イベント
「企業はCUSTOMER COMPANYを目指さなくてはならない」~米salesforce.comベニオフCEO
セールスフォース、Cloudforce Japanを開催
(2012/12/6 14:19)
株式会社セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)は6日、同社のプライベートイベント「Cloudforce Japan」を、東京・有明の東京ビッグサイトで開催した。同社では、国内最大規模のクラウド関連イベントと位置づけており、1万2000人が事前に登録したという。
米salesforce.comのマーク・ベニオフCEOの基調講演に先駆けて、開演前の午前9時40分にはセールスフォースの宇陀栄次社長が壇上にあがり、「少しでも多くの情報をみなさんにご提供したい」と語り、陣屋や日本郵政、日本航空、キヤノンマーケティングジャパンの導入事例をビデオで紹介。実際にトップが登壇して効果などを語った。
陣屋の宮崎富夫社長は、「セールスフォースを導入して、売り上げが35%向上し、お客さまへのおもてなしも高まった」とコメント。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の村瀬治男会長は、「セールスフォースとり付き合いは10年にわたる。キヤノンMJは顧客主語を掲げているが、セールスフォースの採用により、お客さまとの距離が短くなり、社内コミュニケーションが活発になる」などとした。
「ウィンテルの時代は終わった」とベニオフCEO
午前10時20分からスタートしたマーク・ベニオフCEOの講演では、アスクル、トヨタ自動車、日本航空をはじめ数多くの事例を紹介。ソーシャル時代に企業が取り組むべき方向性などを示すものになった。
いつも以上に高いテンションで講演に臨んだベニオフCEOは、「新しいカタチで顧客とつながる(BECOME A CUSTOMER COMPANY)」をテーマに掲げながら、「クラウド、ソーシャル、モバイルによって大きな革命が起こっている。これからの企業は、お客さまと結びつく、CUSTOMER COMPANYにならなくてはならない」と切り出した。
「メインフレームから始まったコンピューティングの世界は、コンピューティング革命の繰り返しであり、いまや、ウィンテル時代は終わった。訪れているのはソーシャル革命である。全世界で、45億人がソーシャルを利用している。そこに大きな意味がある。これはカスタマー革命でもある。顧客へのアプローチが一変し、企業はそれにあわせて変化し、進化し、進歩しなくてはならない。しかし、みなさんの会社は、CUSTOMER COMPANYになっているのだろうか。88%が経営者が、顧客とより緊密な関係を築くことを課題にあげている。これから10年間は本当の意味で、CUSTOMER COMPANYに向けて再構築しなくてはならない。その手法はわかっている。それをsalesforce.comは提供していくことができる」などとした。
CUSTOMER COMPANYとして取り組んでいる例として、米GEや豪CommonwealthBank、アスクル、トヨタ自動車を、ビデオとデモンストレーションなどを通じて紹介。登壇したアスクルの秋岡洋平執行役員は、「お客さまの状況を把握しながら、そこに提案をしていくことが必要である。アスクルは、これから個人向けのビジネスを開始する。これは、PCからサービスを開始するのではなく、スマートフォン、iPadから買い物ができるようにするところからスタートしている」などと語った。
また、トヨタ自動車の例では、トヨタフレンドをデモンストレーションし、自動車とドライバーが会話をし、ドライブを楽しむといった様子などを実演した。
トヨタ自動車の友山茂樹常務役員は、「お客との距離を縮め、メーカーと社会、メーカーとお客の関係を創出することが大切。iPhoneに4つのタイヤをつけるように、走るクラウドサービスを目指している。トヨタフレンドはまだ日本でしか展開していないが、車も、ディーラーも、社会もソーシャルの上でつながり、セールスフォースとともに、エキサイティングな車を作りたい」と話している。
このほかsalesforce.comのジョージ・フーCOOは、「ソーシャルを利用することで、顧客がどんなことを考えているかがわかる。フォーチュン500社の6割が使用しているRadian 6と、買収したBUDDY MEDIAによって、ソーシャルマーケティングが実現できるようになる。今後、CIOより、CMOが多くのIT支出を行うという予測があるが、Marketing Cloudによって、それが加速し、ソーシャルから顧客を管理することができる。すでに先進的な企業は、ソーシャルマーケティングに社運をかけている。顧客の声に反応することが大切である。Marketing Cloudは、日本語を完全サポートすることになり、来年が元年になるだろう」とした。
また、ペプシコーラをはじめする企業が、Cloudforce Social Media Command Centerを設置していることを示しながら、「ソーシャルの声を、データに変え、経営の意思決定に生かしている」(ベニオフCEO)と語った。
Salesforce Touchの正式リリースを発表、Sales Cloudなどの説明も
11月にセールスフォースに入社した川原均副社長も、初めて公の場に登場し、Sales Cloudについて説明。「Sales Cloudは、これだけ多くのインストールベースがあるにも関わらず、いまでも前年比27%の売り上げ伸長がある。これは年3回のバージョンアップを通じて、毎年進化していることが大きい。これにより、最先端ユーザーが欲しいと思っている機能が、同時に多くの企業が利用できるようになる」としたほか、Salesforce Touchの正式リリースを発表。「営業支援機能をフルに利用できる初のモバイルアプリケーションであり、デバイスを問わない設計となっている。これをまずはiPad向けに一般的提供を開始する」とした。
Service Cloudについては、セールスフォースの福田康隆常務取締役が説明。「Service Cloudは、全世界3万4000社が利用しているものであり、カスタマーサービス分野のリーダーとなるアプリケーションである。また、Chatter Communities for Serviceは、Winter 13でパイロットリリースを行い、顧客の一元管理などができる」などとした。
また、セールスフォースの宇陀社長は、Salesforce Platformなどについて説明。「企業においては、イノベーションが大切である。だが、これは簡単にはできない。まずはちょっと気がついたところからシステムに落とし込んで、それを拡大していくことがイノベーションの実現につながる。最初から要件ができているシステムはない。また、AppExchangeは、さまざまなアプリケーションを組み合わせて利用できるものである。セールスフォースはさまざまな経験をしている。こうした経験を通じて、お客さまを支援することができる」などとした。
講演のなかでベニオフCEOは、「日本で、初めて年間30億ドルの売り上げを突破する。グローバルに占める日本の売上比率は8%。そして、来年前半に、日本法人のオフィスを東京・丸の内のJPタワーに引っ越しする。新たに東京データセンターを開設するなど、日本にますますコミットしていく」とした。
なお、Cloudforce Japanでは、トヨタ自動車の豊田章男社長および元米国務長官のコリン・パウエル氏による「イノベーションとグローバルリーダー」と題した対談や、元ルノーCOOであり、現セールスフォースのCAO(最高自動車業界責任者)であるパトリック・ペラタ氏による「自動車産業のソーシャル化」など、9つの基調講演が行われたほか、34のセッションが行われた。
また、併設されたCloud EXPOでは、110社以上のパートナー企業が出展した。