Linux・IaaS対応でユーザーに選択肢を提供、“究極のオープンクラウド”を狙う~マイクロソフトのWindows Azure戦略


 「企業の中には当社製品だけでなく、ヘテロジニアスな環境があるし、クラウドとオンプレミスも混在している。IaaSの追加やLinuxへの対応といった今回の強化で“究極のオープンクラウドサービス”を狙い、ハイブリッドなシステムの中で、一番使いやすいものにしていきたい」――。日本マイクロソフト株式会社は8日、米Microsoftが発表したクラウドサービス「Windows Azure」の強化についての説明会を開催。サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 梅田成二本部長は、Windows Azureの戦略についてこう話す。

 2010年から商用サービスを開始したWindows Azureは、これまではOSやミドルウェア層を含めたPaaSとして提供されており、ユーザーはその上にアプリケーションをデプロイして利用してきた。しかし今回、IaaS機能「仮想マシン(Virtual Machine)」が発表され、Linuxも含めた仮想マシンをWindows Azure上で利用できるようになった。

 Linuxは、OpenSUSE 12.1、CentOS 6.2、Ubuntu 12.04、SUSE Linux Enterprise Server(SLES) 11 SP2を利用でき、それ以外にWindows Server 2008 R2、Windows Server 2008 R2 with SQL Server 2012 評価版、Windows Server 2012 RCといったWindows環境にも対応する。

 仮想マシンは、ユーザーが一から立ち上げることも可能だが、Microsoftがプリコンフィグした仮想マシンイメージや、Linuxがプリコンフィグされた仮想マシンイメージも用意され、簡単にクラウド上へ展開できる。さらに、オンプレミス環境(Hyper-V)と仮想マシンイメージの互換性もあり、クラウドとオンプレミスとの移行性も提供可能だ。


サーバープラットフォームビジネス本部 業務執行役員 梅田成二本部長IaaS機能の概要
5つのSDKを提供

 さらに今回、すでにサポートしている.NET、PHP、Node.jsに加えて、JavaとPythonのSDKも提供されることになった。これらのSDKは、言語ごとの1クリックインストーラーにより、開発に必要なすべてを構成できるため、開発者が自分に適した言語を利用して、Windows Azure上で容易にアプリケーションを作成・展開できるという。

 これらの改善点は、サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部の吉川顕太郎部長が、「エポックメーキング的な機能強化」と呼ぶように、非常に大きな意味を持つ。それは、Microsoftの技術ありきで進んできたWindows Azureが、すべてを集約できるプラットフォームに変化することを意味するからだ。

 仮想マシンの運用により、既存の仮想マシンを迅速にクラウド上へ移行できるし、Windows Azureのクラウド環境とオンプレミス環境、Hyper-Vを利用したホスティング事業者の間を行き来することも可能。Linuxの環境も含めて対応できるので、Windowsだけ別枠で考える必要もなくなる。


サーバープラットフォームビジネス本部 クラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部の吉川顕太郎部長Windows Azureの今回の機能強化が持つ意義

 ただMicrosoftでは、OSやミドルウェアの運用をクラウド事業者に任せられ、パッチ当てなどの“お守り”をしなくてすむPaaS環境の方が、IaaSよりも運用コストが安くすむというメッセージを、Windows Azureの提供開始以来、一貫して発信してきた。

 このメッセージと、IaaS機能の追加という今回の機能強化は一見矛盾しているようにも思えるが、吉川部長は、「最終的にはPaaSの方が管理コストでのメリットはある。しかし一度に移行するのは現実的ではなく、お客さまの事情に応じて、順次移行していくパスが提供できるようになったということだ」と今回の強化の意義を説明。今後もPaaSのメリットは継続して訴求していくとした。

 なお日本マイクロソフトでは今後もWindows Azureを訴求することで、2016年に2700億円に達するといわれる国内のPaaS+IaaSの市場のうち20%のシェアを獲り、シェア1位を獲得したいとの目標を示した。


既存システムのマイグレーションがしやすくなるというIaaSよりもPaaSを効果的に利用した方が、TCOを下げられるというメッセージを今後も発信していく
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