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NTT Com、RagingWire社とVirtela社買収~ベライゾンら世界4強を追撃
買収金額は2社で約857億円、クラウド市場での海外進出を加速
(2013/10/29 06:00)
NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は10月28日、米国のデータセンター事業者のRagingWire社と米国のネットワークサービス事業者のVirtela社の買収を発表した。買収総額は両社で8億7500万ドルとなる。
NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は10月28日発表会を開催。NTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長 有馬 彰氏は今回の買収を、NTT Comが2年前に発表した「Global Cloud Vision」に基づく展開だと位置づけた。
有馬社長は今回の買収について、「財務もしっかりしているし、いい値段で買えたかなと思っている」と評価。2000年のベリオ買収については財務基盤が確立していない面もあったが、今回の2社は黒字経営を継続しているとした。
「『Global Cloud Vision』では、ネットワーク、アプリケーション、セキュリティをトータルで提供したいと申し上げたが、Raging社はクラウドの基盤であるデータセンターの北米における提供能力を高め、Vertera社はクラウドに接続するネットワークの増強が行える。NTT Comはネットワーク事業者なので、クラウドとネットワークはあらかじめ接続してあり、クラウドに接続するネットワーク料は無料という点が特長。Virtela社のネットワークもNTT COmのArcstarと相互接続するため、Virtela社のネットワークからArcstarへ無料で接続できることになる。基本的には『Global Cloud Vision』の一環だと考えている。」(有馬社長)
また、データセンター事業のRaging社だけでなく、Vertala社も営業活動は北米地域でしか行っていないと述べ、欧米の市場に基盤を築くにあたって「いきなりNTTコミュニケーションズの名前で入っていくのは難しい」として、「両社は基本的に北米の会社なので、米国企業がおもな顧客になる。NTT Comは米国の顧客がないので、顧客基盤が拡充できたかなと思っている」と説明。両社の持つ顧客も含めて米国市場進出の足がかりとする、グローバル戦略の一環としての買収という位置づけを明確にした。
今回買収した両社との統合を進め、両社の設備や技術を活用することで、グローバルなエリアにおいて「ベライゾン、Amazonよりカバレッジを広げていく」(有馬社長)。有馬社長は「NTT Com Forum 2013」で、APECについては香港、マレーシア、タイ、シンガポールなどで自社DCが今年から来年にかけて開設/開設予定だが、すでに市場が出来上がった欧米についてはいきなり自社で参入しても難しいとして、すでにサービスを提供し顧客を持つ企業を買収する形で進出する手もあると述べていた。
NTT Comの売上に与えるインパクトについては、「NTT Comの海外売上高の目標は今日の段階では申し上げられないが、(国内・海外)合わせて今年の売上は2000億の予定」とコメント。数字目標としては、「NTT Comは4月にクラウド事業の説明会を開催した際に、2012年度のクラウドデータセンター事業の売上は990億円だったが、それを2015年に2000億にするという目標を掲げた。その目標に向かって進めている」(有馬社長)と述べた。
RagingWire(レイジングワイヤー)社
RagingWire社(RagingWire Data Centers)は、2000年設立。米カリフォルニア州サクラメントに本社を置くデータセンター事業者で、カリフォルニア州サクラメントとバージニア州アッシュバーンにデータセンターを持つ。サクラメントDCは第1棟が約8000平米、第2棟が約8500平米で、現在第3棟を建設中。アッシュバーンDCはサーバールーム面積が6700平米で、第2棟が近く着工予定。アッシュバーンでは約12万平米の用地を確保している。
RagingWire社は株式の80%を約3億5000万ドルで取得することで合意。10月28日に株式取得に関する契約を締結した。
RagingWire社は電源の冗長性について、2N+2という米国で特許を持った方式でデータセンターを提供している。2004年以降は黒字経営が続いており、2013年度の売上高は2500万ドルとなる見込み。最近は年率約30%成長しているという。
2.3万平米のサーバールーム面積を持つRagingWire社買収により、NTT Comの米国サーバールーム面積は約2万平米から4万3000平米に拡大。RagingWire取得後のNTT Comが持つ全世界のデータセンターは152拠点12.1万平米となる(計画中を含む)。
データセンターについては所在地を知られたくないなどで顧客の社名を公表できないケースが多いが、PolycomやNVIDIAなど、RagingWireの顧客企業はICT事業者を中心に約200社に上る。
有馬社長は、「NTT Americaでデータセンターを9カ所持っているが小さいところが多い。Equinixなどと比べるとまだまだだと思っていて、北米でいい会社はないかと探していた。RagingWire社のデータセンターは立地も良く電力の冗長性も十分。規模が大きいため効率的な運用が可能」だとして、RagingWireに比べ既存の小さい既存のデータセンターから順次RagingWireにシフトしていくことになるとの考えを示した。
RagingWire社の持つ独自技術では、電源装置などが非常に速く交換できるほか、ロードバランサーの高度な調整技術を持ち、リソース利用効率の良いデータセンター運営が可能だという。有馬社長は、「データネットワーク事業全体の効率化を図るという点では、彼らのオペレーションを盗むくらいのつもりでやるといいのかなということで買うことにした」と説明。データセンターの効率的な運用ノウハウも統合していくと述べた。
Virtela(バーテラ)社
Virtela社(Virtela Technology Services Incorporated)は2000年設立。米コロラド州デンバーに本社を置き、196の国・地域においてMPLS/IPSEC VPNを含む企業向けネットワークサービスやクラウド型マネージドネットワークサービスを提供している。
Virtela社は株式の100%を約5億2500万ドルで取得することで合意。10月28日に株式取得に関する契約を締結した。
Virtela社は、グローバルで一元化されたオペレーション運営や仮想化技術など自社システム開発力が特長で、LANのネットワーク技術を仮想化するNFV(Network Functions Virtualization)を用いたクラウド型マネージドネットワークサービスを提供している。サービスを提供する国・地域は196カ国。現在の売上規模は年1億2500万ドルで、財務的にも2010年以降黒字経営を続けているという。
顧客企業には、ボーイング、コカ・コーラ、シェブロン、P&G、UPS、Honeywell、パラマウントなど誰もが知る大企業が名を連ねる。
有馬社長はVirtela社について「回線を自社で持つNTT Comに対してVirtela社は回線を借りているという違いはあるが、事業内容としてはほぼNTT Comと同じ」と説明。
その上で、Virtela社買収の利点として、(1)Virtela社の自動化が進んだ効率的かつ一元的なオペレーションとNTT Comのオペレーションの統合による事業効率化向上、(2)ファイアウォールやWANの高速化など従来専用装置で行っていた処理をソフトウェアによって行うNFV技術を使ったサービスをすでに提供しており、NTT Comでもその技術が利用可能、(3)NTT Comが160カ国でサービス提供しているのに対しVirtela社は196カ国で、ネットワークのカバレッジエリアの拡充が可能、(4)両社のネットワーク統合によるバックボーンの効率利用――の4点を挙げた。
NFVについては、NTT Comでもこれから提供をしようかと思っていたが、Virtela社が持つ技術を使えるため、自社で開発をせずともより速く提供でき、サービス提供のスピードアップが可能だとした。