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日立、BS-TBSと共同で音声SNS「talkfield」を提供開始~クラウド、ビッグデータなど次世代ビジネスへの布石に
(2013/8/12 15:34)
株式会社日立製作所(以下、日立)は9日、BS-TBSと共同で、スマートフォンでの利用を前提にしたSaaS型音声SNSソリューション「talkfield(トークフィールド)」の提供を開始することを発表した。昨年11月に両社が締結した業務提携にもとづくもので、8月9日より順次サービスを提供していく。
日立 情報・通信システム社 プラットフォーム部門COO兼通信ネットワーク事業部長の和田宏行氏は「B2B、B2B2Cともに音声を活用したSNSの需要が高まりつつあるが、そうした声に十分に応えられるサービスはこれまでほとんど存在しなかった。音声によるコミュニケーションのメリットを生かすtalkfieldでもって、新しいビジネスモデルを構築していきたい」と語る。
talkfieldは日立製作所のクラウドソリューション「Harmonious Cloud」上に構築されたSaaS型のソーシャルサービス。共用サイト(Public)と専用サイト(Private)が用意されており、導入企業は「広く一般ユーザーに向けて情報を発信したい場合は共用サイトを、会員制サイトや企業内ユースでの利用を前提にした場合は専用サイトを、それぞれ選択できる」(和田氏)ようになっている。提供サービスは、
・シルバー:共用サイト上で提供。本格導入前の試験導入的なサービス。talkfieldの標準アプリケーションの機能(公式アカウント、パスコードなど)を手軽に試してみたい企業向け
・ゴールド:共用サイト上で提供。B2B2Cサイトなど、一般ユーザーに対し、専用アプリケーションでもって情報発信を行いたい企業向け
・プラチナ:専用サイト上で提供。社内SNSなど、情報リスクに配慮する必要がありながらも、標準アプリケーションを利用しコストを抑えて構築したい企業向け
・ダイアモンド:専用サイト上で提供。ニーズにあわせて、録音時間(デフォルトは最大15秒)などを含むさまざまな機能のカスタマイズを必要とする企業向け
の4段階に分かれており、このほかにも専用アプリケーションや専用アカウントを提供するオプションサービスや、導入支援サービスなどが用意されている。talkfield標準アプリケーションについてはiPhone(iOS 5以上)およびAndroid搭載スマートフォン(Android 2.3/4.0/4.1)に対応したものがすでにApp StoreおよびGoogle Playで公開されている。
サービスの形態は、ユーザー全体でコンテンツを共有する「パーク」、共通の目的をもったメンバー間でコンテンツを共有する「カフェ」、特定の相手にだけメッセージを送る「グリーティング」の3つが用意されており、パークは8月9日から提供が開始されている。カフェについては8月24日および25日に開催されるBS-TBSの謎ときイベント「BS-TBS サマーパーティ 2013×ミステリーナイト『プリズン BLITZ』」にあわせ、8月19日から提供が予定されている。グリーティングは10月1日にサービス開始の予定。
文字だけでは伝わらないメッセージを音声SNSで
talkfieldの最大の特徴は音声による投稿がメインのソーシャルサービス基盤という点だ。和田氏は「声によるメッセージ発信のメリットは大きい。未就学児童や中高年、お年寄りなど文字入力が苦手な層を解放するだけでなく、時間や場所の制限で文字入力が難しい職場などでの利用シーンが広がっていくと考えられる。
例えば配送ドライバーなどは運転や運搬に携わっている時間が長いので文字入力を行いづらいが、音声で“配送完了”とメッセージを社内SNSに投稿できるようになれば、利便性は大きく向上する」と語り、企業や社会インフラ、自治体などでの社内SNSの基盤としての利用促進をめざすとしている。
「文字だけでは伝わらないメッセージというものがある。社長から社員に向けたメッセージ、災害時の安否確認のメッセージなどは文字よりも音声のほうがはるかに効果的だと思う」(和田氏)。
日立は昨年11月からBS-TBSとtalkfieldに関する業務提携を締結し、実用化に向けてのトライアルを繰り返してきた。その結果、「ユーザーの操作性向上に努め、シンプルなGUIを採用した。効果音やBGMをメッセージに挿入できる“音スタンプ”や、位置やスポット情報を地図表示できる“位置情報付与機能”などはユーザーの声を反映させた機能を多く取り入れている」(和田氏)と、利便性が大きく向上したことを強調している。
会見に同席したBS-TBS 制作局事業部長 統括プロデューサーの丹羽多聞アンドリウ氏は「音声によるSNS基盤はこれまであまり良いものがなかったが、talkfieldはさまざまな可能性を感じさせてくれるサービス。BS-TBSとしては当社のコンテンツ力を背景にしたソーシャルサービスをtalkfield経由で発信し、新しいビジネスモデルを模索していきたい」と語っている。
日立の自前のクラウド基盤であるHarmonious Cloudを使ったtalkfieldだが、和田氏は「talkfield単独で大きな収益を生み出すビジネスになるとは思っていない」と語る。
むしろtalkfieldをきっかけに、クラウドやソーシャル、ビッグデータ、モバイルといった現在のITトレンドの主流である分野に対して、副次的な効果を生み出していく狙いのほうが強い。
丹羽氏は「放送局も放送局外収入がビジネスの主要な柱になりつつある。そうした中でSNSは今後の収益にかかわってくる可能性が高い。日立とのこうした提携を通じ、われわれも経験値を増やしていきたい」としているが、日立にしても同様で、talkfieldの市場投入そのものが同社にとってのトライアルともいえる。「クラウドやソーシャルのビジネスは先が見えない部分も少なくない。
だが、やらなければ次につながらないのだけは確かだ」と和田氏。次世代のビジネスへの布石として開始した音声SNSがどういった広がりを見せるかに注目したい。