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水資源機構、緊急時の防災業務に対応する富士通の職員支援システムを導入

 株式会社富士通マーケティングは11日、独立行政法人水資源機構の管理所である琵琶湖開発総合管理所に、富士通株式会社と共同開発したIoTを活用した排水機場の職員支援システムを導入し、同管理所では管理する14カ所の排水機場で4月1日に運用を開始したと発表した。

 琵琶湖周辺を管轄する琵琶湖開発総合管理所では、14カ所の排水機場において、ポンプ設備やゲート設備など多数の機械設備を管理している。ゲリラ豪雨や台風などにより急激に増水した際には、河川の氾濫を軽減するための内水排除で、多くの設備を同時に操作する必要があるが、有事の際に在籍する限られた人員で対応するためには、専門職以外の職員でも排水のための現場作業に対応できるようにすることが課題となっていた。

 こうしたことから、琵琶湖開発総合管理所では、排水機場の運転操作をIoTで支援可能なタブレットとヘッドマウントディスプレイを活用した職員支援システムを導入した。

職員支援システムのイメージ

 職員支援システムのうち作業指示システムは、作業指示を1ステップずつ直感的で読みやすいカード形式でディスプレイに表示し、運転操作の手順確認を行うことができ、手順通りに作業を進めることで、作業結果が自動で記録される。システムはタブレットでもヘッドマウントディスプレイでも利用できるため、作業場所や内容に応じて適切な端末を選ぶことができる。

 AR統合基盤「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」は、タブレットやヘッドマウントディスプレイのカメラで、設備に貼付されたARマーカーを認識することで、対象の設備を特定し、設備に応じて関連情報を表示できる。薄暗い場所や斜めの位置からでも精度良く認識できるマーカー認識技術により、円滑な現場作業を実現する。

 遠隔支援システムは、ヘッドマウントディスプレイからの現場のカメラ映像と音声を遠地でリアルタイムに共有し、専門職員が一般職員の現場作業を遠隔で支援する。カメラ映像に印を書き加えて現場のディスプレイに表示させ、作業箇所を指示することもできる。

 作業情報管理システム「FUJITSU Enterprise Application AZCLOUD SaaS teraSpection」は、作業指示システムと連携し、現場の作業結果をクラウドに記録する。管理者は、クラウドに蓄積された履歴を閲覧することで、その作業が正しく実施されたか確認でき、作業履歴は報告書として任意フォーマットで出力できる。

 こうした仕組みにより、職員全員で同じ品質による運転操作を可能にするとともに、遠隔支援により作業のつまずきを解消。作業報告書の自動作成により効率化を実現する。

 水資源機構では、今回の職員支援システムで利用している作業情報管理システム「FUJITSU Enterprise Application AZCLOUD SaaS teraSpection」を日々の保全業務にも活用し、点検チェックシートの作成やデータの可視化、予兆診断分析(健全性評価)など、今後もさまざまな設備管理へと活用範囲を広げることを検討している。富士通グループでは、水資源機構の業務を支援するとともに、電力会社やプラントメーカーなどに適用を拡大していくとしている。