ソフトバンクテレコムと韓国KTが合弁会社設立、釜山にデータセンターを設置
日本企業向けのデータセンターサービスを韓国より提供へ
ソフトバンクテレコムと韓国KTで合弁会社を設立する |
提携を発表する、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏(左)と、韓国KTのイ・ソクチェ会長兼CEO(右) |
ソフトバンクテレコム株式会社は30日、韓国最大の通信事業者であるKTと提携し、合弁会社「ktSB Data Service(仮称、以下、ktSB)」を韓国で設立すると発表した。データセンターサービスやクラウドサービスを韓国から提供するのが目的で、9月の設立を予定する。資本比率は、ソフトバンクテレコムが49%、KTが51%。
ソフトバンクグループ代表で、ソフトバンクテレコム 代表取締役社長兼CEOの孫正義氏が提示したデータによれば、「8割の企業では、遠隔地にバックアップシステムを作っていない」のが現状で、今回のように関東が震災の影響を受けてしまうと、事業そのものが止まってしまう。こうした課題は、震災後にほとんどの企業が実感しており、各データセンター事業者への問い合わせが、今では急増しているのだという。
そうしたケースでは、九州や中国地方を含めた西日本や、北海道などの遠隔地にあるデータセンターへの設置を希望する場合が多い。しかし孫社長は、「今回の震災では、急速にBCP(事業継続計画)への問い合わせが増え、去年1年分の問い合わせが1カ月で来たが、ほとんどのデータセンターが満杯で、これ以上の注文が受けられないし、急には(設備を)作れない」との現状を紹介。さらに、「日本の複数の場所で大規模災害が起きたときには、国内で本当にバックアップになるのか?」との疑問を投げかけ、「(距離が)近く、電気料金が安く、ICT先進国である韓国の、しかも信頼できる企業と提携することにした」と、提携の理由を説明した。
両社での具体的な取り組みとしては、韓国の釜山にktSBが10月にデータセンターを設置し、コロケーションやホスティングといったデータセンターサービスや、バックアップサービス、VDI(仮想デスクトップ)サービスなどを提供していく計画。特にコロケーションサービスに関しては、ktSB設立やデータセンターの設置を前に、KTの協力のもとで、7月から先行して提供を開始する。
近さ、安さ、先進性が韓国の特徴 | KTは韓国最大の通信会社だ |
こうした海外からのサービス提供では、当然、数多くの懸念が指摘されている。これについては孫社長は「韓国は東京から飛行機で2時間と、福岡や北海道と同じくらいで、データ通信においては国内にあるのと変わらない」と、まずその距離の近さを強調。10Gbpsの海底ケーブルを2本増強し、遅延も30ms以下を実現するとして、サービスの品質面では問題がないと主張する。
さらに、韓国の電気料金が日本の半分で安価に提供できる点を指摘したほか、大きく懸念されるセキュリティやサポートの問題についても、「インターネットから直接入れない閉域のネットワークを作るのがセキュリティ上では重要で、そのネットワークで韓国と九州を直接つなぐ。また、日本の法制度に準拠するし、主要な認証をKTが取得済み。日本語によるサポートも、ソフトバンクテレコムが24時間365日体制で提供する」として、万全の体制でのぞむことをアピールした。
閉域網で韓国と九州を接続 | サポートはソフトバンクテレコムが一括して提供する |
一方、KTのイ・ソクチェ会長兼CEOは、「今回の未曾有の震災にあたって、KTを初めとする韓国の力が、少しでもお役に立てればと思っていた。当社のデータセンターやクラウドの能力は世界でもトップだと考えており、それを評価いただいたことがうれしい」と、この提携を歓迎。
また、「当社は、31のグループ会社を持つ大変大きい企業体であり、ガバナンスもトップを走っている、信頼していただける企業である。韓国では、個人情報保護のルールを犯してしまうと、上場が取り消されるほどの大きなペナルティがあるし、南北が対峙(たいじ)しているため、ハッキング対策についても世界トップの技術がある」と述べ、セキュリティ面でも信頼してほしいと呼びかけていた。
なお、7月からの提供を予定するコロケーションサービスでは、1ラック(4kVA~)あたり10万円からと、「国内と同等の品質を、国内と同等の価格で提供する」(孫社長)としている。
コロケーションサービスの概要 | 提供予定のサービスラインアップ |