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トレンドマイクロ、2017年の法人向け事業戦略を発表

新たな防御アプローチ「XGen」を中核にパートナー連携およびIoT対応を強化

 トレンドマイクロ株式会社は29日、2017年の法人向け事業戦略について記者発表会を開催した。発表会では、法人向け事業の重点施策として、先進技術と高い実績を融合した新たな防御アプローチ「XGen」に基づいたセキュリティソリューションを提供することに加え、マネージドセキュリティサービス(MSS)パートナーとの連携強化、さらにはホーム/自動車/工場向けにIoTセキュリティソリューションを提供していく方針を明らかにした。

 企業や組織を狙う脅威の最新動向について、トレンドマイクロ 代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏は、「ITインフラやユーザー行動の急速な変化にともない、企業や組織を狙う脅威は、量・種類ともに増大し続けている。毎日50万以上の脅威が発見されており、特にランサムウェアは昨年、増加率700%、247ものファミリーが出現した。さらに、最近ではビジネスメール詐欺の攻撃が増加し、米国の平均被害額は14万米ドルにのぼっている」と指摘する。

トレンドマイクロ 代表取締役社長兼CEOのエバ・チェン氏

 「こうした脅威に対するサイバーセキュリティの成功へのアプローチは、既知・未知にかかわらず脅威を防御する“クロスジェネレーション”であると考えている。そのためには、戦略を固定するのではなく、ITインフラの変化を迅速にとらえ、ユーザーの行動を受け入れ、新たな脅威に対応して守るという“x=I(インフラ)+U(ユーザー行動)-T(脅威)”の方程式が重要になる」と、同社の法人向けセキュリティ戦略の方向性を示した。

トレンドマイクロのセキュリティ戦略の方程式

 そして、この戦略の中核を担うのが「XGen」であると説明する。「XGen」は、AIやサンドボックスといった先進技術と、パターンマッチングを始めとした高い実績を持つセキュリティ対策を融合した防御アプローチで、「すべてのレイヤにおける既知と未知の脅威に対して、最適な防御策を提供する」(チェン氏)とした。

 同社では、「XGen」に基づいたセキュリティソリューションを、「User Protection」(多様な環境におけるユーザーの保護)、「Hybrid Cloud Security」(クラウド&仮想化セキュリティ)、「Network Defense」(複雑化するネットワークの防御)の3つのレイヤに向けて提供していく計画だ。

「XGen」に基づいたセキュリティソリューション

 具体的なソリューション展開としては、「User Protection」では、「XGen」に基づいた企業向け総合セキュリティソフト「ウイルスバスター コーポレートエディション XG」を今年1月から提供しており、今後、クラウド型総合ゲートウェイセキュリティアプライアンス「Cloud Edge」、クラウドアプリケーション向けセキュリティサービス「Trend Micro Cloud App Security」、クラウド型エンドポイントセキュリティサービス「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」の各製品に、「XGen」に基づいたAI技術による機械学習型検索機能を新たに搭載する予定。

 「Hybrid Cloud Security」では、総合サーバーセキュリティ対策製品「Trend Micro Deep Security」が新たなITインフラ(Docker)に対応。今後、「XGen」に基づいたAI技術による機械学習型検索機能を新たに搭載し、増加するランサムウェアの対策を強化する。また、サンドボックス連携によって標的型サイバー攻撃への防御力を向上する。

 「Network Defense」では、ネットワーク型脅威対策製品「Deep Discovery Inspector」と、Webフィルタリングやネットワーク検疫、デバイス制御などの国内の他社セキュリティ製品との連携を強化する。これにより、顧客環境の防御力向上を支援する。また、「Deep Discovery Inspector」とネットワークセキュリティ製品「TippingPoint」にも、「XGen」に基づいたAI技術による機械学習型検索機能を搭載していく。

 日本市場でのビジネス戦略について、トレンドマイクロ 取締役副社長の大三川彰彦氏は、「『XGen』に基づいたセキュリティソリューションを提供するとともに、MSSパートナーとの協業により、幅広い顧客環境に最適なセキュリティを展開していく」と、MSSパートナーとの連携強化を重点施策に挙げる。

 「『Hybrid Cloud Security』のレイヤでは、中堅・準大手企業に向けて、クラウドインテグレータとの連携強化によってクラウド、オンプレミスなど多種多様なサーバーのセキュリティ向上を支援する。『Network Defense』のレイヤでは、大手企業に向けて、複数のセキュリティ製品を運用/監視するパートナーと協業することで、標的型サイバー攻撃に対して運用面も含めて支援していく。『User Protection』では、中小企業のITインフラを包括的に運用・監視するパートナーと協業し、エンドポイント、ネットワークのセキュリティをSaaS型で提供する」としている。

トレンドマイクロ 取締役副社長の大三川彰彦氏

 さらに、同社では、2017年の法人向け事業の重点施策として、IoTセキュリティソリューションの取り組みにも力を注いでいく方針だ。チェン氏は、「すでに海外では、IoT関連のセキュリティ被害が報告されており、今後、IoTのセキュリティインシデントは確実に増大していくとみている。これに対して当社では、Connected Home(ホーム)、Connected Car(自動車)、Smart Factory(工場)の3つの領域に向けて包括的なIoTセキュリティソリューションを提供していく」と、IoT時代に向けたセキュリティ戦略を加速していく考えを強調した。

トレンドマイクロのIoTセキュリティソリューション

 ホーム向けには、ホームネットワークセキュリティ製品「ウイルスバスター for Home Network」の提供に加え、今後、通信事業者と連携したセキュリティサービスを提供する。また、ルータなどを提供するネットワーク機器ベンダーに、ネットワークレイヤで保護するセキュリティ技術「Trend Micro Smart Home Network」をOEM提供することで家庭内のスマート家電を保護する。

 自動車向けには、ソフトウェア開発キット(SDK)を含むIoT機器向けセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security」を、自動車メーカーや車載機器メーカーに提供する。これにより、自動車のリスク検知(システム整合性確認、異常検知、脆弱性検知など)とシステム保護(アクセス制御、仮想パッチなど)を実現したデバイス組み込みのセキュリティソリューションを展開していく。

 工場向けには、工作機械メーカーや産業用ロボットメーカーに対して、ネットワーク型脅威対策製品「Deep Discovery Inspector」、ロックダウン型ウイルス対策ソフト「Trend Micro Safe Lock」、「Trend Micro IoT Security」を提供し、セキュリティを組み込んだシステムを実現する。また、PLC、EWS、FAユニットなどを用いて産業用システムを構築する制御系システムインテグレータと協業し、ネットワークセキュリティ製品「TippingPoint」、総合サーバーセキュリティ対策製品「Trend Micro Deep Security」などのライセンス販売を行っていくという。