富士通研、操作応答を10倍高速化する高速シンクライアント技術を開発
株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は15日、品質が悪いネットワーク環境でも操作応答を最大10倍高速化するシンクライアント技術を開発したと発表した。
仮想デスクトップ環境では、動画やグラフィックスを多用するアプリケーションの応答性能が課題となっている。特に海外に仮想デスクトップの端末がある場合やモバイル環境の場合では、データ送受信の遅延やデータ損失のために、この問題が顕著化しており、グローバルに展開する企業にとって利用の障壁となっている。
今回開発したのは、このような品質が悪いネットワーク環境でも、操作応答を最大10倍高速化する高速シンクライアント技術。
国内での利用を想定した仮想デスクトップ環境においては、動画や高精細画像を扱うアプリケーションをスムーズに動作させる技術(RVEC)を開発、2011年5月に発表しているが、今回新たに海外からの利用やより品質が悪いモバイルネットワーク環境にも対応できるようにするため、REVCを技術拡張し、遅延やパケットロスの多いネットワーク環境でも操作応答を向上できるようにした。
同技術を用いたシンクライアントのさまざまな利用イメージ |
具体的な技術は、「画面データ量削減技術」「ネットワーク遅延対策技術」「GPU仮想化技術」の3点。
画面デー多量削減技術では、仮想デスクトップ環境において、アプリケーション操作時に利用可能な通信帯域に応じて画面の画質や描画フレームレートを調整してクライアントに送信する。これによりデータ転送量と操作遅延を抑制することが可能となり、従来のRDPに対して最大約10倍高速化したとする。
画面データ量削減技術による画質・フレームレート調整の動作例 |
ネットワーク遅延対策技術では、海外とのネットワーク接続時やモバイル環境など、遅延やパケットロスの大きいネットワーク環境でも操作遅延を抑えるため、新プロトコルを開発。これにより、画面データ転送が、従来のTCPより約6倍高速化するという。
ネットワーク遅延対策技術による性能評価 |
GPU仮想化技術では、3D CADなどのグラフィックス描画処理を高速化するGPUを、同時に複数の仮想マシン上のアプリケーションが共用することで、高速なレスポンスを実現した。
この新技術を活用することで、グローバル化が急速に進む設計業務において、海外や国内の各拠点間で連携した作業が効率的に行えるようになるとする。また、3D CADだけでなくCAEなどグラフィックスを多用するアプリケーションに同様の効果を発揮。動画コンテンツを利用したグローバルな遠隔社員教育にも適用できるとしている。
今後は、次世代ものづくり環境のエンジニアリングクラウド(2011年6月発表)として、2012年度中に順次製品化する考え。