Microsoftとは互いを補完しあう完ぺきなパートナー - 富士通担当者が語るグローバルアライアンスの意義


 世界中の数あるMicrosoftパートナー企業の中で、唯一、Microsoftとグローバルレベルでアライアンスを提携しているのが富士通だ。

 7月9日~12日の4日間に渡ってカナダ・トロントで開催されたMicrosoftの年次カンファレンス「Microsoft Worldwide Partner Conference 2012」には全世界から約1万6,000名のパートナーが集結したが、富士通からはグループ全体で10カ国約70名もの社員が参加した。

 「ここ6年くらい、WPCではずっとプラチナスポンサーを務めている。Microsoftとは2002年から戦略的提携パートナーとして、グローバルレベルでビジネスをともに展開してきたが、WPCに来るたび、毎年ダイナミックに変化を遂げていることを実感する」と語るのは2004年からアライアンス担当者としてWPCに参加し続けている富士通 プロダクトマーケティング本部 アライアンス統括部 シニアディレクター 兼 PFソフト事業本部 Windows統括部 統括部長付の松下香織氏。

 今回、WPC 2012の最終日に松下氏および富士通 マーケティング本部 ソリューション推進部統括部 統括部長の大島昭氏に、Microsoftと富士通の戦略的パートナーシップについてお話を伺う機会を得たので、これを紹介したい。

 

年々、変化の度合いを増していくWPC

プロダクトマーケティング本部 アライアンス統括部 シニアディレクター 兼 PFソフト事業本部 Windows統括部 統括部長付の松下香織氏
富士通(FUJITSU)の文字が入った配布物。会場では1万6000人のパートナーに配られたという

――今回のWPCでは、マテリアル(配布物)のバックパックやウォーターボトルに“FUJITSU”のロゴがしっかり印刷されていました。これひとつとっても両社の関係の強さが表れているように思えます。

松下氏
 当社の北米チームが頑張っていろいろ手配してくれました。おかげさまで、相当の宣伝効果を得られたと思います。WPCはわれわれにとってもMicrosoft側の担当者を含め、グローバルのチームがフェイス・トゥ・フェイスでミーティングの場をもてる非常に良い機会です。

――松下さんは2004年からWPCに参加されているとのことですが、今年のWPCの印象はいかがでしょうか。

松下氏
 年々、Microsoftのメッセージ、そしてビジネスが大きく進化していることを実感しますが、特に今年はパートナーにとっても大きな発表が相次いだWPCでした。特にWindows 8とWindows Server 2012のリリース時期の発表は、富士通のソリューションビジネスにも大きくかかわるものです。今後、テクニカルな面でMicrosoftと打ち合わせていく機会がさらに増えるでしょう。

 Windows 8は単にOSのインターフェイスが変わるというレベルの変化ではありません。Microsoftの全製品のポートフォリオとそのライフサイクルに大きく影響を及ぼします。必然的にそれはわれわれパートナーの戦略にも深くかかわってくることになります。

大島氏
 残念ながらOEM先に日本企業の名前はありませんでしたが、私個人としてはWindows Phone 8に非常に興味をもちました。キーノートのデモにもあったように、Windows Phone 8の機能向上は著しく、デバイスメーカーにとってはかなり魅力的なプラットフォームへと変ぼうを遂げていると感じました。

松下氏
 富士通はスマートフォンからクラウド、データセンターまで、Microsoftが提供する製品をすべてのレンジでカバーできる唯一のグローバルパートナーです。

 また、富士通は現在、コーポレートごとにアライアンスの統括を分ける体制にしていますが、その中でもMicrosoftほど扱う製品の幅が広い企業はほかにありません。したがって別の会社どうしで協力しあうというよりは、ともに生きるパートナー、互いのエコシステムを担う役割を負い、同じミッションをもち、ビジネスを一緒に発展させていくという、非常に深い関係にあります。

 

ハイブリッドクラウドがMicrosoftの強み

――両社のパートナーシップにおいても、特にクラウドに関する部分は非常に注目されている分野だと思います。2年前のWPC 2010(米国ワシントン開催)ではWindows Azureを富士通のデータセンターで提供するという衝撃的な提携が発表されました。あのときのインパクトはいまも強烈に記憶しています。

マーケティング本部 ソリューション推進部統括部 統括部長の大島昭氏

大島氏
 あのときは日本では大きく報道されましたが、実際にはWindows AzureとSQL Azureを搭載したアプライアンスをパートナーのデータセンター経由で提供する4社のうちの1社として紹介されました

 発表後、富士通は2011年8月から「Fujitsu Global Cloud Platform FGCP/A5 Powered by Windows Azure(以下、FGCP/A5)」というPaaSを提供しています。もちろんアプライアンスは富士通製です。データセンターは群馬県館林市にありますので、日本のお客さまも安心してAzure環境をご利用いただけます。なお、4社発表されたパートナーのうち、現時点で実際にサービスを提供しているのは富士通だけです。

――他社がサービスを開始できない理由はやはり技術的な問題がネックになっているのでしょうか。

大島氏
 他社の事情をせんさくするのは避けたいのですが、技術的にかなり高いレベルを必要とするのは確かです。データセンターの規模やサポート体制なども重要なので、Microsoftとの緊密な関係が下地にないと、実現は難しいでしょう。

――ここ最近、Microsoftはクラウド戦略の軸を「ハイブリッドクラウド」に移しつつあるように思えます。9月にリリースされるというWindows Server 2012はプライベートクラウドでの普及を促進するというよりも、オンプレミスやAzureとの連携を重視しているように感じるのですが、パートナーとしてこのあたりの動きをどのようにご覧になっていますか。

松下氏
 今回のWPC 2012でも、Microsoftのトップからハイブリッドクラウドにフォーカスしたメッセージが多く見られました。Microsoftはクラウドビジネスをここまで軌道に乗せるのに約3年を要しています。まずはパブリッククラウド、そしてハイブリッドクラウドへというここまでの流れは決して間違っていないと思います。

 3年の間にクラウドの市場も大きく変わりましたが、その変化に対し、Microsoftもわれわれパートナーも迅速に応じてきました。最近ではWindows AzureにIaaS機能が加わるなど、大幅な機能強化が行われましたが、これで新たにビジネスチャンスが大きく広がると見ています。

大島氏
 パブリッククラウドにおいてはMicrosoftは最初、点で製品を提供していく感じが強かった。それが2011年から、ようやく点が線としてつながりはじめてきています。パブリッククラウド一辺倒のときは、パートナーとして「オンプレミスの資産が多い日本の顧客にはパブリッククラウドだけという選択肢は受け入れにくい。ハイブリッドに取り組むべき」という助言をしてきましたが、結果として奏功しつつあります。ライバルのGoogleとは異なる戦略だったのも良かったのかもしれません。

――ハイブリッドクラウドに関しては、以前からMicrosoftは「オンプレミスでもクラウドでも対応できる製品カバレッジの広さ」を強調していますが、実際にハイブリッド環境を構築する際、オンプレミスとクラウドの間で本当にシームレスなデータ移行は可能なのでしょうか。

大島氏
 そこはもう、パートナーの腕次第ですよ。ひと口にハイブリッドと言ってもお客さまごとに求めるスタイルは異なります。

 例えばフロントエンドはマッシュアップで作りたいけど、パブリッククラウドに置いたバックエンドと連携させるには、どういうデプロイが最適なのか、といった具合に個々の要件にあわせて構築する必要がある。お客さまの要望に対し、こちらから提案を出しながら決めていく、という感じなので“ハイブリッドクラウド”という決まった枠があるわけではありません。

 富士通はハイブリッドソリューション、とりわけAzureと連携させるノウハウを蓄積してきているので、(シームレスな移行を含めた)他社にはない価値をお客さまに提供できる自信はあります。

 

製品は顧客に提供する前にパートナーが使い込むべき

――顧客への提案というフェーズにおいて自信をもてるというのは、やはり自社内で検証を繰り返していることにもとづくからでしょうか。

松下氏
 われわれはまず自分自身でMicrosoft製品を使い込むことにしています。そうでなければお客さまに自信をもって勧めることはできません。

 例えばいま富士通ではグローバル規模でLyncの導入に取り組んでいます。すでに国内では稼働しているところもありますが、グローバルで統一されたコミュニケーション基盤としてLyncのような製品をいかに活用していくのか、数万人規模で実現することで、お客さまに対し説得力のある提案ができるわけです。Lyncのような製品の自社導入は、グローバル進出を検討しているお客さまの参考事例にもなります。

大島氏
 日本のお客さまはLyncのような新しいタイプの製品に非常に強い関心をもっています。ですがそれを"点"で入れても実はあまり効果がない。もしLyncを導入するなら、ネットワークインフラも変更したほうがいいし、グローバルに展開するならデバイスも見直す必要がある…という具合に、ITソリューション全体を見直すきっかけとなる。点が線に変わっていくわけです。Microsoftの最近の製品は、このように点から線へと広がりを見せるものが多くなってきていますね。

松下氏
 現在、“グローバル化”はIT環境のリプレースなどにおいてもひとつのキーワードになりつつあります。グローバル化においてはナレッジを共有するしくみがどうしても必要になるので、Lyncのような製品は最初のステップに適していると思います。

――Lyncのような、新しいかたちのコミュニケーションツールが注目される一方で、日本企業の多くがレガシーから脱却できずに苦しんでいます。今回のWPCでは数多くの新製品が提示されましたが、そうした新旧のテクノロジのギャップを、パートナーとしてどう埋めていこうとお考えなのでしょうか。

松下氏
 われわれパートナーの役割は、お客さまに対して「シナリオを書く」ことだと思っています。お客さまのビジネスを支援するITはこういうものですよ、というシナリオです。そのシナリオに説得力を持たせるには、先ほどと重なりますが、やはり製品を自分たちで使い込むこと、それこそ血肉になるまで使い込んで、お客さまに提示する必要があると感じています。

 富士通のキャッチフレーズ「shaping tomorrow with you」はご存じかと思いますが、最近は「Reshaping Business」もよく掲げています。ITを変革し続けることで、お客さまのビジネスの発展につなげていく。そのためにはわれわれ自身が変化していることをお客さまに見せていく必要があるのです。

――Microsoftとともに、富士通も変化していくと。

松下氏
 正直、富士通も現在は楽な時期ではありません。しかしわれわれはトータルソリューションプロバイダであり、テクノロジの企業です。テクノロジのDNAだけは決して捨ててはいけない。テクノロジは変化するものであり、変化することをおそれてはトータルソリューションプロバイダを名乗れなくなります。

 現在のようなコーポレートごとのアライアンスの強化を疑問視する声も確かにあります。われわれもこれが永続的でベストな体制だとは思っていませんが、試行錯誤しながら現状にたどり着きました。結果として、たとえ一時的に売り上げが下がったとしても、われわれはチャレンジをやめるわけにはいかない。組織として、柔軟にビジネスモデルを変化する素地(そじ)を保ち続ける必要があります。

 むしろ既存の体制から何も変えようとしなければ、かえってジリ貧に陥ることになりかねません。われわれ自身が新しいチャレンジをし続けることで、日本のお客さまの支援につながればとてもうれしく思います。

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