日立、2012年度第2四半期は減収減益~ルネサスの持分法損益悪化など響く


 株式会社日立製作所(以下、日立)は30日、2012年度第2四半期(2012年4月~9月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比4.7%減の4兆3555億円、営業利益は4.1%減の1636億円、税引前利益は12.6%減の1162億円、当期純利益は40.9%減の301億円の減収減益になった。

 日立の代表執行役 執行役副社長の中村豊明氏は、「売上高は当初見通しに比べて1ポイント増収。ハードディスク事業や中小型ディスプレイ事業の売却影響を除くと、前年同期比2%の実質増収になる。また、営業利益では、見通し比では136億円増加しており、売却事業の影響を除くと33億円の増益になる」と、概況を説明。

 その上で、「営業外損益では、ルネサスエレクトロニクスの退職希望が7400人にも達し、人員削減費用が予想よりも100億円程度多くかかったことや、グループ会社で実施している構造改革費用により、前年同期に比べて97億円悪化している。また、最終利益は世界経済の低迷に加え、ルネサスエレクトロニクスなどの持分法損益が悪化したものの、12四半期連続で黒字を計上している」と、ルネサスエレクトロニクスの影響を説明している。

2012年度第2四半期 連結業績の概要代表執行役 執行役副社長の中村豊明氏

 

情報・通信システムは増収減益、ストレージは増収

 事業セグメント別の業績では、情報・通信システムの売上高は前年同期比5%増の8329億円。営業利益は同12%減の272億円となった。

 情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比3%増の5707億円、営業利益は17%増の1010億円。そのうちソフトウェアの売上高が10%減の752億円、サービスが6%増の4954億円。ハードウェアの売上高は8%増の2622億円、営業利益は23%増の190億円。そのうち、ストレージの売上高は2%増の942億円、汎用コンピュータやUNIXサーバーで構成されるサーバーは9%増の261億円、PCサーバーおよびビジネス向けクライアントPCで構成されるPCは18%減の119億円、通信ネットワークは3%減の594億円。その他の売上高は36%増の705億円となった。

 なお、ストレージソリューション事業は、売上高が同5%増の1750億円。

 情報・通信システム分野では、2012年4月にスマート情報システム統括本部とITプラットフォーム事業本部を新設。さらに10月には、日立情報通信エンジニアリングと日立コンピュータ機器が合併に合意。組織再編によるソリューション提供力の強化、プラットフォーム開発力の強化につなげているという。

 電力システムの売上高は前年同期比11%増の4134億円、営業利益は前年同期の6億円の黒字から、74億円の黒字に成長。社会・産業システムの売上高は前年同期比6%増の5453億円、営業利益は同50%減の31億円。電子装置・システムの売上高は同4%減の5105億円、営業利益は同7%減の197億円。建設機械は売上高が同4%増の3706億円、営業利益は同12%減の228億円。

 高機能材料の売上高は前年同期比4%減の6743億円、営業利益は同13%増の381億円。オートモーティブシステムの売上高は同10%増の4018億円、営業利益は同22%増の192億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同9%減の4287億円、営業利益は前年同期の52億円の黒字から24億円の赤字に転落。金融サービスの売上高は前年同期比1%減の1796億円、営業利益は同3%減の137億円。その他部門の売上高は同35%減の5566億円、営業利益は同25%減の208億円となった。

 「デジタルメディア事業の赤字は、テレビの構造改革による損失があったことが影響。白物家電は黒字で推移している」という。


事業部門別の売上高事業部門別の営業損益

 

通期見通しを下方修正、売上高は1000億円減少した9兆円に

2012年度の全社通期見通し

 2012年度の全社通期見通しについては、5月公表値を下方修正。売上高は公表値から1000億円減少の9兆円、営業利益は据え置きの4800億円、税引前利益は200億円減少の4000億円、当期純利益も据え置き2000億円とした。営業利益率で5.3%になり、3年連続での2000億円台の最終利益確保を見込む。

 「なんとしてでも5%以上の営業利益を達成するという決意を、あらためて社内で確認してきた」(中村副社長)と意欲をみせた。

 建設機械部門や高機能材料部門などで減収となるものの、売却事業の影響を除くと1%減にとどまるという。また、社会イノベーション事業では増益効果を見込んでいるという。

 「2012 中期経営計画」では、売上高10兆円、営業利益率で5%超、最終利益で2000億円台の安定的確保、D/Eレシオで0.8倍以下、株主資本比率20%といった指標を掲げていたが、売上高は1兆円下回るものの、それ以外の指標は計画通り、あるいは計画を上回ることになる。

 また、「反日デモの影響はないが、中国経済自体の減速感がある。中国での日本車の販売減が、今後、オートモーティブ事業で影響が出てくる可能性がある。さらに、欧州債務危機の長期化に伴い、新興国の経済成長が不透明性を増すなかで、事業構造改革の継続的な推進やHitachi Smart Transformation Projectを通じたコスト構造による変革を加速していく必要がある。通期では、デジタルメディア・民生機器がぎりぎりの線だが、すべてのセグメントでの黒字化を達成したい」とした。

 情報・通信システム部門は、5月公表値の1兆7600億円の売り上げ見通しを、200億円増加の1兆7800億円に上方修正。営業利益は1200億円で据え置いた。

 中村副社長は、「情報・通信システム部門では、上期の営業利益が計画に対して27億円ほど未達だった。がんばれると思ったが駄目だった。通期の営業利益目標の1200億円をやるということは変えない。下期には積み上げを図る」と語った。

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(大河原 克行)
2012/10/31 00:00