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SAPジャパン、ビジネスユーザーでも使える予測分析ソフト

「SAP Predictive Analysis」を発売

SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスソリューション統括本部長の堀田徹哉氏

 SAPジャパンは5月30日、予測分析ソフトウェア「SAP Predictive Analysis」を同日より提供開始すると発表した。直感的なGUIインターフェースにより、ビジネスユーザーでもモデリングが可能になるという。

 SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスソリューション統括本部長の堀田徹哉氏は、「企業は過去を分析することで将来何が起こるかを予測したいというニーズをずっと持っていた」と話す。長期間ニーズがあったにも関わらず、今になってこうしたソフトウェアを単体で提供する理由は、ビジネスのスピードが高速化していること、情報量が増えていること、そしてコンピューティングテクノロジーが進化していることにあるという。

 「企業はこれまで以上に速いスピードで顧客のニーズに対応し、リアルタイムで問題解決することが求められている。また、流通する情報量が爆発的に増えている一方で、活用できる情報は限定的だという現実があり、そのギャップをどう埋めるかが大切になってきている。さらに、コンピューティングテクノロジーが進化し、大量データをリアルタイムで分析できるようになったことから、過去に何が起こったかを分析して今後を予測することが容易になってきた。こうした背景により、新たな予測分析ソフトウェアを提供するに至った」(堀田氏)。

 SAPでは、インメモリプラットフォームの「SAP HANA」を3年前より提供しており、HANAのPredictive Analysis Libraryを使った予見分析も可能だという。しかし、HANAに直接実装することは「ビジネスユーザーにはインターフェースがあまり使いやすいものではなく、価格も手頃ではなかった」と、SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部 アナリティクスソリューション本部 シニアソリューションプリンシパルの瀬尾直仁氏。一方、SAP Predictive Analysisは「ビジネスユーザーが使えるよう、すべてGUIベースになっている。また、最終的にHANAにシステムを移行させたいと考えているユーザーがSAP Predictive Analysisでスモールスタートし、どういったビジネスモデルに使えるか検証しつつ段階的に導入することが可能」(瀬尾氏)としている。

 SAP Predictive Analysisには、データ加工機能が備わっており、複数のソースからデータを取得して加工することが可能だ。また、大量データから自動的にルールやパターンなどを検出、将来予測し、ビジネスアクションにつなげられるという。さらに、インメモリデータマイニング機能や予測分析アルゴリズムが準備されているため、コーディングすることなくRオープンソース統計分析言語が使用できるという。また、SAP HANAと共に利用することで、より高速な予測分析も可能だとしている。

 これまでにもGUIベースの予測分析ソフトウェアは存在したが、「モデリングを実装すると結果を得るまでに非常に時間がかかるケースが多かった。予測の信憑性の高さはサンプリングの量にも左右されるが、これまでは時間がかかるために小さいデータに分けて何度も分析するか、大量データを何日もかけて分析するしかなかった」と瀬尾氏。SAP Predictive AnalysisとHANAを連携させた例として、「ある自動車のエンジンメーカーでは、これまで50時間かけてエンジンを回して実証実験し、しかもそれだけの時間をかけても実験が失敗するということもあったが、SAP Predictive AnalysisとHANAを連携させたことで、最初の2分で実験が成功するかどうかがわかるようになった」と説明する。

SAP Predictive Analysisを提供する背景
SAP Predictive Analysisの価値

日本で予測分析をより身近に

 SAP Predictive Analysisの日本における戦略は3つあるという。まず1つは、HANAとのパッケージングによって付加価値を創出することだ。「SAP Predictive Analysisは独立した製品だが、HANAと連動して利用することでさらなるパフォーマンスが発揮できる」と堀田氏。また、SAP Predictive AnalysisとHANA、そしてSAP BusinessObjectsをパッケージ化した「SAP HANA Insight」も提供するという。

 2つ目は、「日本で予測分析をより身近に使ってもらいたい」(堀田氏)ということだ。SAP Predictive Analysisには、パートナーらが持つノウハウや分析アルゴリズムを組み込めるため、「パートナーやデータサイエンティストが独自のノウハウを活用してSAP Predictive Analysisに固有の機能を搭載した上で、彼らの顧客に提供できる」と堀田氏は話す。予測分析は独自の分析チームが必要で、大企業でしか導入できないことも多いが、「こうしたパートナーのエコシステムを通じて中堅中小企業でも身近に予測分析を使ってもらいたい」としている。

 3つ目は、データサイエンティストの裾野を広げることだ。「ツールは充実してきたが、そのツールを使いこなす人材が十分でない。欧米では市場が成熟しつつあるデータサイエンティストを、日本でも育成していきたい」と堀田氏は話す。そこで、1時間あたり99セントで利用可能な「SAP HANA One」を通じてデータサイエンティストの市場を拡大し、同社製品の利用者を増やすと共に日本企業の分析力向上に貢献したいとした。

日本での戦略
SAP Predictive Analysisの画面

(沙倉 芽生)