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日本HP、リモートデスクトップ向けや性能強化型の「Moonshot」新モジュール

サーバー向けの新AtomやOpteron Xで超高密度サーバーの適用範囲を拡大

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は9日、超高密度サーバー「HP Moonshot System」(以下、Moonshot)において、サーバーモジュールの新製品を拡充すると発表した。リモートデスクトップ(Citrix XenDesktop)環境向けの「HP ProLiant m700 サーバーカートリッジ」(以下、ProLiant m700)と、現行製品と比べて性能が強化された「HP ProLiant m300 サーバーカートリッジ」(以下、ProLiant m300)を新たに提供する。

HP ProLiant m700 サーバーカートリッジ
HP ProLiant m300 サーバーカートリッジ
日本HP HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏

 Moonshotは、米HPが「Project Moonshot」として開発を進めてきた超高密度型サーバー。2013年4月に第1弾として発表された製品では、4.3Uサイズの筐体「HP Moonshot 1500シャーシ」に、45台のサーバーモジュールと2台のスイッチモジュールを搭載でき、従来のラック型サーバーやブレードサーバーと比べても、非常に高密度のサーバーシステムを構築できる。

 ただしMoonshotは、日本HP HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏が「高密度化を進めるために開発された汎用のサーバーではない」と述べるように、どの領域でも一律に高い導入効果が見込めるのでなく、ある特定の目的に向けて設計され、その領域で高い効果が得られるようになっている点が最大の特徴といえる。

 今回提供されるサーバーモジュールでもこの特徴は変わらず、ProLiant m700は、デスクトップ環境をサーバー環境上で動作させ、シンクライアント端末などからリモートデスクトップでアクセスする、といったSBC(Server Based Computing)用途に特化して開発されているという。

 1つのサーバーモジュールに4ノード分の物理PCリソース(4コア Opteron X2150 APU、8GBメモリ、32GB iSSDで1ノード)を搭載し、それぞれでWindows 7環境が動作するので、1シャーシでは180ノード(4ノード×45モジュール)のPC環境を収納できる計算だが、現在、クライアント環境をサーバールームに集約しシンクライアントから利用する場合は、仮想環境を利用するVDIのアプローチが一般的になっている中で、どうしてこういった製品が必要になるのか。

 こうした疑問に対する回答として、橘氏は「仮想化技術によって物理リソースを共有するVDIでは、性能的に不足する場面が予想されている」点を指摘。これを解決するには、仮想化技術を用いず、1人が1つの物理リソースを専有するHDI(Hosted Desktop Infrastructure)が適していると説明する。

 また、仮想サーバーを利用しないのであれば、その面での導入・運用作業が不要になるため、管理する上でのメリットも大きい。実際、製品発表前にこれを紹介した顧客の中には、DaaS基盤として検討したいという企業もあったとのことで、日本HPでは、Moonshotの用途の広がりとしてProLiant m700に期待している。

ProLiant m700の概要
VDIとHDIの違い

 一方のProLiant m300は、Webサーバーやホスティングといった用途に向けて提供されていた従来のサーバーモジュール、「HP ProLiant Moonshot Server」の性能を強化したものだ。従来のモジュールがサーバー向けAtomとしては第1世代のAtom S1260(2.0GHz、2コア)を搭載していたのに対し、ProLiant m300では次世代のSilvermontアーキテクチャを採用したAtom C2750(2.4GHz、8コア)へ変更。メモリ搭載量も最大8GB(1333MHz)から最大32GB(1600MHz)へと強化された結果、大幅に性能が向上したという。

 橘氏によれば、「性能向上により、ラック型サーバーとほぼ同等の性能を1モジュールで実現できるようになったため、40台のラック型サーバーであれば、従来のような2つのシャーシではなく、1つのシャーシで置き換えられるようになった」とのこと。従来型のモジュール利用時でも、ラック型サーバーからの置き換えでスペースを77%、電力を57%、総コストを65%削減できるとしてきたが、ProLiant m300では、それぞれ98%、68%、79%の削減効果があるという。

 さらに性能強化によって、従来のホスティングや静的Webだけでなく、動的Webやコンテンツ配信、ビッグデータのオンライン分析と行った、処理能力が求められるニーズでの利用も可能になったとしており、適用範囲の拡大にも貢献するとのことだ。

ProLiant m300の概要
従来型よりもコスト効果が高まったほか、適用範囲も拡大したという

 価格は、ProLiant m700の場合、シャーシ、サーバーモジュール×45、スイッチを含めて2248万8900円から。ProLiant m300の場合は、シャーシ、サーバーモジュール×45、スイッチを含めて1607万9700円から、となる。

 なお日本HPでは、HDIソリューションの提供にあたり、マルチメディアの処理性能を従来モデル比で約1.5倍向上させたシンクライアント端末「HP t620 Thin Client」も製品化している。価格は5万4600円から。

石井 一志