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Dreamforce 2015、基調講演でもMicrosoftとのリレーションシップを強くアピール
(2015/9/18 06:00)
米国サンフランシスコで開催されている米Salesforce.comのプライベートイベント「Dreamforce 2015」において16日(米国時間)、基調講演が行われた。イベント自体は15日に開幕し、参加人数が16万5000人と、企業のプライベートショーとしては最大規模のイベントとなっている。今回は開幕日ではなく、イベント2日目の午後から基調講演が行われる変則的なスケジュールとなった。
基調講演では、昨年のDreamforce基調講演で発表になったLightningのデスクトップ版「Lightning Experience」、無料で提供されるオンライン教育システム「TRAILHEAD」、中小企業向けにCRMのデータを分析し、やるべきことを導き出す「SalesforceIQ for SmallBusiness」、「Thunder」という新しいエンジンのもと開発された、IoTのためのクラウドサービス「Salesforce IoT Cloud」などが発表された。
Salesforce IoT CloudはMicrosoftとのパートナーシップによって、Azure上にIoTデータが集められ、Salesforce IoT Cloudがトリガーとして働き、Salesforce Marketing Cloudでユーザーが望む答えを導き出す。
Microsoftとのパートナーシップについては強くアピールされ、Office 365とSalesforceのサービスの連携について時間を割いて紹介された。
さらなるサービス拡充を急ぐSalesforce
「Get Ready for New Kind of Customer Success with Marc Benioff and Special Guests」というタイトルで行われた、Salesforce.comの会長兼CEO、マーク・ベニオフ氏の基調講演は、さらなるサービス拡充を急ぐ姿勢が鮮明となった。
昨年、やはり基調講演でLightningを発表した時と同じ衣装、手に雷マークのつえを持って、全ソフトウェア開発を統括する共同創業者のパーカー・ハリス氏が登壇すると、ベニオフ氏と2人、漫才のやりとりのようなコミカルなやりとりがスタート。新たに投入するソフトウェアが次々に紹介された。
1年前発表された開発ツールLightningについては、パートナーが提供するコンポーネントを活用できる「Lightning Exchange」を開設。現在50以上のコンポーネントが提供され、簡単に開発作業を進めることができる。
また、デスクトップで動くLightningのLightning Experienceも発表された。デスクトップ上で動くLightningといっても単に動作を可能にしただけではなく、プラットフォームレベルから新たに開発。コンポーネントを組み合わせていくだけでアプリケーション開発が可能となる。
アナリティクスのプラットフォームとしてLightningを活用することも可能で、ダッシュボードからさまざまな分析作業を進めることができる。動作する端末もデスクトップだけでなく、スマートフォン、ウェアラブル端末と幅広い。
こうしたLightningの全容を学ぶことを目的に、オンラインのラーニングシステム「TRAILHEAD」も提供もスタートした。
Lightningを活用し、業界別アプリケーションの提供もスタートした。現段階では、金融業界向け「Finance Service Cloud」、ヘルスケア業界向けの「Health Cloud」の2つだが、今後、対応業界を増やしていくことも計画している。
Lightningの機能拡充について話したあと、ハリス氏は持っていたつえを雷型のものから、アルファベットのQになっているものに持ち替えた。ハリス氏は、「CRMはもっと簡単で、エコシステムのプラットフォームとなっていかないといけない」とCRMを変えていく必要があるとアピールした。
これを実現するのが新しいプロダクト「SalesforceIQ」だ。IQは、メール、カレンダーと複雑なシステムを導入する大企業でも、IT化はあまり進んでいない中小企業でも、利用している基本的なアプリケーションとCRMをつなぐことで、営業活動を支援する。CRM、メール、カレンダーの情報から、関係のある人が誰で、いつ、アポイントがあるのかを判断する。
もともとはSalesforceが買収したRelateIQ社が持っていたRelationship Intelligenceテクノロジーを取り込み、新しいサービスとして提供するものだ。
Microsoftがパートナー!
さらにハリス氏は持っていたつえをハンマーに持ち替え、IoTのためのクラウドサービス「IoT Cloud」を紹介した。Salesforce.comでは、「すべてがつながっていくIoTの後ろにあるものはカスタマー。あくまでもカスタマーが主導で進むのがIoT」だとアピールする。
IoTをつなぐテクノロジーとなるのが「Thunder」。IoTの発端となるデータがセンサー、ビーコンなどから送られると、ThunderがエンジンとなってリアルタイムにSalesforce IoT Cloudでそれぞれのルールを付与する。それがさらにSalesforceの各アプリケーションに送られる。
このIoT Cloudの最初のパートナーとしてSalesforce.comが紹介したのがMicrosoftだ。IoT CloudにとってMicrosoftは最初のパートナー企業となる。
「Microsoftとのパートナーシップにより、IoTデータを受けるためにMicrosoft Azureを活用。AzureからIoT Cloudにデータを送り、そこでルールが付与され、Salesforce Marketing Cloudでユーザー個別に活用されていく」(ベニオフ氏)。
AzureだけでなくOffice 365を利用し、何十億ものイベントデータを動かすこともできる。「Salesforce for Office」など、MicrosoftのソフトとSalesforceのサービスが連携したものが複数用意される。
Microsoftは重要な事例の1社としても紹介され、IoT CloudとThunderプラットフォームによって、リアルタイム分析を実現。SalesforceのMarketing Cloud、LightningがWindows 10に対応し、相互に連携しやすい環境を作っていく。
事例ビデオに登場した、Microsoftのサティア・ナデラCEOは、「ユーザーの皆さんが足りないと感じている時間、洞察力を提供するのがわれわれの仕事。Salesforce.comとのリレーションシップはそれをさらに加速させるものだ」と2社のパートナーシップが重要なものであると強調した。
なお、今回発表された新しいサービスが日本で提供される時期は明らかになっていない。今後、段階的に日本向けサービスとして提供される見込みだ。
特別な招待者の宿泊用に巨大客船を用意
16万5000人が集まるイベントとあって、サンフランシスコのホテルも飽和状態。今年は、「DreamBoat」と呼ばれる巨大客船をサンフランシスコ港に停泊。一部の招待客はこの船に宿泊している。
イベントの開幕日である15日には、全世界のプレス関係者向けパーティも開催された。巨大客船とあって、公開された部分を見るだけでも設備はホテル並みだ。カジノ、プールといった施設も整備されている。
船の内部では、クローズなミーティングなども開催され、新しいパートナーシップ、商談を行うための場として活用されている。
またSalesforce.comでは、1-1-1モデルとして社員のボランティア活動、非営利団体の支援、非営利団体への製品提供を行っている。地元であるサンフランシスコ市に対しても支援活動を行っているが、今回のイベントにあわせて、子どもたちの教育のため、本の寄贈プログラムが発表された。Dreamforceの会場にサンフランシスコ市の市長、エドウィン・リー氏が登場し、サンフランシスコ市とSalesforce.comの関係強化をアピールした。