日本オラクル、シングルスレッド性能を5倍に向上させたSPARC T4プロセッサ搭載の最新サーバー4製品


 日本オラクル株式会社は17日、最新CPUの「SPARC T4」搭載サーバー4製品を発表した。1ソケットモデル「SPARC T4-1」、2ソケットモデル「SPARC T4-2」、4ソケットモデル「SPARC T4-4」のラック型3製品と、サーバーブレード「SARPC T4-1B」をラインアップし、同日より提供を開始する。


ラック型の3製品1ソケットモデルのSPARC T4-1

 

大幅に性能が向上したSPARC T4搭載サーバー

 新製品に搭載されるSPARC T4は、Oracleによって新たに開発されたCPU。既存の「SPARC Tシリーズ」とのバイナリ互換性を維持しながら、クロック周波数の向上(最大1.65GHz→最大3.0GHz)などによって、前世代の「SPARC T3」から、整数演算を5倍、浮動小数点演算性能を7倍に向上させている。加えて、SPARC T3からスレッド処理性能が2倍に向上。コア数は減ったものの、1つのコアで実行できるスレッド数が倍になっているため、シングルスレッド性能の向上と合わせて、「バランスのいいSPARCプロセッサができた」(システム事業統括 ビジネス事業推進本部 プリンシパル・セールス・コンサルタントの白川晃氏)のだという。

 これを搭載した新サーバーも、もちろん大幅に性能を向上させており、最上位機のSPARC T4-4では、10以上のベンチマークで新記録を樹立した。そのうちの1つ、Javaなどのフロントエンド処理性能を示す「SPECjEnterprise」では、Power 7搭載IBM製サーバーの2.4倍、Xeon 7560搭載のCisco製サーバーの2.3倍を記録した。「しかも、価格はPower 7の約1/3になっており、プライスパフォーマンスは7倍いい。それくらい優れたプロセッサである」(システム事業統括 執行役員の野々上仁氏)と、SPARC T4でOracleが達成した成果を強調している。

 しかも、SPARC T4はSPARC T3とソケット互換になっており、新サーバーはすべて、従来の同クラス製品、例えばSPARC T4-1は「SPARC T3-1」と同じシャーシ、マザーボードによって構成されている点も特徴。「(2010年10月のSPARC T3搭載製品発売から)1年使っていただいて、信頼性が確認されているマザーボードやシャーシの上に、最新のCPUを載せて提供できる」(白川氏)とした。


SPARC T4プロセッサの特徴SPECjEnterpriseの結果

 OSについては、Solaris 10/11をサポートするほか、旧Solaris OSとそのアプリケーション環境を最新機種で利用できるようにする「レガシー・コンテナ」機能を継続して提供する。しかも、同機能をライフタイム・サポート対象とすることで、これから先についても、継続してサポートを受けられるようにしている。

 日本オラクルでは、性能が向上した新製品によって、既存Solarisユーザーの他社への乗り換えを防ぎたい考えで、白川氏は、「いまだに10万台以上に存在しているといわれる、『Sun Fire Vシリーズ』『Sun Fire Enterpriseシリーズ』を使っているお客さまに、ソフトを変更することなく最新機種へ乗り換えられる移行パスを用意した。『異なるプラットフォームへの乗り換えでは100%の互換性は確保できないため、SPARCのサーバーを使いたいが、性能的に不安』といったお客さまも多く、性能が圧倒的に向上した今回の新製品では、現実的な選択肢を提供できる」と、製品に対して自信を示した。


レガシー・コンテナ機能がライフタイム・サポートの対象になっている

 なお、SPARC T4搭載製品では、CPUの性能が向上しているものの、同一カテゴリのSPARC T3搭載サーバーと比べた場合、サーバー全体での消費電力はむしろ下がっているとのこと。そのため、既存ユーザーも消費電力は特に意識せず、SPARC T4搭載製品へのマイグレーションが可能になっているとのこと。

 価格は、SPARC T4-1が234万円から、SPARC T4-2が388万円から、SPARC T4-4が526万円から。

 

エンジニアードシステム「SPARC SuperCluster」も早期に提供

SPARC SuperClusterの概要
SPARC T4プロセッサを持つ、システム事業統括 執行役員の野々上仁氏

 また日本オラクルでは、SPARC T4-4をベースにしたエンジニアードシステム「SPARC SuperCluster」を、早ければ10月中にも受注開始することを明らかにした。

 Oracleではデータベースマシン「Oracle Exadata」を2008年に発表して以来、ソフトウェアとハードウェアがあらかじめ最適化して組み込まれ、短期間でのシステム導入と安定した運用・保守を可能にするエンジニアードシステムを推進してきた。

 これは、「オープンシステムでは、競争によってプライスパフォーマンスを高めることにメリットがあったが、今まではコンポーネントの価格よりもシステムを組み上げる費用の方が大きくなってしまっている」(野々上執行役員)ことが理由で、これを解消するため、データベース高速化、ミドルウェア高速化といった特定目的のためにエンジニアードシステムを提供してきた。

 SPARC SuperClusterは、これらとは多少毛色が異なり、Solarisユーザー向けに提供される、汎用のエンジニアードシステム。SPARC T4-4を中核に、Exadataの構成要素でもある「Exadata Storage Cell」や、InfiniBandによるバックボーンなどを組み合わせて構成されるが、従来のSolaris上で動いてたアプリケーションをそのまま移行でき、移行するだけで圧倒的な高速化を実現するのだという。また、信頼性を確保するためにすべての要素を多重化しており、エンタープライズでの利用に耐える可用性を提供するとした。

 用途としては、既存のSolarisアプリケーションの高速化に加えて、システム統合基盤としての利用を想定。野々上執行役員は、「仮想化がもともと組み込まれており、アプリケーションを統合しても120万IOPSを維持できる。数台を1台にまとめるのではなく、数十台をまとめられるシステム統合基盤だ」とアピールしている。

 「これらのSPARC T4と搭載サーバー製品によって、SPARC Tシリーズがスピードで劣っているという印象を、完全に払しょくできた」(白川氏)。

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