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富士通、大規模IoTシステム向けテストベッドの無償提供を開始
エッジコンピューティングで課題となる大規模データの分散処理と一元管理を両立
2017年2月6日 13:18
富士通株式会社は6日、IoTシステム向けアプリケーション開発を行う企業や研究機関などを対象に、大規模IoTシステム向けテストベッド(実証環境)の無償提供を開始した。
IoTシステムでは、センサーからクラウドに送信されるデータが増大すると、ネットワークの帯域が不足し、安定的なリアルタイム処理が困難になるという課題がある。この問題に対して、センサーとクラウドの間に配置したエッジコンピューターに処理を割り当てることで、クラウドに送信されるデータ量の抑制を実現するエッジコンピューティングと呼ばれる手法が用いられている。
しかし、この手法では、エッジコンピューターでの処理内容があらかじめ固定されるため、データ量が増大するとエッジコンピューターの計算能力不足によって処理が遅延するという課題と、センサーから収集され、各エッジコンピューターに分散して蓄積されるデータの一元的な所在管理ができないため、データを別の目的で再利用できないという課題が新たに生じている。
富士通では、こうした課題を克服し、データの安定したリアルタイム処理と効率的な活用の両立が可能となるIoTシステムのテストベッドを開発した。
提供するテストベッドは、センサーから収集された大量のデータの処理を最も効率的に行えるよう、自動的にクラウドとエッジコンピューターに振り分ける「ダイナミックリソースコントローラー(DRC)」機能を搭載した、クラウド型のIoTデータ活用基盤サービス「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」をベースにしている。
さらに、センサーから収集され、クラウドとエッジコンピューターに分散して蓄積されるデータの一元管理を可能にする、株式会社富士通研究所の新技術「広域分散データアクセス技術」を、DRCに組み込んで提供する。
テストベッドに「広域分散データアクセス技術」を組み込むことで、処理の振り分け先であるクラウドや各エッジコンピューター上に分散して蓄積されるすべてのデータの種類や所在情報のみをクラウドに集約し、一元管理を可能にする。これにより、他のアプリケーションでのデータの再利用といった効率的なデータ活用を実現する。
テストベッドを利用することで、利用者はデータの所在管理や効率的な分散処理を行う仕組みの作り込みが不要となり、大規模IoTシステム向けアプリケーションの開発を迅速に行うことが可能になる。
富士通では、今後1年間、テストベッドの利用者を募集し、10件程度の企業・団体の利用を見込む。利用者は、テストベッドの活用状況に関する報告書を提出することで無償利用できる。