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AIを活用して内視鏡画像からポリープや早期がんを発見、国立がん研究センターとNECが診断サポートシステムを開発

 国立研究開発法人国立がん研究センターと日本電気株式会社(以下、NEC)は10日、人工知能(AI)を用い、大腸がんおよび前がん病変(大腸腫瘍性ポリープ)を内視鏡検査時にリアルタイムに発見するシステムの開発に成功したと発表した。

 システムは、大腸の内視鏡検査時に撮影される画像で大腸がんおよび前がん病変をリアルタイムに自動検知し、内視鏡医の病変の発見をサポートするもの。また、臨床現場でリアルタイムに医師にフィードバックするため、画像解析に適した深層学習を活用したAI技術と独自の高速処理アルゴリズム、画像処理に適した高度な画像処理装置(GPU)を用いて、1台のPCで動作するプロトタイプを開発した。

システム概要図

 大腸腫瘍性ポリープは、大腸がんの前がん病変であるため、内視鏡検査時に見つけ出し、摘除することにより、大腸がんへの進行を抑制する。ポリープは内視鏡医が肉眼で見つけるが、サイズが小さく、形状が認識しにくいなどの場合は、見逃されることもある。

 国立がん研究センターとNECでは、国立がん研究センター中央病院内視鏡科による所見が付けられた約5000例の内視鏡画像を学習データとして、NECのAI技術群「NEC the WISE」を用いて解析を行い、プロトタイプを開発。新たな5000枚の内視鏡画像を評価したところ、前がん病変としてのポリープと早期がんの発見率は98%と高い認識性能を有し、偽陽性率は1%に抑えられたという。

 また、動画各フレームにおける検知と結果表示を約33ミリ秒以内(30フレーム毎秒)で行うリアルタイム化に成功。これにより、開発したプロトタイプを用いて、実際の診療にてリアルタイムで医師にフィードバックすることが可能となる。

 大腸内視鏡検査に今回新たに開発したシステムを活用することにより、従来は認識することが困難であった病変を発見しやすくなることが期待され、特に平坦な病変発見が困難な口側の大腸において効果が見込めると説明。AIが人間の視覚をサポートすることにより、内視鏡医の検査の質を向上させることが期待でき、大腸内視鏡検査の経験が浅い医師なども、肉眼で発見したポリープ以外にAIが指し示す部位があればその部位をよく観察することができるとしている。

 今後は、国立がん研究センター中央病院内視鏡科に蓄積される、肉眼では認識が困難な平坦・陥凹性病変をAIに学習させ、プロトタイプの精度を上げることや、画像強調内視鏡に代表される新しい内視鏡を利用することで、大腸ポリープの表面の微細構造や模様を学習し、大腸ポリープの質的診断や大腸がんのリンパ節転移の予測への対応を目指す。

 また、CT画像や分子生物学的情報などの情報とリンクさせ、より利用価値の高いマルチモダリティなリアルタイム内視鏡画像診断補助システムを目指すとともに、国立がん研究センター研究所に設置されたAI解析エリア(GPGPUクラスタ)と中央病院内視鏡科の録画サーバーを隔絶された閉鎖系VLANで接続し、研究を加速させるとしている。