F5ジャパン、ストレージ仮想化製品「ARX」をクラウドに対応

クラウドストレージにもデータ階層化が可能に


米F5、Director, Prod Mgmt Data SolutionsのCharles Wood氏
ARXシリーズのファイル仮想化技術。複数台のストレージを束ねて、仮想マウントポイントを作成する

 F5ネットワークスジャパン株式会社(F5ジャパン)は9日、ストレージ仮想化製品「ARXシリーズ」の新3製品を発表した。新たに、 データ自動階層化機能をクラウドストレージへ拡張するソフト「ARX Cloud Extender」、仮想アプライアンス製品「ARX Virtual Edition」、ストレージ管理向けのオープンAPI「F5 iControl」を投入する。

 ARXシリーズは、ストレージを仮想化する製品。NAS/ファイルサーバー群の前段に置くことで、1つの仮想マウントポイントを作成。複数台をあたかも1台の巨大なファイルサーバーのように扱うことができる。透過的な動作をするため、アプリケーションやユーザーはARXシリーズを意識せず、単純に1台のストレージを利用している感覚で運用できる。

 容量が足りなくなった際には、システムを止めずに拡張可能。ポリシーによるデータ自動階層化にも対応し、例えば、アクセス頻度の高いデータは高性能なストレージに移動するなど、データアクセスの効率性を向上できる。

 新製品のARX Cloud Extenderは、データ階層化機能をクラウドストレージに拡張するソフト。Windows Server 2003/2008にインストールし、ARXシリーズと連携させる。ユーザーやアプリケーションからのCIFS/NFSのアクセスを、ARX Cloud Extenderが仲介して各クラウドストレージ用のプロトコルに変換。まるで社内のストレージと同じように、クラウドストレージが利用可能となる。クラウドに保管すべきファイルを自動的に判別するようなポリシーも作成可能だ。現時点では、Amazon S3、Iron Mountain VFS、NetApp StorageGRIDに対応。「今後、日本を含むさまざまな地域で対応クラウドストレージを拡充していく」(米F5、Director, Prod Mgmt Data SolutionsのCharles Wood氏)。価格は180万円からとなる予定。2011年初旬に出荷を始める。

データ階層化機能をクラウドストレージに拡張。ARX Cloud ExtenderがCIFS/NFSをクラウドストレージのプロトコルに変換する。このため、アプリケーションやユーザーは社内とクラウドのリソースを区別せずに、透過的に統合利用が可能となる

 ARX Virtual Editionは、従来ハードウェアアプライアンスとして提供された「ARXシリーズ」を、仮想マシン上で稼働させられる仮想アプライアンス製品。主に支店や部署などの小規模単位、あるいは開発環境などを対象とする。OEMパートナー版、トライアル版、製品版の3つの展開を予定しており、製品版の価格が290万円からとなる予定。2011年初旬に出荷を始める。

小規模向けの仮想アプライアンス版

 最後のF5 iControlは、パートナー向けに提供されるオープンAPI。ARXシリーズのファイル仮想化機能と連動する、新しいアプリケーションを開発できる。具体的には、ARXシリーズのリアルタイムなファイルシステム変更通知機能を使用し、検索インデックス、バックアップ、監査・クォータ管理ツールなどのさまざまなサードパーティ製アプリケーションを組み合わせられる。こちらはオンライン技術コミュニティ「DevCentral」にてすでに公開済み。今後、開発者向け資料なども提供していく。

ARXシリーズの変更通知機能を利用し、さまざまなサードパーティアプリケーションと連携。サービスの拡張性、即応性、効率性を向上できるという
F5ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏

 F5ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏は「当社の考え方は、ストレージに関するインテリジェンスをストレージの前段(ネットワーク)に持たせるというもの。これにより、各社のストレージに標準搭載された仮想化機能を使うよりも柔軟にマルチベンダー対応が実現できる」と説明。

 「今回のクラウド対応や仮想アプライアンス版による小規模展開により、市場を拡大できると思っている」とし、ARXシリーズで売り上げを2倍、顧客数を3倍に増やすと目標を語った。

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