ラドウェア、アプリケーションスイッチを仮想化して統合する「ADC-VX」


 日本ラドウェア株式会社は29日、1台のアプリケーションスイッチ(ADC:Application Delivery Controller)の上で、ハイパーバイザーを用いて複数の仮想ADCを動かす「ADC-VX」を発表した。同社のADCアプライアンス製品「Alteon 5412」を対象に、OSのアップデートとして提供するもので、すでに提供を開始している。なお、仮想化を用いないOSも、並行して引き続きサポートする。

 ADC-VXで多数のADCを統合することにより、データセンターでのADCのプロビジョニングやリソース配置が柔軟になり、新しいADCの追加やスペックの変更が機敏に行なえるようになる。ハードウェアや運用のコストを削減することにもなる。同じ物理ADC上の仮想ADCはそれぞれ厳密に分離され、個別にネットワーク帯域やCPUリソース、VLANテーブル、利用する機能などを割り当てられる。割り当ては動的に変更できる。

 ADC-VXは、同時に発表された「VADI(Virtual Application Delivery Infrastructure)」戦略の一環となる。VADIは、仮想ADCや物理ADC、物理サーバー、仮想サーバーなどを統合的に管理することで、ネットワーク管理を柔軟で俊敏なものにする基盤だ。

 VADIではADC-VXのほか、一般のサーバー上で動作するソフトウェア版ADC製品も近くリリースする予定。また、ADCや仮想サーバーを統合して、リソース割り当てなどを管理する自動管理機能も提供予定。VMwareの管理ツールやマイクロソフトのSystem Center、日本HPのOpenView、日本IBMのTivoliなどと連携する形で実現する。VMware製品との連携は2011年1月を予定している。

1台のADC上で、ADC-VXハイパーバイザーにより複数の仮想ADCが動く。それぞれ分離され、個別のリソースが割り当てられるVADIを構成する要素。ADC、ADCを管理するVADIサービス、それらの管理を統合する自動管理システム

 

「仮想化に強い関心を持っている日本企業に使ってもらいたい」

 VADI戦略やADC-VXについて、イスラエルRadware COOのイラン・キンライヒ氏と、日本ラドウェア 代表取締役社長の秋元正義氏に話を聞いた。

Radwareのイラン・キンライヒCOO日本ラドウェアの秋元正義社長

――まず、VADIの概要を教えてください。

キンライヒ氏:さまざまなネットワーク機器がADCに統合されてシンプル化しました。また、サーバーファームは仮想化されて集約されています。しかし、ADC自身は集約されていません。今後、ADCの仮想化と統合化が必須になると考え、世界で初めて戦略を立てました。

 要素としては、仮想ADC、ADCを管理するVADIサービス、それらの管理を統合する自動管理システムの3つからなります。

――自動管理システムとVADIサービスの関係は?

キンライヒ氏:自動管理からVADIサービスのAPIを通じてADCを管理します。それにより、帯域などをコントロールします。

――仮想マシンの構成変更をADCに反映するvAdapterなどもVADIサービスに含まれるのでしょうか?

キンライヒ氏:はい、そうです。

――ADCを統合すると、障害のときに問題になりませんか?

キンライヒ氏:それについては我々も重視して、技術的投資をしました。同じ物理ADCで動く仮想ADCは厳密に分離されていて、DDoS攻撃を受けてもほかのインスタンスに影響しないように作られています。ハードウェア障害については、セカンダリのADCに切り替える高可用(HA)構成で対応することになります。

――ソフトウェア版ADCのメリットは?

キンライヒ氏:アプライアンスが不要で、汎用サーバー上で動作するため、プロビジョニングが容易なのがメリットです。より機敏にネットワークを構成できます。

 ただし、サーバーの中で動作するため、物理ADCやADC-VXに比べてどうしてもパフォーマンスは落ちますし、サーバーもハイスペックが要求されます。これはトレードオフです。

――日本でVADIの対象となる市場はどのぐらいでしょうか?

秋元氏:日本のADC市場は、およそ200億円程度と言われています。そのうち半分以上は小規模なものと考えられており、統合化は必要とされてはいません。正確な数字ではありませんが、希望としては、VADIの市場としてADCの20%程度になればいいなと思っています。

キンライヒ氏:今回、日本で最初に発表しました。これは、日本は大切な市場であるというほかに、日本で多くのデータセンターや大企業が、仮想化に関心を持っているという理由によります。VADIは、そうしたニーズを満たすことができると考えています。日本のみなさんに、ぜひテストし使っていただければと思います。

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