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IaaS選択の有力候補としてキャリア・クラウドに注目~ガートナージャパン

NTT Communications Forum 2013 特別講演

ガートナージャパン株式会社 リサーチ部門 バイスプレジデントの田崎堅志氏

 NTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は、10月24日・25日の2日間、「NTT Communications Forum 2013」をザ・プリンス パークタワー東京で開催している。同フォーラムでは、「Seamless Cloud for the World ~経営改革を、私たちのクラウドで。~」をテーマとして、通信事業者であるNTTコミュニケーションズだからこそ提供できるクラウドサービスを、講演・セミナー・展示など多彩なプログラムを通して紹介する。

 24日には、ガートナージャパン株式会社 リサーチ部門 バイスプレジデントの田崎堅志氏が、「キャリアのクラウド・サービス:企業が見落としてはいけないプロバイダーの特性」と題した特別講演を行い、キャリア系IaaSの優位性や課題を通じて企業が見るべきIaaS選択のポイントについて説明した。

キャリアのIaaSを選択肢に加えるべき?

 まず、田崎氏は、「現在市場には、さまざまなタイプのクラウドサービスと、多数のプロバイダーが存在しており、ユーザー企業はどのプロバイダーを選べばよいのか混乱が続いている」と指摘。「自社に最適なプロバイダーを選ぶためには、プレーヤーの特性を理解して、その特徴を見極めることが重要になる。そこで今回、私が提案するのが、通信事業者(キャリア)が提供するクラウド・インフラストラクチャ・サービス(IaaS)を選択肢に加えることだ」と、プロバイダー選びの有力候補として、キャリア系プロバイダーを検討する必要があるとの考えを示す。

キャリア・クラウドに注目する理由「スケール・ビジネス」
キャリア・クラウドに注目する理由「ユーティリティ・サービスの提供能力」
キャリア・クラウドに注目する理由「新たな成長へのフォーカス」

 では、なぜキャリア・クラウドに着目すべきなのか。田崎氏は、その理由について、「スケール・ビジネス」、「ユーティリティ・サービスの提供能力」、「新たな成長へのフォーカス」の3点を挙げる。

 「もともとキャリアは、先行投資によって大規模なネットワークインフラを構築し、標準化サービスを提供するスケール・ビジネスを展開している。また、料金体系も、従量課金またはそれに準じたものになっている。これは、クラウドサービスに非常に近いビジネスモデルであり、個別にシステム構築を行ってきた従来型のシステムプロバイダーに比べて優位な立場にある」という。

 2点目の「ユーティリティ・サービスの提供能力」については、「キャリアは、光ファイバーや伝送設備、データセンターなどのネットワークインフラを、自社設備として所有しているという強みがある。つまり、キャリアには、クラウドサービスの提供に必要な技術力や、サービスを継続的に供給するための運用能力がすでに備わっているのである。ユーザー企業にとっては、クラウド上のリソースを利用するにあたって、高い性能やコスト効果が期待できる」と説明する。

 そして、「新たな成長へのフォーカス」という点については、「企業向けの固定系ネットワークサービス市場が縮小しつつある中で、キャリアは、新たなビジネス成長のために、クラウドへの注力が必要不可欠になっている。他のプロバイダーでは、クラウド展開が従来のビジネスを破壊してしまうリスクもあるが、キャリアにとっては全く新しいビジネス領域であり、クラウドIaaS本来の価値提供にフォーカスできることも大きな強みになる」と述べた。

 一方で、田崎氏は、キャリア・クラウドの懸念される点にも言及。「キャリアは、ネットワークインフラやデータセンターファシリティに関する経験と実績は豊富だが、IaaS関連のテクノロジー開発力は発展途上と言わざるを得ない。特に、アプリケーションやITインフラの領域における経験は少なく、現段階でキャリア・クラウドに過度な期待をするのは禁物だ。とはいえ、過小評価することはなく、注意深く、継続的に実行能力を探っていく必要がある」との考えを示した。

キャリアごとに力を入れている領域を見極めよう

 次に、キャリア・クラウドを選ぶ際のポイントについて説明。キャリア・クラウドは、「ネットワーク」「データセンター」「ホスティング」「標準サービス(IaaS)」「マネージドサービス」という共通のサービス・ポートフォリオをもっているが、キャリアによって力を入れる領域は異なってくるという。

 「例えば、クラウドへのネットワーク接続コストを無料化する、WANや複合環境もカバーするセルフポータルを提供する、運用管理サービスを付加価値として展開するなど、キャリアごとにテクノロジー戦略は分かれており、この差異がサービスの差異につながっている。ユーザー企業は、この差異を慎重に見極め、イメージに惑わされることなく、サービス内容を具体的に評価することが重要になる」としている。

IaaSプロバイダーの比較

 実際に田崎氏は、キャリア・クラウドの例として、NTT Com、KDDI、IIJの3社を比較し、その強みと注意点を紹介。「NTT Comは、資金力、技術力を集中し、グローバル展開に取り組んでいるが、グループ内での整合が今後の課題。KDDIは、テクノロジーにおいてパートナー頼みの面があり、サービスの充実や自社所有インフラとのシナジー強化にはさらなる努力が必要。IIJは、高い術力をもっているが、業務システムユーザーの取り込みに熱心なあまり、新規性や革新性のアピールがそれほど見えなくなっている」と、各社の概況を解説した。

 これらを踏まえて、「IaaSの検討にあたっては、まず候補としてキャリア・クラウドを加えること。そして、キャリアに限らず、各プロバイダーの特性を理解し、クラウド市場との親和性、従来環境からの移行に向けた戦略や取り組みを把握、評価する。その上で、各プロバイダーのビジョン、サービスやテクノロジーへの投資姿勢を評価の基準に加えて、自社に最適なIaaSを選定してほしい」と、田崎氏は提言した。

唐沢 正和