サイオス、マネックス証券の資産設計アドバイスツールをOSSで開発

システム基盤構築からアプリ開発まで全面支援


 サイオステクノロジー株式会社(以下、サイオス)は、マネックス証券株式会社が10月1日より提供開始した資産設計アドバイスツール「MONEX VISION β(マネックス ビジョン ベータ)」において、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)を用いた開発業務に参画したことを発表した。10月8日には、このマネックス証券へのOSS導入事例について、プレス向けに説明会が行われた。

マネックス証券 先進サービス企画室長の飯田敦氏「MONEX VISION β」のデモ画面

 「MONEX VISION β」は、マネックス証券の約130万の口座保有者向けのオンラインツールで、長期分散投資の視点で個人投資家の資産設計をサポートする重要なツールとなっている。マネックス証券 先進サービス企画室長の飯田敦氏は、「長期分散投資の資産設計は、一人ひとり異なるため、それぞれの資産計画に沿ったきめ細かいアドバイスを提供できるツールが求められていた。MONEX VISION βでは、最先端の金融モデルに対応するとともに、ユーザー調査や購買行動を基にしたマーケットアウト発想による機能を搭載している。さらに、ユーザーインターフェイスにもこだわり、楽しみながら触っているうちに理解できるよう、使いやすい操作性やワクワクするデザインを実現した」と、「MONEX VISION β」の特徴を解説。10月1日の提供開始以来、10月6日現在で、すでに利用者は1万人を突破し、予想を上回るペースで好調に利用者が拡大しているという。

先進サービス企画室マネジャーの堀内健后氏「MONEX VISION β」の開発・運用体制

 マネックス証券では、「MONEX VISION β」の開発にあたり、サイオスに開発業務を委託。その経緯について、先進サービス企画室マネジャーの堀内健后氏は、「個人投資家に幅広くアドバイスツールを提供するために、システム導入・拡張時の投資コストを抑えてスモールスタートできるシステムを検討した。その一方で、利用者の急増に備えて、拡張性があることも重要な要件となっていた。そこで、OSSを用いたシステムであれば、柔軟なシステム変更にも対応できると考え、サイオスに開発業務を委託した」と述べている。

 「金融機関として、OSSをシステム構築に採用する際には、機能やパフォーマンスといったスペック、安定性、サポート体制などのリスクが懸念された。そうした中で、サイオスから、OSSだけでなく商用製品との最適な組み合わせによるシステム構築の提案を受け、これを機に、昨年11月からサイオスとの協力体制でMONEX VISION βの開発に着手した」(堀内氏)と、完全な委託開発ではなく共同開発が行えたことも、サイオスを選んだ決め手になったようだ。

サイオス 執行役員クラウドコンサルティング担当の栗原傑享氏マネックス証券でのOSS2適用範囲

 サイオス 執行役員クラウドコンサルティング担当の栗原傑享氏は、「当社では、OSSのライセンス提供とOSSによるシステム開発に加え、もう一つの事業の柱としてOSSによるアプリケーション開発を展開している。今回のマネックス証券の事例では、当社の持つOSSアプリケーション開発力とOSSワンストップソリューション(OSS2)をフル活用し、システム基盤の構築からアプリケーションソフトの開発支援、保守・運用サポートまで、一気通貫で開発業務を手掛けた」と、「MONEX VISION β」の開発をサイオスが全面的にバックアップしたことを強調した。

 「MONEX VISION β」のシステム構成は、OSにRed Hat Enterprise Linux、データベースにPostgres Plus、アプリケーションサーバーにJBoss Enterprise Middlewareを採用。また、データベースに、サイオスのHAクラスタソフトウェア「LifeKeeper」を組み合わせ、万が一のシステム障害発生時にもサービスの継続稼動を支援するシステム設計となっている。

サイオス クラウドソリューション部ソリューション第1グループ テクニカル・スペシャリストの平松寛司氏「MONEX VISION β」のシステム構成

 サイオス クラウドソリューション部ソリューション第1グループ テクニカル・スペシャリストの平松寛司氏は、システム構築のポイントについて、「マネックス証券では、システム構築にあたって、“コスト削減”、“拡張性の担保”、“安定性の確保”の3点を大きな課題に挙げていた。これに対して当社では、まずOSSを活用することで商用ソフトに比べて投資コストの削減を図った。また、商用ソフトを適材適所で採用。サーバー仮想化によって拡張性の高いシステムを構築するとともに、LifeKeeperを組み合わせることで障害発生時のサーバー自動切替とデータミラーリングによる安定稼働を実現した」と説明している。

 今後、サイオスでは、マネックス証券がより安定した、信頼性の高いサービスをユーザーに提供できるよう、高い技術力と豊富なナレッジでOSSの活用をサポートしていく。また、スマートフォン向けのサービスを共同開発することを検討しているほか、将来的には、クラウドコンピューティングを利用した新たなアプリケーションの開発や提供にも積極的に取り組んでいきたい考えだ。

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(唐沢 正和)
2010/10/8 18:13