ファーストサーバ、CPUバーストに対応したクラウドサービス「Z Cloud」を発表


Z Cloudの特長
ファーストサーバ 代表取締役 磯部眞人氏

 ファーストサーバ株式会社は25日、米Joyent(ジョイエント)のSmartDataCenterをベースに開発したIaaS型パブリッククラウドサービス「Z Cloud(ゼットクラウド)」を提供開始すると発表した。

 Z Cloudは、Joyentが開発したSmartOSなどの技術によって、ディスクやメモリI/Oの高速化を実現し、短時間に高負荷がかかるCPUバーストにも対応したクラウドサービスである。具体的には、ZFSファイルシステムによるディスクI/Oの高速化や、DTraceによるパフォーマンスのリアルタイム分析とボトルネックの可視化をはかっている。

 外部監視については、ファーストサーバが独自に開発したオープンソースのGiraffi(ジラフィー)を用いることで、統合的な機能強化を行っているとのこと。また、2012年の春には、オートスケールに対応したサービスの提供も予定しているそうだ。

 価格は、メモリ1GB、ディスク容量30GBの最小構成であるSmall 1の場合、8.1円/時間。標準で20TBまでのネットワーク転送料が無料となっている。また、キャンペーンとして10月25日から11月15日までは、サービス利用料金を無料で提供するとのこと。

 加えて、ファーストサーバでは、Node.jsの開発をサポートするPaaS型サービス「Node Ninja(ノードニンジャ)」を提供することを発表した。Node.jsとは、大量のアクセスを効率よく処理するために開発された、サーバーサイドで動作するJavascriptプラットフォームで、Joyentがスポンサーをしている。

 ファーストサーバ 代表取締役 磯部眞人氏は、「今後あらゆるデバイスが、膨大な量のコネクションを生み出すことになる」と述べ、来るべき“大スマートフォン時代”に備える必要があるという。さらに「そのような環境に対応していくには、クラウドサービスにもイノベーションが求められている」と語り、よりシンプルで高速化の技術に定評のあるJoyentの技術の重要性を強調した。


Node Ninjaの概要Joyentの技術のメリット

 また磯部氏は「アプリケーション開発に集中できるようなクラウド環境が重要になる」と語り、エンジニアがmemcachedなどのようなインフラに近い技術について、あまり考えることなく開発に集中できるようなクラウド環境を目指していくとした。

 具体的にファーストサーバでは、新たに専属のアプリケーションエンジニアを準備し、アプリケーションレイヤにおけるサービスの拡充をはかっていくという方針を打ち出している。また、PaaS型サービスのNode Ninjaもその取り組みの1つとなる。

 なおZ Cloudは、高負荷のサービスを提供しているメディア関連企業やソーシャルゲーム企業、ECサイトなどを中心に、2014年末までに25億円の売り上げを目指していくとのこと。現在、すでに新聞社のニュースサイトにてテスト導入中が行われており、従来に比べ大幅なパフォーマンス改善を確認しているという。

 Joyentのクラウドインフラ管理ソフトウェア「SmartDataCenter」は、ファーストサーバだけでなく、台湾やカナダ、ヨーロッパ、中東、北米の大手サービス事業者やSIerなど、グローバルで採用が進んでいる。現在、Amazonに次いで2番目に大きなパブリッククラウドサービスを提供しているとのこと。

 SmartDataCenterは、SmartOSとオーケストレーション・レイヤーで構成されている。物理リソースの最適化やさまざまなOSに対する高性能な仮想化、データアクセスのコストパフォーマンスなど、技術的な強みはSmartOSによって実現されているという。

米Joyent 創業者兼最高技術責任者 ジェイソン・ホフマン氏

 また、SmartDataCenterは、パブリック、プライベート、ハイブリッドなど、さまざまなクラウド環境に対応しており、同じ構成でIaaSだけでなくPaaSにも柔軟に対応できるとした。米Joyent 創業者兼最高技術責任者 ジェイソン・ホフマン氏は「エンドツーエンドでデータセンターをデザインできる点が、ほかのクラウドソフトウェアにはない優位点である」と強調する。

 加えて、Amazonが提供するパブリッククラウドとのパフォーマンス比較の例を出し、CPUやディスクI/O、レスポンスなどの指標において、米Joyentのパブリッククラウド環境の優位性を示し、高速化に対する高い技術力をアピールした。

 ホフマン氏は、「既存のシステムは増加するデバイスやデータに対応するために、今後膨大な処理が求められるようになる」と語り、現状のIT予算とビジネスの間に不均衡が生まれてしまう点を指摘する。そのため今後のデータセンターには統合的なソリューションが求められており、統合化においても米Joyentのソフトウェアが力を発揮できるとした。

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(曽我一弘=パイソンネットワークス)
2011/10/26 06:00