富士通、要件定義の手法を「Tri-shaping」として3階層に体系化

経営に貢献するICTシステムの構築を実現


システム生産技術本部 本部長の柴田徹氏

 富士通株式会社は9日、顧客のビジネスに貢献する業務プロセスの分析・改善提案とICTシステムの構築における要件定義の手法「Tri-shaping(トライ・シェイピング)」を新たに体系化し、4月より、原則3億円以上の同社グループのプロジェクトに適用を開始しすると発表した。

 今回の「Tri-shaping」は、同社が2009年10月に発表した「新要件定義手法」を強化・発展し、体系化したもの。システム生産技術本部 本部長の柴田徹氏は、「Tri-shaping」の発表にあたり、「当社のSIビジネスは、顧客の改革を支えることを目指し、ICTシステムの構築からビジネスまでを支援する独自の最新技術と手法を提供している。その中でも、要件定義は、顧客のビジネスとICTシステムをつなぐ重要な行程であると考えている。要件定義が整理できていないと、経営に貢献するICTシステムをつくることはできない。そこで、今回この整理の手法を3つの階層に分けて体系化した」と述べている。

要件定義手法「Tri-shaping」要件定義の位置づけ

 具体的には、(1)要求形成手法「shapingBR」(shaping Business Requirement)、(2)業務形成手法「shapingBP」(shaping Business Process)、(3)業務仕様形成手法「shapingBS」(shaping Business Specification)--の3つの手法を開発。手順書や分析シートなど15種類のツールにまとめている。これらの手法は、年間2万件におよぶさまざまな業種・業務の顧客プロジェクトで得た経営・業務についての知識や、30年以上の要件定義の適用経験に基づいており、15種類のツールには数多くのノウハウを記載。国際的に注目されているBABOKなどの最先端の国際標準・業界標準を取り入れるとともに、同社の実践知も兼ね備えた手法の集大成となっている。

要件定義手法「Tri-shaping」で提供するもの手法全体の実施イメージ

 また、「業務の本質をとらえる方法」「業務プロセスのパターンを洗い出すための方法」など、同社独自の着眼点により、要件定義書の作成を支援。これによって、要件定義において最も難しいとされる要件定義書の「内容品質」の向上を実現する。

 さらに、要件定義のマネジメントプロセスの精度向上も図っている。要件定義を進めていく際には、ステークホルダー間での合意形成や要件を絞り込み、進ちょく状況を把握しながら適切なタイミングで対策を打つなど、プロセスを的確にコントロールし、マネジメントを行う必要がある。今回、ステークホルダーが十分な検討を経て、かつ十分納得したうえで期限内に要件を洗練させ、確定させるマネジメント手法も盛り込んでいる。

 新たに開発した3つの手法それぞれの特徴としては、要求形成手法「shapingBR」は、ビジネス改革の目的や実現手段といった要求を見える化し、精度を向上させるための手法。この手法により、ビジネス改革の目的や手段が経営・業務にもたらす効果を明確にし、業務プロセスやシステムの構築における具体的な質の高い要求を決定する。今回の拡張では、これまでの顧客社内だけではなく、環境や社会貢献分野など社外のステークホルダーの要求も管理できるようにし、要求をステークホルダーから引き出すためのプロセスを強化した。

 業務形成手法「shapingBP」は、シンプルで柔軟な業務プロセスを設計するための手法。複雑化・肥大化した業務プロセスを分析し、幹となる部分を見極め、それ以外の部分をシンプル化・スリム化することにより、予測できないビジネス環境の変化に備えるためのシンプルで柔軟な業務プロセスとシステムを設計する。

 業務仕様形成手法「shapingBS」は、業務ルールを正しく漏れなく洗い出し、現場の業務担当者やシステム開発者にあいまいさなく伝えるための手法。これにより、業務部門とシステム開発者との間の誤解を減少させ、システム構築の手戻りを低減し、スピードアップを実現する。

システム生産技術本部 SI生産革新統括部 担当部長の森田功氏

 今後の展開について、システム生産技術本部 SI生産革新統括部 担当部長の森田功氏は、「『Tri-shaping』の普及に向けて、2011年度上期から富士通グループにおいて研修を実施し、実際の現場で同技術を適用できる人材の養成を行う。そして、要件定義を顧客とともに行い、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる最適なシステムの構築を支援していく。さらに、2011年度下期には、顧客向けに有償の研修サービスを提供開始する予定だ。これにより、顧客企業において要件定義の促進を行う人材育成も推進していく」との考えを示した。同社では、2011年度末までに適用プロジェクト数100件を目指している。

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(唐沢 正和)
2011/2/10 06:00