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“サービスプロバイダSDN”を構想するエリクソンの取り組み
(2013/4/26 10:26)
エリクソン・ジャパンは4月25日、プレス向けの説明会を開催し、同社のCTOの藤岡雅宣氏が「サービスプロバイダーSDNとエリクソンクラウドシステム」と題する講演を行なった。
同社が考える“サービスプロバイダーSDN”とは、技術要素面ではOpenFlowを活用したSDNへの取り組みだが、対象をデータセンター内部に限定せず、ネットワーク環境全体に拡張した上で、サービスプロバイダーが求める機能を同時に実現していこうとする点に特徴がある。SDNという言葉自体は最近になって急速に注目を集めるようになった新しいキーワードだが、SDNが目指す機能やコンセプトは従来全く存在しなかったものということではなく、同氏は「サービスプロバイダーは既存ネットワークで既にSDN的なプロトコルやシステムを利用」していると指摘する。この認識は、「SDNへの進化における課題は、既存システムと新規システム/プロトコルの統合」にある、という問題意識に繋がる。
同時に、同社が注力するのがNFV(Network Function Virtualization:ネットワーク機能の仮想化)に関する取り組みだ。今年1月には“NFV Initiative”が立ち上がっており、2014年後半をめどに「要求条件と勧告を業界に提示」する予定となっている。NFVが実現しようとしているのは、端的に表現すれば「ソフトとハードの分離」だ。従来のルータが、ハードウェアとソフトウェアが密接に一体化したアプライアンス型の実装となっており、コストや柔軟性、拡張性が十分ではないことに対する新たな解となり得るものだ。
OpenFlowが「コントロールプレーンとデータプレーンの分離」を掲げ、データプレーンは安価なコモディティハードウェアでカバーできるとしたのを受け、それをより広範囲に拡張した考え方だと見ることもできるだろう。しかし同氏は、NFVには課題もあると指摘する。それは、ユーザー視点で見た場合、ハードとソフトが別々に供給された場合にその組み合わせに対して誰が責任を負うのかといったインテグレーションの問題や、ネットワーク運営者はやはり“キャリアグレード”の高信頼/高性能なハードウェアを必要とするはずだといった点だ。
一方で、同社が考えるNFVのメリットには、「その時点で最新のハードウェアを利用できる」「コモディティ化された汎用のハードウェアであれば、迅速に導入でき、既存ハードウェアをプール化して利用することもできることから必要なリソースを動的に割り当てることが容易になる」といった点が挙げられる。これらのメリットを追求しつつ、課題となる点を適切に解決していくことに取り組んでいくことになるだろう。
同氏がサービスプロバイダーSDNのユースケースとして挙げたのが、“Service Chaining(サービス・チェイニング)”だ。これは文字通りネットワークサービスを鎖を繋いでいくように順次連携させていき、必要に応じてサービスの組み合わせを動的に変更していく、といった機能になる。また、“Virtual Network System(VNS)”では、SDNで集中制御される複数のルータが密接に連携することで巨大な仮想ルータを構成し、内部に柔軟に再構成可能な冗長経路を持つ高信頼/広帯域のネットワークを実現できる。
製品へのサービスプロバイダーSDNの実装も進んでおり、今年第4四半期には最初のサービスプロバイダーSDNとしてサービス・チェイニングを商用提供、来年にはVNSの提供も開始する予定だという。
これまでは仮想化データセンターを実現するための必須要素として、エンタープライズユーザーやクラウドプロバイダなどのデータセンターに適用される技術と見られがちだったSDNだが、エリクソンの取り組みでは対象ユーザーがサービスプロバイダーやネットワーク事業者にまで拡張され、より広範な取り組みとなっている。SDNという考え方が一時的なブームではなく、より普遍的な存在となりつつあることの表われだと言えそうだ。