ニュース

NECの2016年度連結決算は減収減益も、営業利益は予想値より増加

 日本電気株式会社(以下、NEC)は27日、2016年度(2016年4月~2017年3月)の通期連結業績を発表した。

 売上高は前年比5.7%減の2兆6650億円、営業利益は同54.2%減の418億円、税引前利益は同21.4%減の680億円、当期純利益は同57.7%減の352億円と、減収減益の結果になった。

2016年度概況サマリー
2016年度実績サマリー

 NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は、「エンタープライズは増加したものの、テレコムキャリアやパブリックが大幅な減益。その他事業が減少した。だが、営業利益は予想値よりも118億円増加しており、費用構造改革が効果を上げている。最終利益はレノボへの株式譲渡などにより金融収益が増加するものの、法人税所得が増加したことで減益になった」と総括した。

NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏

 また、2018年度を最終年度とする中期経営計画については、「2016年度は中期経営計画の初年度として残念な結果になった」とコメント。「2018年度には、営業利益1500億円を目標にしていたが、このままの成長では1000億円は達成できるが、1500億円の達成は難しい。新たな中期経営計画を検討、策定する必要があり、2018年1月に新たな中期経営計画を発表する」と、事実上、下方修正した形で新たな計画を発表する考えを示した。

 2016年度通期のセグメント別業績は、パブリックの売上高は前年比4.6%減の7360億円、営業利益は前年から113億円増の460億円。第4四半期から日本航空電子工業を連結子会社化し、売上高で480億円、営業利益で30億円のプラス効果があったものの、公共分野向けを中心に売上高が減少。不採算事業が発生した宇宙事業の採算性悪化が影響して減益になった。

セグメント別 2016年度実績サマリー
パブリックの概況

 エンタープライズは、売上高が前年比2.0%増の3063億円、営業利益は前年並の239億円。流通・サービス業向けが減少したが、製造業向けが堅調に推移したのがプラス要素となった。

 テレコムキャリアは、売上高は前年比12.3%減の6116億円、営業利益は前年から271億円減の195億円。通信事業者の投資停滞および230億円の影響があった円高のマイナス影響により減少。SDNや5Gなどの注力領域への投資増、海洋システムの工期延長も減益要素になった。

エンタープライズの概況
テレコムキャリアの概況

 システムプラットフォームは、売上高は前年比1.2%減の7198億円、営業利益は前年から23億円減の294億円。前年度にあったハードウェアの大型商談の反動のほか、企業ネットワーク需要が減少したという。だが、第4四半期には自治体や学校ICTなどの需要があったことがプラス要素になったという。

 その他事業では、売上高が前年比10.9%減の2913億円、営業損失は前年から40億円改善したものの、142億円の赤字となった。スマートエネルギー事業が減少したほか、海外事業の採算性が悪化した。

システムプラットフォームの概況
その他事業の概況

2017年度は増収増益、2兆8000億円の売上見込む

 一方、2017年度の業績見通しは、売上高が前年比5.1%増の2兆8000億円、営業利益は同19.5%増の500億円、当期純利益は同9.8%増の300億円を見込んでいる。

 日本航空電子工業の連結子会社化により、売上高で1800億円、営業利益で70億円のプラス効果や、不採算案件の改善で90億円の利益改善などを見込む一方、指名停止の影響として、売上高で600億円減、営業利益で150億円減が影響。さらに、構造改革費用の織り込みによる利益影響でのマイナスが100億円、戦略投資の織り込みでの利益影響としてマイナス80億円の合計330億円を、一過性の悪化要因として織り込んだという。

 「2017年度は、指名停止の影響を、大きく織り込まざるを得ない。売上高は、実質的にはほぼ横ばいの想定としている。パブリックを中心とした業績改善を見込んでいる。営業利益300億円の達成と、年間6円の配当維持に取り組む」と述べた。

業績予想における特殊要因
業績予想サマリー

 2017年度通期のセグメント別業績見通しは、パブリックの売上高は前年比19.6%増の8800億円、営業利益は前年から210億円増の670億円。エンタープライズは、売上高は前年比0.4%減の3050億円、営業利益は前年から39億円減の200億円。テレコムキャリアの売上高は前年比0.3%減の6100億円、営業利益は前年から45億円増の240億円。システムプラットフォームの売上高は前年比4.8%減の6850億円、営業利益は前年から4億円減の290億円。その他事業では、売上高が前年比9.9%増の3200億円、営業損失は前年から62億円の改善を目指すが、マイナス80億円の赤字を見込む。

 「パブリックでは指名停止の影響として500億円のマイナス影響があるものの、日本航空電子工業の連結子会社化などにより増加を見込んでいる。エンタープライズでは、製造業向けは堅調だが、流通・サービス業向けは減少。プロジェクトミックスの悪化などにより、減益を見込んでいる。また、テレコムキャリアでは、海洋システムなどの海外既存事業が減少するが、SDN、NFVなどの新規事業の伸長により横ばいを見込んでおり、営業利益では、5Gへの開発費用の増加があるものの、海外事業の収益改善により増益を見込む。システムプラットフォームでは、指名停止の影響としてマイナス100億円を想定しているのに加えて、携帯電話端末事業などのハードウェアが減少。費用の効率化や前年の偶発損失引当金繰入などの減少などがあり減益を見込んでいる」とした。

“マネジメントの実行力不足に尽きる”

 なお、2018年度を最終年度とする中期経営計画については、「昨年度1年間の実績を見ると、NECが置かれた状況が大きく変わってきた。ひとことでいえば、市場環境や顧客動向の変化に対応したマネジメントの実行力不足に尽きる。海外を中心とした注力3事業の立ち上げにおいて実行力が不足しており、既存事業での目標未達、新規事業の遅れが見られた。また、個別事業での採算性の悪化、収益性があり、公共インフラ分野では新たな不採算案件も発生した。さらに、公正取引委員会から3件の排除措置命令および課徴金納付命令を受けるなど、ガバナンスやコンプライアンスの問題もあった」と前年を振り返る。
 また、「2017年度は、2018年度のキャリア向け5G商用試作機リリースに向けての開発を加速する。一過性要因を除いて、オペレーションベースで収益を改善方向にあるスマートエネルギーでは、大型蓄電システムと電極を中心とした売り上げ拡大と採算性改善を想定している。さらに、新たな不採算案件の発生防止に向けては、SI・サービス系で不採算案件を撲滅したノウハウを横展開していく」などと述べた。

2018中期計画の振り返り

 一方で、「来年1月に発表する中期経営計画は、2020年度までの3カ年を対象にした計画を新たに策定することになる。年度計画の策定プロセスを変更し、コーポレート機能を強化。CxOへの権限委譲や役割、権限、責任を明確化し、BU側で推進する体制とすることで、経営スピードを高める。また、課題事業の変革を含めた国内事業の収益改善が必要であり、売上高が伸びなくても収益性を改善しきたい。海外での成長方針は不変だが、注力3事業に加えて、AIの活用などを通じて、さらなる成長のための具体策も検討していく」とした。

 このほか、「営業利益率5%を出す体質にすることが一番大切なことだと考えており、これは新たな中期経営計画でも前提とする考え方となる。2020年度を待たずに、早期に達成したいと考えている。ローバルで戦う企業になるには、5%以上の営業利益率は必要である。しかし、これは、高い目標ではないが、パブリックやテレコムキャリアなどの事業を売却して、5%以上の営業利益を達成するという考えはない。新たな中期経営計画のなかでは、大きな構造改革は考えていない。だが、リソースシフトはもっと進めていく必要があり、その点では、人の絶対数は必要になってくる」との考えを示している。

 これまでの成果については、業務改革推進プロジェクトにより、2016年度に140億円の効果を創出したこと、ハードウェア子会社やソフトウェア子会社の再編および統合に取り組み、収益構造を立て直してきたことを強調したのに加えて、「これまでの静止画の顔認証において世界一を達成したのに続き、新たに動画の顔認証技術でも世界一を達成した。また、SDNやNFVにおいては、欧州および中近東、北米で、大手通信事業者から10件の商用案件を獲得し、パイプラインは半年が1.6倍に拡大した。ここでは、2017年度に前年比1.5倍の成長を目指す。さらに、リテール向けITサービスは、米セブン・イレブンからのPOSシステム、保守サービスを受注し、AIやIoTでは、産学連携や他社との提携および協業を推進していくことになる」などとした。

 さらに、新野社長は、「今後の売上高を伸ばすのは海外事業になる。そこにおいては、セーフティ分野が鍵になる。また、キャリア向けのビジネスも成長要素になり、リテール向けITサービスにおいても、モノを作って、運んで、売るという点において、NECの強みが発揮できる」と発言。「環境が刻々と変化するなかで、自分自身が変化していかないと競争に勝てない。経営スピードの向上と実行力の強化に取り組み、2017年度は、信頼を再び回復し、新たな数字を確実に達成したい」と述べた。

 なお、同社では、取締役および執行役員を対象に、業績連動型株式報酬制度を、新たな中期経営計画の3事業年度を対象に導入し、「中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識の向上を図る」とした。

今後の経営について
業績連動型株式報酬制度