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NICT、109Gbpsの8K非圧縮映像と音響環境の分割遠隔配信に成功

札幌で撮影した8K映像を分割し、複数回線を経由して大阪で復元

実験の全体構成

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は3日、産学官関係組織48団体の参画によるNICT主催の実証実験として、100Gbps超の8K非圧縮映像と、8K相当品質である立体音響の遠隔配信に成功したと発表した。実験の成果は、2月6日から開催される「さっぽろ雪まつり」の映像中継として、2月6日~7日にグランフロント大阪内のナレッジキャピタルで一般公開する。

 NICTおよび雪まつりにおける映像配信実証実験に参画する団体では、2014年から8K非圧縮の映像配信に成功している。今回の実験では、従来の25Gbps映像配信の約4倍超となる109Gbpsの8K非圧縮映像を分割し、複数の100Gbps回線を併用して伝送することに、世界で初めて成功。同時に、立体音響再現のため、ハイレゾ音声を収録(192kHzサンプリング、24bit、16ch)し、遠隔地への伝送を行い、8K映像と音声を合わせた高臨場感環境を表現した。

 実験では、複数台の8Kカメラを合わせた広視野角の8K映像(109Gbps)を札幌で撮影し、映像ストリームを複数の回線に分けて伝送するために、リアルタイムに分割。データは、それぞれ距離や遅延時間が異なる複数の回線で伝送されるため、経路制御による遅延時間調整を行うことで、再生場所である大阪で同期して、再度、一つの映像ストリームとして再構築される。立体音響データは、映像と同期して札幌で収録し、大阪に設置した立体音響再生環境にて映像と合わせて復元される。映像アプリケーションのみでは処理が難しい超広帯域配信を、ネットワーク側での遅延調整を併用することで実現した。

 また、今回の実験では、映像のライブ配信と同時に、JGNとStarBEDを利用し、高臨場感環境の収録、再生も実施した。

 実験は、JGN上で運用中のネットワーク仮想化技術と合わせて、国立情報学研究所(NII)が構築・運用するSINET5上で、実験的に提供するL2オンデマンドサービスの双方を利用し、途中の中継経路を細やかに設定することで、遅延時間のコントロールを可能とした。

 NICTでは、今回の実験は、ネットワークテストベッドJGNを実験基盤として、多数の企業、大学や地域団体が、研究開発中の技術や製品プロトタイプ、運用技術を持ち寄り連携することにより実現したと説明。実験で実証された各種技術は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会で想定される地域のライブ中継会場とメディアセンター間での8K/4Kインターネット高画質映像伝送といった場面において、1本の回線では十分な帯域が確保できないような環境でも、複数本の回線を併用することによって、配信映像の高画質化が期待されるとしている。