サイボウズ、PaaS「kintone」ベータ版のデモを紹介


代表取締役社長の青野慶久氏

 サイボウズ株式会社は2日、今秋リリース予定のPaaS「kintone」に関して説明会を開催し、代表取締役社長の青野慶久氏が開発背景やコンセプトを紹介。ベータ版のデモンストレーションも行った。

 青野氏がまず語ったのは、kintoneにかけた「Fast」の思いだ。「Fast food」「Fast fashion」などが流行する中、ITシステムの分野では「スクラッチ」と「パッケージ」の中間に位置する「Fast system」が存在しないと指摘。

 「kintone」は、「Fast to understand(すぐに理解できる)」「Fast to try and purchase(すぐに試して、すぐに買える)」「Fast to get support(困ったらすぐにサポートが受けられる)」などをコンセプトに、ビジネスの急変に対応し、しかもカスタマイズしたかのように思い通りのシステムを実現する、まさに「Fast system」を実現するようなものだと説明した。

 実態は「使いやすく、低価格なPaaSだ」(青野氏)。Force.comやLotus Notesと同様に、企業のアプリ開発基盤となる。機能的には、サイボウズが得意とする「データベース」「プロセス管理」「コミュニケーション」を融合したもの。数値・イメージ・テキスト・ファイルといった各種データや個人の知識を蓄積し、業務フローを確実にリレーするために進ちょくを可視化するプロセス管理を行い、それらではできない人と人とのつながりをコミュニケーション機能で演出する。「企業内で必要なシステムは、この3つの組み合わせで実現できてしまうことが多い」と青野氏は語る。

 また「Fast」というとチープなイメージがわくかもしれないが、開発した全アプリを横断する全文検索(添付ファイル内検索にも対応)、レコードの変更履歴、開発用サンドボックスなど、本格的な機能を備えているのも特徴となる。

 以下はデモの様子。

ログイン画面トップページ。右にアプリ一覧。左に最新情報が表示される。左ペインについては「まだ改善の余地がある」とのこと

新規アプリを開発するまずはアプリ名やデザインテーマ(タスク管理、案件管理、オーダー管理、帳票管理)などを決める。今回のデモでは「帳票管理」を選択

実際の開発画面。左にフォームコンポーネントなどが配置されており、右のキャンバスにドラッグ&ドロップして開発していく。今回想定しているのは、kintoneに対する問い合わせを管理するアプリケーション

会社名、部署名、担当者、利用目的チェックボックス、利用人数のほか、対応記録を記すテキストボックスなどを配置

開発完了後はサンドボックスにて動作を確認。問題なければ本番環境へ反映することも可能となっているデータベース一覧を表示。フォームの入力内容や数値をグラフ化することも可能だ

実際に利用しているところ。本番環境では、コメントを使ったコラボレーション機能や、変更履歴などの機能が利用できる。この軽快さでデータベースをベースとしたさまざまなアプリケーションを開発できるのがkintoneである
主な機能

 イメージとしては、Webデータベース「サイボウズ デヂエ」のクラウド版に近い。パッケージ版の従来製品より、バージョンアップの機敏性を向上できるのがメリットだ。基盤となっているIaaSについても、商用IaaSを利用するのではなく、東日本のデータセンターとバックアップ用の西日本のデータデンターを借りて、サイボウズ自らがシステムを設計・構築・運用している。これが開発に機敏性をもたらし、青野氏も「パッケージとは比べようのない開発の早さが実現できた。Googleがなぜ、あんなに開発が早いのかが分かった気がする」と驚きを隠さない。

 また、当時のデヂエを振り返って「2001年にリリースしたが、あのころはデータインポート・エクスポート未対応などエコシステムを無視していた。また直販がメインだったため、販売パートナーとも連携できていなかった」と反省。kintoneは、その点においてもサイボウズの再挑戦といえ、「今回は、APIやアプリマーケットプレイスなど、周辺のエコシステムを作るための開発も進めている」(同氏)とした。

適用範囲イメージ。大抵の社内システムが作れるとしている各ユーザーが開発したアプリを公開できるアプリストアも。ただAndroid Marketのように膨大なアプリが無秩序に登録されては欲しいアプリが見つからなくなってしまう。そうならないように、探しているアプリを案内してくれるコンシェルジュ機能など、利便性を損なわない仕掛けを検討中という

 また、コンサルティングパートナーとも手を組み、kintoneリリース時には、業務の可視化、改善案の提案から、具体的なkintoneの利用方法を提示するコンサルティングサービスも豊富に提供するようだ。

 デヂエ、それから「サイボウズOffice」や「サイボウズ ガルーン」で蓄積したコミュニケーションのノウハウ――kintoneはそれらの集大成ともいえる。「kintoneには自分も気持ちが入っている。14年間サイボウズをやってきて、これが1つの答えだったと思う。残りの人生をこれにかけるくらいの気持ちで取り組んでいる」と熱意を語る青野氏。

 リリースは今秋。価格はセールスフォースが提供するForce.comの少なくとも1/3を実現する考えだ。

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