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富士通など、コールドデータストレージを活用した大陸間データセンター連携の共同実証実験を開始

 国立大学法人大阪大学と米Scality、富士通株式会社は21日、4月に設立した産学連携のコンソーシアムにより、日欧の実証実験パートナーとともに、コールドデータストレージを活用した大陸間データセンター連携の共同実証実験を行うと発表した。

 実証では、分散コンピューティング環境で活用されているScalityのCRDT(Conflict-free Replicated Data Type)というデータ共有技術を応用。ほとんど更新されない「コールドデータ」と呼ばれるデータを、各大陸にあるデータセンター間で複製することにより、スループットの向上や、対災害性、個々のデータセンターの内部冗長を排することによる低コスト化に優れた遠隔地間連携ストレージ基盤を構築し、その効果などを検証する。

 現在、データセンター間のデータ連携を行うためには、データ遅延が小さい近距離での同期通信型による連携を取る方式と、遠距離での非同期通信によりバックアップを取る方式が採られている。近距離での同期通信型の場合は、大規模災害などで複数のデータセンターが同時に被害を受ける可能性が高く、遠距離での非同期通信型の場合は、データセンター間を伝送するデータ遅延が大きくなるため、バックアップや災害復旧のためのスタンバイ冗長型の連携しかできなかった。

 一方で、IoTやAIでの適用などを背景に、ほとんど更新されないコールドデータと呼ばれるデータが、画像および映像系を中心にデータの半数を占めるようになり、新しいデータの蓄積、および複数拠点間でのデータ共有へのニーズが高まってきている。ただし、複数拠点間のデータセンター連携の実現に向けては、データセンター間でのデータ同期の実現や、読み出し時の応答速度の向上などが課題となっている。

 実証では、近距離のデータセンター間やスタンドアロンのデータセンター内部でのみ実現していたデータの階層化と冗長化を、大陸間のような遠距離で実現する「Geo Replicationシステム」を開発する。頻繁に更新されるホットデータや、それよりは更新頻度の低いウォームデータに加え、ほとんど更新されないコールドデータを複数種類のストレージデバイスへ階層化して保存することで、全体スループットと応答性、低コスト化、長期保存の機能をシステム全体で実現する。

 大阪大学が膨大な量のデータ管理を実現するストレージ用ソフトウェア「Scality Ring」とコールドストレージ間のデータ階層化制御を、Scalityが「Scality Ring」によるストレージ機能と遠距離サイト間でのデータレプリケーションを担当。富士通は全体プロジェクト管理、ホットおよびコールドストレージ装置、アーカイブデータ高速検索システムを担当する。

 コンソーシアムの参加各社は、Geo Replicationシステムの開発を進め、大阪大学のデータセンターで実際に使用しているデータを使いながら、ヨーロッパのパートナーとの間で、実用化に向けた実証実験を行う。

 実証実験は、2016年11月~2017年12月の期間、大阪大学サイバーメディアセンター内のデータセンターと、パリのアンテメタ社が所有するデータセンター間で実施。コンソーシアムには、大阪大学、Scality、富士通のほか、株式会社アクタスソフトウェア、中央電子株式会社、パナソニック株式会社、ヤフー株式会社、ラリタン・ジャパン株式会社、FESTIVAL Project、Engineering Ingegneria Informatica、Institut Pasteur(パスツール研究所)、フランス原子力・代替エネルギー庁、フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)が参加する。

 2017年3月末までに基本動作の確認を行い、2017年度に本実証における研究成果の論文発表を行う。また、並行して2017年4月~2017年12月の期間、日欧の共同実証実験パートナーとともに、具体的なアプリケーション、様々なタイプのデータでの利用実験を実施。実証における研究成果を元に、コールドデータストレージサービス、遠隔地間連携ストレージ基盤の開発、利用技術の開発を目指すとしている。