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ビジネスの結果にコミットするクラウドを――、ミランティス・ジャパン、株式会社としてあらためて日本市場に進出

 米Mirantisは5日(日本時間)、これまで日本法人として展開してきたミランティス・ジャパン合同会社をあらため、ミランティス・ジャパン株式会社として7月15日から日本市場での事業を開始することを発表した。

 Mirantisの共同創業者で現在はCMO(チーフマーケティングオフィサー)を務めるボリス・レンスキー(Boris Renski)氏は、「現在、企業がクラウドに期待するのはビジネスの成果であってクラウド環境の構築ではない。MirantisはOpenStackベンダーとしてNo.1の実績を欧米で残してきたが、次は日本市場において、OpenStackクラウドがビジネスにもたらす成果の大きさを伝えていきたい」としており、“結果にコミットするクラウド”を前面に掲げ、日本市場でのシェア拡大を狙う。

 株式会社として新たなスタートを切るミランティス・ジャパンは、2015年2月に合同会社として設立され、日本での事業を開始。その後、代表取締役社長にCiscoやVerizonなどの日本法人でエグゼクティブとして活躍してきた磯逸夫氏を迎えている。今回の日本法人設立にあたっては、国内SIerのエーピーコミュニケーションズが株主として参画しており、同社とのジョイントベンチャーとして事業が展開されることになる。

米Mirantisの共同創業者兼CMOのボリス・レンスキー氏
ミランティス・ジャパン 代表取締役社長の磯逸夫氏

 今回の発表のために米国から来日したレンスキー氏は、MirantisがOpenStack専業ベンダとしてAT&TやWalmart、Volkswagenといった欧米のエンタープライズ企業における大規模なOpenStackアダプションを数多く成功させてきた実績を強調、日本市場においても「大企業がクラウドジャーニーをたどるお手伝いをしたい」と語り、エンタープライズビジネスにフォーカする姿勢を見せている。

 「MirantisはOpenStackベンダとしてこの5年、非常に多くのことを学んできた。とくに日本のユーザに伝えたいのは、顧客のクラウドジャーニーにおける3つのステップ――、Build(構築)、Run(運用/管理)、Transfer(ビジネス価値への転換)において、Transferがもっとも重要だという点だ。単にクラウド環境を構築することだけでは得られないアウトカム(効果)をOpenStackによって提供していきたい」(レンスキー氏)。

 また、日本市場のビジネスパートナーとしてエーピーコミュニケーションズを選んだ理由として「会社としての信念やビジョンに共通する部分が多く、またMirantisにとって重要な市場であるテレコム業界に強い。Mirantisと日本の顧客の間にエーピーコミュニケーションズが立ってくれることでよりきめ細やかなサービスが期待できる」(レンスキー氏)といった点を挙げている。

 エーピーコミュニケーションズ 代表取締役社長 内田武志氏もまた「当社がMirantisと日本企業の架け橋としての役割を担っていきたいと思っている。また国内のOpenStackコミュニティとも積極的に関わっていきたい。そのためにもOpenStackエキスパートの育成に今後は注力していく」とミランティス・ジャパンの株主としての活動を通して、国内OpenStack市場そのものの拡大に努めていくとしている。ミランティス・ジャパンと協力し、Milantisが得意とするOpenStack技術者を要請するためのトレーニング事業も積極的に展開していくという。

Mirantisには現在グローバルで80社のパートナーが存在する。今後、日本でのパートナーを増やしていくことは大きな課題のひとつ
エーピーコミュニケーションズ 代表取締役社長 内田武志氏

 またミランティス・ジャパンを社長として率いていく磯氏は、「OpenStackの導入に興味はあるものの、まだ導入にはためらいがある、という企業に対して安心感を届けていくことが当社のゴール。日本の法人ビジネスにとってもっとも重要なのは安心感。OpenStackにまつわる不安感を我々の手で解消していきたい」と日本法人トップとしての意気込みを語っている。

 国内のOpenStack市場に関しては「夜明け前の市場」(磯氏)と表現しており、つづけて「現在、特に大企業においてはパブリッククラウドからプライベートクラウドへの揺り戻しがきていると感じている。オープンスタンダードな技術で構成されているOpenStackを導入することにより、ベンダロックインから顧客を解放したいと考えている」と、パブリッククラウド中心だった市場の変化をニーズとしてとらえているという。

Mirantisが強調するのがクラウド環境におけるベンダーロックインからの解放。オープンスタンダードなOpenStackだからこそ、それが可能だとする

 ミランティス・ジャパンの方針で注目したいのはあくまで大企業にフォーカスしているという点だ。レンスキー氏も磯氏も「中小企業やスタートアップはOpenStackよりもAWSのようなパブリッククラウドを使ったほうがいい」と明言しており、欧米と同様、日本市場でも大企業中心でアダプションを進めていく方針を示している。

 「操業から最初の2年間、我々のゴールはOpenStackクラスタを顧客の環境で動かすことだった。しかしいまではその方針が間違っていたと反省している。我々が目指すべきは、スピードとコストという2つのメトリクスにこだわってOpenStackによる効率化を推進し、ビジネスのアウトカム(結果)にコミットすること。そうしたことを考えるとオペレーションが小さい企業よりもある程度の規模のクラスタを展開できる環境のほうがフィットする」(レンスキー氏)。

 レガシーが多く、オンプレミスからクラウドへの移行に苦しむ日本企業にとってOpenStackが興味深いソリューションであるのは間違いない。「ビジネスとITインフラの間の溝を埋める」(磯氏)というミランティス・ジャパンの掲げるゴールが、硬直した日本のレガシーITにどう影響していくのかに引き続き注目していきたい。

記者会見では記念撮影も行われた