学習方法を世界に発信するような、国際貢献の意味も持たせたい。ゴールはISOといったデジュール標準に制定されること」(慶應義塾大学の中村伊知哉教授)。

技術標準化WGの概要
標準化のメリット

 普及推進WGでは、「ICT利用への正しい理解と世論の喚起を継続的に行うこと」と「ICTによって新たな学びが生み出せるエコシステムの具現化を図ること」が役割。活動内容としては「協議会や参加企業との共同プロモーション」を進める。ここでは「PRワードなどの策定・発信」「関連イベントでの発信」のほか、地方自治体などに向けたトライアルパッケージなどを企画・提供する「出前セット」のキャラバンも行う。

 また、「ビジネス創出・拡大に向けた検討」も行う。多様な事業者が活躍できる事業環境整備を図るため、実際の学校での実証研究を通じ、先進的な教材やインフラの有効性などを検証するほか、学習・教育オープンプラットフォームの普及方策を検討し、「国家プロジェクトの実証研究を活用したビジネス機会を検討する」(慶應義塾大学の岩本隆特認教授)。

 そのほか、ICT教育分野のベンチャー企業などが多数提供しはじめたEdTechや、教育の中で生成されるビッグデータ分析を活用したビジネスモデルの検討を行うという。成果としては、2020年に向けて、日本型学習・教育ICTプラットフォームを国内外にアピール・発信し、新たな日本の成長エンジンとして教育産業が発展するよう、「新たな学びの可能性に関する世論形成」「オープンプラットフォームの全国浸透」「新たなビジネスモデルの創出」「海外展開の開始」などを視野に取り組んでいく。

普及推進WGの概要
共同プロモーションの内容
ビジネス創出・拡大に向けた検討

 デジタル教科書教材協議会会長の小宮山氏は「教育そのものについては日本は世界に誇るレベル。ただ、ICTが遅れている。たとえばフィンランドは進んでいるが、なぜ速いかというと人口も少ない小さな国だから。日本全体で同じコトをやろうとするとステークホルダーが多すぎて、調整に時間がかかりすぎる。ここをどうやってスピードアップするかが重要となってくる」とコメント。また、発起人代表の赤堀氏は「近年、Webをはじめとするデジタル環境にアクセスし、デジタルコンテンツを利用した学習が進んでいる。一方で今のデジタル環境には悪い面もあり、まさに光と影のようなもの。こうした中で子どもたちがどうすれば良い学習ができるかを考えなければいけない。この団体が何をするのかではなく、この団体を利用するつもりで、ぜひ皆様に参加・提案してほしい」と語った。

 現在、教育ICTは自治体ごとに進められている。この取り組みにより、現在バラバラな導入方法やコストについて一定の合意形成に結びつくかに期待がかかる。ただ、現時点では具体的な活動がイメージできないため、まずは近々に発表される「VISION 2020」の内容を待つことだろう。

川島 弘之