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レノボ・ジャパン、サーバー付加価値サービスを提供する米沢事業場の現場を公開

 レノボ・ジャパンは、6月からスタートした、NECパーソナルコンピュータ(以下、NECPC) 米沢事業場で実施するサーバーの付加価値サービス「米沢ファクトリー・インテグレーション・サービス」を報道関係者に公開した。

「米沢ファクトリー・インテグレーション・サービス」を提供するファクトリー・インテグレーション・センター

 「今年4月に開催した発表会でこのサービ提供の計画を表明したが、今回は現場を見てもらうことで、高品質なサーバー製品を提供していることを実感していただきたい」(レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 事業本部長の上原宏氏)。

レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 事業本部長の上原宏氏

 現在取り扱っているサーバーはLenovo本社が米IBMから買収したものだが、IBMブランドに比べレノボブランドのサーバーは、日本での認知度が低い。品質の高い製品を生産する米沢事業場で付加価値サービスを行うことで、レノボ製サーバーブランドの認知度向上を狙うという。

 ファクトリー・インテグレーション・サービスは、System x、Converged HX Series、Flex System、NeXtScale、ストレージ製品を対象としたもので、出荷前の特別点検やハードウェア構成の変更やソフトウェアの追加などを有償で提供する。「システムインテグレータが実施するサービスとは異なり、ケーブル配線や点検といった煩雑な部分をレノボ側で請け負う」(レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 DCGソリューション本部 副事業本部長の橘一徳氏)と、その特長を説明した。

レノボ・ジャパン データセンター・グループ事業本部 DCGソリューション本部 副事業本部長の橘一徳氏

 現在のキャパシティは1日20台、月間400台から500台からスタートし、「需要に合わせて今後、拡大するべきかどうかを判断したい」という。

 また、米沢事業場で生産しているPCの生産ラインを公開。新たに利用を始めたロボットアームなどを公開したが、「部材の状況など、工場内のデータはすべてデジタル化されているものの、IoT対応はまだできていない。どのようにIoT対応していくべきかは、今後の課題となる」(NECPC 生産事業部生産事業部長の竹下泰平氏)と説明した。

NECPC 生産事業部生産事業部長の竹下泰平氏

顧客にとって煩雑な部分を請け負うファクトリー・インテグレーション・サービス

 今回、ファクトリー・インテグレーション・サービスを開始した米沢事業場は、30年にわたりPCの生産を手がけ、現在はNECPCのコンシューマ向けデスクトップ、ノート、NECの企業向けPC、レノボのThinkPadの生産を行うラインを持っている。

米沢事業場の歴史

 サーバーに関しては、「グローバル・サプライチェーンの中で、日本での生産見込み数から、スクラッチ生産を行うにはボリュームが届かないという結論となった。今回スタートするファクトリー・インテグレーション・サービスは、海外で生産したサーバー製品に付加価値をつけていく」(橘氏)と述べ、生産ではなく、あくまでも付加価値をつけるサービス提供に徹するという。

 提供するメニューは、

1)製品輸入時の不慮の衝撃などによる不具合の事前点検として外観、内観テスト、故障診断プログラムの実行
2)Linux、VMwareなどのソフトウェアインストールやファームウェアのアップデート
3)AID構成、CPU換装、メモリ、ハードディスクの組み換え

といった3つ。価格は時間あたりの工数で個別見積もりとなる。

 システムインテグレーション、キッティングサービスなどパートナーが行っている領域には踏み込まず、インテグレーションサービスは行わない。

 作業担当者の顔写真とサイン付き作業チェックシートを作るなど、品質をレノボ側で保証するサービスとなる。

 「大量のサーバーを必要とするような場合、個々に製品を購入してセッティングすると煩雑だが、米沢のエンジニアがケーブルセッティングなど面倒な部分を請け負うサービスだ」(橘氏)。

 パートナー企業、顧客にとって煩雑な部分を請け負うことで、レノボ製サーバーのブランド、品質の高さを定着させることを狙っていく。

ラックに収められ、配線済みとなったサーバー
ファクトリー・インテグレーション・サービスの流れ
サービスの概要

 米沢事業場内に設けられたファクトリー・インテグレーション・サービスを行うスペースは、同じ米沢事業場のPCを生産するラインとは一線を画した雰囲気となっている。生産を行うわけではないため、ラインに相当するものが用意されていないためだ。

 担当するスタッフにも、PCの生産ラインとはまったく異なるノウハウが必要となることから、専任スタッフを用意。当初、専任スタッフは2人体制でスタートし、今後注文数にあわせて増員も検討していく。

PC生産ラインではロボットアームを投入

 ファクトリー・インテグレーション・サービスの公開にあわせ、PCの生産ラインも公開された。

 NECPCの米沢事業所は、1984年にノートPCの生産を開始し、30年以上PCの生産を担当している。

 「2001年からは開発事業部が米沢に置かれている。現在では工場機能だけでなく、設計、品質管理、部材などの購買など開発から生産まで一貫した機能を持っている」(NECPCの竹下氏)。

 現在の生産体制では、2万種類におよぶ多品種を最短3日間でデリバリーする、多品種・短納期での提供が特徴となっている。この多品種生産を支えているのが、トヨタ生産方式を機軸とした生産革新だ。

 「2000年以前は、機械を使ったライン生産方式をとっていた。現在はPCに適した形態のトヨタ生産方式を採用している。ERP、RFID、QIMといったITを活用することで、2000年時点と比較して生産性は8倍以上向上、棚卸回転は半減以下に、デリバリー日数も業界最短を実現している」(竹下氏)。

 このポイントとなっているのが、IT武装化されたセル生産方式。以前は組立ライン、生産ラインは分離していたが、現在は3人で組立、検査、梱包までを完結している。

PC事業の改革
セル生産の強化

 実際にラインを見ると、組立の多くが人手で行われている。「PCは製品ごとに製品の形状が異なるため、ねじを締めるといった作業をロボットが行う場合は、製品ごとにプログラムを変える必要がある」(竹下氏)という理由からだ。

 人手で作業を行う代わりにどれだけ省力化ができるのかを、ITを使って徹底的に行っている。生産を行う棚も人が動くのではなく、棚が上下に動く機構を採用するなど省力化が行われているのだ。

 例えば部材の納入の際には、ゲート付近に用意されたRFIDアンテナを通ると、どの部材が何個納入されたのか、システムに反映される仕組みになっている。

 こうした、人手を使った省力化を進めてきた一方で、今年4月からロボットアーム導入によるねじ締めを導入。5月中旬から稼働している。

 こうした機械による生産を導入するとともに、「今後、検討していくのはIoTへの対応。現在のシステムは、デジタル化されているもののインターネット化されていない。どのようにIoT化していくのかが、今後の課題となっている」(竹下氏)と、IoTにどう対応するのかを課題としている。

熟練の作業スタッフにより少人数でノートPC生産作業が行われているスーパーYozanライン
組み立てるPCの仕様は、RFIDに記載され、RFIDカードを読み込むことで仕様が記載されている
スーパーYozanラインに比べ、作業者の人数が多いYozanライン
米沢での生産が始まったThinkPadの生産ライン。現在はThinkPadだけで4つのラインが動いている
組み立てるPCに必要な部材は、ミズスマシと呼ばれるスタッフが部材のピックアップ、生産ラインへの搬入を行うことで、多品種生産を効率的に行っている
工場の入り口にあるRFIDアンテナで、工場内に納入した部材がすぐにシステムに反映される仕組みとなっている
デスクトップPCを組み立てるKENSHINセルには、ねじ締めロボットが導入されている