日本IBM、Rational事業の戦略を発表~ソフト開発ツール向け新ライセンス体系も


 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は27日、Rational事業の戦略説明会の席上において、ソフトウェア開発ツール向け新ライセンス体系「トークン・ライセンス」を発表した。11月2日より提供を開始する

日本IBM 理事 ソフトウェア事業 ラショナル事業部長の渡辺公成氏
トークン・ライセンス利用の例

 トークン・ライセンスについて、日本IBM 理事 ソフトウェア事業 ラショナル事業部長の渡辺公成氏は、「開発ライフサイクルにおいて、横断的に製品を使用することができる期限付きのフローティングライセンスだ」と説明する。個人を特定しない「フローティング・ユーザー・ライセンス」と、期間を限定して使用権を提供する「期限付きライセンス(Fixed Term License)」を組み合わせたトークン・ライセンスは、日本IBMが提供する幅広い開発ツール群から、プロジェクトの状況に応じて、必要な時に、必要な人数分、必要なツールを柔軟に利用することができる。

 実際にトークン・ライセンスを利用する場合、ユーザーは、あらかじめ選定したツール群に対して一定量のトークンを購入し、「トークンプール」に蓄える。ツールにはそれぞれ必要なトークン値が設定されているため、ユーザーはツールを利用するたびに必要なトークンを消費する。ただし、ユーザーが作業を終了してツールを終了すれば、消費されたトークンは再びトークンプールに戻され、再利用可能となる。

 従来のライセンスでは、製品ごとにライセンス契約を締結し、個別に費用が必要であったが、トークン・ライセンスでは、取得したトークン数を上限にツールや利用人数を自由に組み合わせて利用することができる。もちろん、既存の永久ライセンスや、期限付きライセンスも提供されるため、社員には永久ライセンス、ピーク時の臨時スタッフにはトークン・ライセンスといった使い分けをすることも可能となる。

 「開発ライフサイクルでは、あるフェーズを過ぎると使用しない製品がある。つまり、使用しない期間のライセンスは無駄になるわけだが、トークンライセンスを利用すれば、プロジェクトの状況に応じて、柔軟に製品を利用することができる。このような柔軟性は、お客さまの無駄な投資を抑えるだけではなく、より多くのRational製品を利用してもらうことで、当社の収益の向上につながると信じている」と渡辺氏は述べた。

ソフトウェア開発の健全性や生産性を計測してダッシュボードに表示(データはサンプル)

 また、Rational事業の今後の戦略として渡辺氏は、「これまで日本企業の多くは、ソフトウェアに対してきちんと投資対効果の計測をしていなかった。しかし、IT分野において今後は、経済理論の活用が重要になる」と語り、新しい概念である「ソフトウェア・エコノメトリクス」を推進していくとしている。

 Rationalでは、これまでの長年にわたるソフトウェア開発の歴史から、ソフトウェアROIの計測などのメソドロジーがすでに確立しているという。今後は、これらの指標を用いて、顧客ごとのソフトウェア開発の健全性や生産性を計測するコンサルティングを提供することが可能となる。

 なお、気になるRational製品群のクラウド対応については、すでに米国でRational製品群のパブリック・クラウドのサービス提供が発表されているが、日本国内においても2011年ごろから提供を開始する予定であるとした。また、ほかのクラウドのサービスを提供するパートナーとの協業により、Rationalの価値を顧客に提供する動きもあるとしているが、いつごろ、どのようなサービスになるのかについては明言を避けた。

 さらに、Rational製品群は、統合開発プラットフォーム「Jazz」への対応を今後も続け、今後も製品ライフサイクル全般にわたるデータの統合と、コラボレーション環境を提供するという。また、日本IBMでは、自社の既存のツールのみならず、ほかのベンダーのツールも生かして連携を強化する仕組みとして、「OSLCOSLC:Open Services for Lifecycle Collaboration」を提唱している。このOSLCは、企業におけるソフトウェア開発の生産性と品質を向上することを目的として、富士通などほかの多くのベンダーと協力していくという。

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(北原 静香)
2010/10/27 18:12