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NTTとNICT、高い安全性と相互接続性を両立するデジタル署名方式を開発

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)と国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は27日、ドイツのカールスルーエ工科大学との共同研究により、高い安全性と相互接続性を両立する群構造維持デジタル署名方式(以下、群構造維持署名)を世界で初めて開発したと発表した。

 NTTとNICTでは、これまで暗号要素技術は、それらを単に組み合わせただけでは必ずしも安全な暗号アプリケーションができるとは限らず、また、入出力の型の不一致により、単純に組み合わせることは必ずしも可能ではなかったと説明。

 群構造維持暗号技術は、こうした状況に鑑みて考案されたもので、入力の持つ群の構造を維持し、出力も群の構造を保つため、入出力の型がさまざまな暗号要素技術と一致している。このため、単純な接続が可能で、容易に安全な暗号アプリケーションを実現(モジュラー設計)することができる相互接続性を持っている。

 一方、従来の群構造維持署名は、利用者数が増加した場合に鍵長を大幅に伸ばさなければ要求される安全性を達成できず、鍵長を伸ばすと署名サイズなども大きくなり計算コストが大きくなるという欠点があった。

 今回開発した群構造維持署名は、相互接続性に加え、利用者数の増加に影響を受けない緊密安全性を持つ点が特徴となる。

 緊密安全性を達成する従来技術は、ビット列であるデータの集合をある順序に従って静的に分割していく方法しか知られていなかったが、群構造維持署名には適用できなかった。今回開発した技術では、ビット列を群の要素にマッピングし、群の要素が一致するか否かを1ビットの情報にみたてることで、従来技術とは異なる順序を利用して集合を動的に分割することに成功。この群要素による動的分割技術によって、群構造維持署名において初めて緊密安全性を実現したという。

 緊密安全性を持つ暗号方式は、持たない方式と比べて利用者数が増加しても鍵長を伸ばす必要がないため、暗号アプリケーションが保持するデータサイズ、実行に必要な計算量や通信量が小さくなり、暗号アプリケーションを構成する基本部品として望ましい性質を持ち、モジュラー設計に適しているとしている。

 また、今回開発した群構造維持署名方式は、暗号アプリケーションの要求条件に即応して、これまで達成されなかった高い安全性と効率性を両立する暗号アプリケーションを容易に開発することに利用できると説明。開発者が手軽に安全な暗号アプリケーションを作成することに役立つことが期待できるとしている。

 NTTとNICTでは、開発した群構造維持署名方式を含め、相互接続性と緊密安全性を持つ暗号要素技術(基本部品)を取り揃え、安心・安全なネットワークサービス実現のために不可欠な暗号技術を用いた暗号アプリケーションの開発・実用化に向けた検討を進めていくとしている。