IDC Japan、東日本大震災の影響を考慮した国内IT市場予測を発表

前回予測から大幅に下方修正、成長率はマイナス4.5%に


 IDC Japan株式会社は4月18日、東日本大震災の影響を考慮した国内IT市場予測を発表した。

 この発表によると、2011年の国内IT市場は12兆165億円、前年比成長率マイナス4.5%の予測となり、震災前の予測(2011年2月発表)の12兆6172億円、プラス0.6%から大幅な下方修正となった。また、この予測値は、2010年の国内IT市場の12兆5879億円、プラス2.9%と比較しても大きな下落となる。

国内IT市場予測の推移震災前後での国内IT市場予測の比較
ITスペンディング/ITサービス/ソフトウェア&セキュリティ/コミュニケーションズ グループディレクターの和田英穂氏

 同社 ITスペンディング/ITサービス/ソフトウェア&セキュリティ/コミュニケーションズ グループディレクターの和田英穂氏は、今回の予測を実施した経緯について、「当社では、3カ月ごとに市場予測を見直しており、通常であれば5月に予測を発表する予定だったが、東日本大震災の発生を受けて急きょ予測を行うこととなった。予測にあたっては、各ITベンダーやユーザー企業を取材するとともに、2011年から2012年の短期の経済シナリオを作成し、全アナリストで共有した。また、サプライチェーンの川上を調査し、部品、完成品の供給制約の有無を考慮したうえで、各製品担当アナリストが予測の見直しを行い、その結果を積み上げて予測を作成した」と述べている。

 予測の際に作成した経済シナリオは、内閣府が発表した「東日本大震災のマクロ経済的影響の分析」をベースにしたもので、「国内IT市場は2010年以降プラス成長が見込まれていたが、大震災以降、政府自治体や企業は復興を最優先にし、不要不急のIT支出は後回しになる見通し。特に2011年前半(9月まで)は、電力不足にともなう企業業績や消費者心理の悪化にともない、景気が低迷。設備投資や消費が減退し、IT支出が抑制される。さらに、サプライチェーンが寸断されたことで、一部の部品や素材の供給が滞っている。中でも、高精細液晶パネルなどの供給不足によって、スマートフォンなどコンバージドモバイルデバイスの生産に影響が現れる」(和田氏)との見解を示した。

2011年 製品別 前年比成長率の震災前後の変化

 製品別の前年比成長率について、震災前後の予測を比較すると、「ITサービス」は震災前がプラス1.8%、震災後がマイナス1.8%、「ソフトウェア」は震災前がプラス2.9%、震災後がマイナス7.9%、「ハードウェア」は震災前がマイナス1.4%、震災後がマイナス5.6%となった。ITサービスとソフトウェアはプラス成長からマイナス成長に修正され、ハードウェアはマイナス幅がさらに拡大したかたちとなる。

 各製品に対する大震災の影響としては、「ITサービス」では、多くの企業が新規投資を抑制し、老朽化対策やコンプライアンス対応に投資が限定される。「ソフトウェア」は、PC向けソフトの低迷とともに、システム構築案件の延伸や企業の海外シフトによってサーバー系ソフトの需要も減退。一方で、リスク管理の観点からSaaSの利用は拡大すると見ている。「ハードウェア」については、大震災が年度末を直撃した影響が大きく、景気低迷により需要が減退。コンバージドモバイルデバイスは、部品不足で新規モデルの投入に遅れが生じると予測する。

 ただ、2011年後半(10月以降)は、政府自治体の復旧、復興が本格化し、景気が回復軌道に乗るとともに、サプライチェーンも復旧。各企業のリスク管理強化により、IT支出も回復してくると見ている。そして、2012年の国内IT市場は、2011年の落ち込みの反動もあり、12兆4327億円、前年比成長率プラス3.5%と高い成長を予測する。

 和田氏は、2012年以降の国内IT市場について、「復興需要や外需にけん引されて日本経済が改善し、これにともないハードウェアを中心にIT支出も拡大すると考える。特に、電力不足解消に向けて、クラウド技術を生かしたスマートグリッド、エネルギー管理システムなどの導入促進が期待される」(和田氏)との見通しを述べた。

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