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クラウド型SIの国内市場は2020年には約3兆7000億円規模に、富士キメラ総研調査

2020年にはSI市場全体の約3割がクラウド型SIに

 株式会社富士キメラ総研は24日、クラウドビジネス(クラウド型SI)の国内市場についての調査結果をまとめた報告書「2017 クラウドコンピューティングの現状と将来展望」を発表した。

 報告書では、パブリッククラウド(SaaS、DaaS、IaaS/PaaS)、共同利用サービス、プライベートクラウド(オンプレミス型、ホスティング型)、ハイブリッドクラウドの各市場について現状を調査し、将来を予想している。

 クラウド型SIの国内市場については拡大を続けており、2020年度の市場規模は2015年度比で76.6%増の3兆6922億円に達すると予測。特に大幅な伸びが予想されるのはパブリッククラウドで、中でもSaaS(業種共通型/業種特化型)の構成比が大きく、当初は中堅・中小企業向けが中心であったが、短期間で導入できるため近年は大手企業でも利用が増えているとしている。

クラウドビジネス(クラウド型SI)の国内市場

 業種共通型については、メール/グループウェア、CRMといった情報系のアプリケーションが中心で、メガクラウドベンダーの提供するサービスの利用が好調で、業務プロセスの共通性が高い財務/会計、人事/給与などの基幹系システムや、セキュリティ関連の伸びも期待されると分析。業種特化型については、流通業やサービス業など小規模の企業が多い業種で導入が進んでおり、今後はその他の業種でもスマート工場(製造業)や地域医療連携/地域包括ケア(医療/福祉介護)、教育のIT化(学校教育)などを目的とした導入が期待されるとしている。

 DaaSについては、IaaSの付加価値サービスのひとつとして展開するベンダーが増えており、ユーザーは金融業や自治体、大規模製造業が中心であったが、ワークスタイル変革やインターネット分離のニーズ拡大により中堅・中小企業でも導入が増えていると指摘。また、設計/開発部門やマイナンバー管理を行う総務部門など特定部門のみの部分的な導入もみられるという。

 IaaS/PaaSについては、メガクラウドベンダーの提供するオートセルフ型のサービスが伸びをけん引。今後は、既存システムからの移行に加え、IoT、FinTech、オムニチャネルなどSoE(System of Engagement)用途で新規システム基盤としての利用による伸びが期待できると予測。PaaSについても、ラインアップを拡充するベンダーが増えており、特に高い伸びが予想されるとしている。

 業種別では、ソーシャルゲームなどを展開するエンターテインメント向けの市場が落ち着きつつあり、近年は他の業種でも利用が拡大。特に、これまでクラウド活用に消極的だった金融業が、一部では積極的な活用を進めているため、今後の伸びが期待されると予想している。

 製造業については、海外拠点を持つユーザーも多く、グローバルビジネスの円滑化を目的に、SoR(Systems of Record)などのシステムプラットフォームの統合ニーズが高まっていることで、利用が進展。また、初期投資を抑えて導入できることに加え、ベンダーがIaaS/PaaSを活用したIoT/ビッグデータプラットフォームをリリースし始めているため、今後はSoE用途での利用拡大も期待されるとしている。流通業やサービス業については、比較的導入の障壁が低く、コスト面を重要視して利用するケースが多いという。

 プライベートクラウドについては、ユーザーのIT資産で構築するオンプレミス型が、自社IT製品をクラウド環境へ移行できるため、その簡便性から導入が増えていると分析。ベンダーが提供するホスティングを利用するホスティング型は、一部ユーザーのパブリッククラウドへの移行もみられるため、オンプレミス型の方が伸びが大きくなると予想している。

 従来型SIが減少する中、ベンダーはプライベートクラウドへの取り組みを重要視しており、システムによってプライベートクラウドとパブリッククラウドを使い分けるソリューションを強化することで利用拡大を図っていると分析。特にコンピューターベンダーは、自社プロダクト(ハードウェア/ソフトウェア)の拡販ができるため、注力度は極めて高いとしている。

 共同利用サービスは、システム開発・運用コストの削減を目的とした、金融業(銀行、証券、信用金庫)や自治体の需要が中心となっており、今後は、FinTechに対応したシステム基盤構築サービスの提供や、地方自治体における自治体クラウド進展による需要により堅調な伸びが予想されるとしている。

 金融機関では、すでに共同利用サービスを利用している事業者が、個別システムで対応している業務の共同利用への切り替えによる需要増が期待されると予測。また、地方自治体は、マイナンバーに対応した業務システムへの移行ニーズが高まり、自治体クラウドへ移行する契機となっているため、今後の大幅な伸びが予想されるとしている。

 クラウドサービス同士や、クラウドサービスと既存システムを連携するハイブリッドクラウドについても、今後大幅な伸びが予想されると予測。SI事業者は、自社クラウドサービスだけでなく、他社のIaaS/PaaSの積極的な展開や、ハイブリッドクラウドを前提とした統合運用管理ツールの開発に注力していると分析している。

 IaaS/PaaS市場をけん引しているのはメガクラウドベンダーで、2016年度は50%弱の構成比を占め、特にPaaSでは80%以上を占めると推計。今後も、価格面やサービスラインアップで優位なメガクラウドベンダーの構成比が高まると予測されるが、PaaSはIaaSの付加価値サービスとして注力する国産ベンダーが増えているとしている。

 メガクラウドサービスは、ウェブサイト基盤用途やコンシューマー向けサービス基盤(ソーシャルゲーム、コンテンツ配信など)用途などで需要は引き続き堅調で、さらに近年は基幹系システムや情報系システムなどのSoR用途でも導入が進んでいると分析。また、ビッグデータやIoT、人工知能といったSoE用途についても、メガクラウドベンダーはSoE用途と親和性の高いPaaSのラインアップ拡充に取り組んでおり、今後の大幅な伸びが期待されるとしている。

 国産ベンダーは、メガクラウドベンダーの価格戦略に対して、個別ニーズの柔軟対応や手厚い運用サービス提供などで対抗していると分析。メガクラウドベンダーとの協業も増加しており、国産SIベンダーや国産コンピュータベンダーは主幹システム開発の中でビッグデータやIoT領域の注力度を高めており、SoE用途でのクラウド利用の推進や、自社サービスだけではなく他社サービスへの対応も柔軟に行っているとしている。

 SIの国内市場全体におけるクラウド型SIの構成比は、2015年度の20%弱から2020年度には31.2%に拡大すると予測。一方、メインフレーム系システムやサイロ型システムなどの従来型SIの構成比は減少し、クライアントPCやPOS端末などの専用端末、それらに伴う保守/運用を対象としたその他の市場も縮小が予想されるとしている。