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「攻め」のIT投資に遅れる日本企業、日米企業のIT投資意識の違いが浮き彫りに~JEITA調査
(2013/10/9 13:11)
一般社団法人 電子情報技術産業協会(以下、JEITA)は9日、「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」に関する調査結果をまとめた。
同協会 ソリューションサービス事業委員会がIDCジャパンと共同で、2013年6月~7月にかけて、日本の企業216社、米国の企業194社の合計410社を対象に、経営者およびIT部門以外のマネージャー職以上を対象にアンケートを実施。調査を担当したJEITA ソリューションサービス事業委員会の谷口浩一委員(=日本IBM)は、「国内企業における『攻め』のIT投資が、米国企業に比べて低い理由を探ることを目的としたもの。今回の調査では、非IT部門を調査対象とし、企業内でのIT/IT部門がどのように位置づけられているのかを調査した」という。
同調査によると、IT投資が極めて重要とする企業は、米国では75.3%に達したのに対し、日本ではわずか15.7%にとどまった。また、ITを活用した経営に対する期待としては、日本は「業務効率化、コスト削減」がトップであるのに対し、米国では「製品・サービス開発」や「ビジネスモデル変革」などとなっており、米国では、競争力向上のためにITを活用する姿勢が強く見られたという。
調査では一部企業を対象にインタビューも実施しているが、米国企業においては、「製品が市場で競争力を持つためには、ITは重要である」、「ITは市場における自社の競争優位性を生み出すものである」という声が相次いだという。
ITがもたらした効果では、日本は「社内業務効率化/労働時間減少」が44%、「社内情報共有の容易化」が41%と上位を占めたのに対して、米国では、「製品・サービス提供の迅速化、効率化」が54%でトップ。次いで、「社外情報提供の効率化、提供量増大」が34%となった。
「この結果からも、国内企業は効率化などの『守り』の投資であるのに対して、米国では『攻め』のIT投資となっている」(谷口委員)という。
「今後のITに期待する効果」は変わってくる?
今後のITに期待する効果については、日本は同様に「社内業務効率化/労働時間減少」が35%で首位になり、米国の企業では同様に「製品・サービス提供の迅速化、効率化」が45%で首位となった。
だが、ここでは、日米企業ともに、今後は変化していく傾向が見られている。
日本では、「市場環境の変化に対する迅速な対応」が32%、「意思決定の迅速化」が31%、「新規顧客の獲得」が27%、「顧客の嗜好やニーズの把握」が24%となり、ITを活用して外部に働きかける傾向が見られているとしたほか、米国では「顧客の嗜好やニーズの把握」が26%、「将来の市場動向、トレンド予測」が19%となり、ビッグデータやソーシャルメディアの利用が進むことを想起させるとしている。
「日本の企業においても、若干なりとも攻めに活用する動きが見られる」(谷口委員)と期待を寄せた。
IT予算は「変わらない」が約半数、新ソリューション認知度でも米国と差
一方、今後のIT予算については、米国では80.4%が「増える傾向」と回答したのに対して、日本では「増える傾向」が39.8%、「変わらない」が49.5%となった。
CIOの設置状況については、米国企業では73,7%がCEOの直下にCIOがいると回答しているのに対して、日本の企業では16.7%にとどまった。米国では日本の4.4倍、CEO直下のCIOがいるのに対して、日本では、半数以上の企業では非役員の情報システム部門長がトップになっているという。
IT部門に期待することに対しては、日本では「ITによる業務効率化の提案と実行」、「低コストでのオペレーション」、「要望への迅速な対応」となったのに対して、米国では「システムの可用性向上」、「ITによる業務効率化の提案と実行」、「ITによるコスト削減の提案と実行」となった。だが、「米国企業の方が回答割合として、全般的に高い傾向があり、IT部門に対する期待が広範である」などとしている。
また、新規ソリューションの認知度については、クラウドやビッグデータについては、日本で「聞いたことがない/知らない」が20%以上を占めたのに対して、米国ではこれらが1けた台となった。
「日本の企業の非IT部門は、プライベートクラウドおよびパブリッククラウドでいずれも約45%の回答者が、聞いたことがない/あまりよく知らないと回答している。ビッグデータでも43%となっている。知らないものは使えない。これが新たなソリューション活用において米国の方が進んでいる理由といえる」(谷口委員)とした。
さらに今回の調査では、IT投資重視派とする34社の企業についても分析しており、「IT投資を最重要と見ている企業は、それ以外の企業に比較して、激しい市場環境にあり、自社の市場が成長すると見ており、製品、サービスそのものが成長の源泉と自覚している」とする。また、「極めて重要とする点では、『製品/サービス提供の迅速化/効率化』、『新規顧客の獲得』など、攻めの部分に投資している。競争力を持つためにITが重要な役割を果たすと判断している。また、これらの企業は、リーマンショック後の売上高/利益回復が高いといえる」と分析した。
日米のITに対する期待の違いが鮮明に
JEITA ソリューションサービス事業委員会の古田英範委員長(=富士通)は、「IMD(International Institute for Management Development)の競争力ランキングによると、日本は総合24位であり、国際競争力の向上を図ることが急務。安倍政権が、今年6月に、世界最先端IT国家宣言を発表したが、その実現のためにも産官学をあげてITの利活用を促進すべきである。そのためには、経営者や非IT部門がITをどう評価しているのかを理解することが必要である」という点を強調。
その上で、「調査ではJEITAとして、初めて非IT部門を対象に実施し、経営者や事業責任者がどう考えているのかを浮き彫りにした。今回の調査結果から、日米のITに対する期待の違いが鮮明になった。米国はITを投資と見ているのに対して、日本はITをコストとして見ているのではないだろうか。日本の競争力強化に向けては、今回、明らかになった日米の違いを広く共有することが重要である。JEITAでは、日本の企業のIT部門はもちろん、非IT部門に対しても情報提供、提案活動を加速したい。まずは講演会の開催などを計画している」と話した。
また、「今回調査対象となった回答者の職務範囲では、米国が45%の企業が経営層が回答したのに対して、日本では最も多いのが、営業部門をリードする人たち。ここからも、米国ではITを経営ツールと位置づけているのに対して、日本では営業ツールにとらえていることが、浮き彫りになっている」(谷口委員)と分析した。