Windows 8は10月末に一般提供へ〜Microsoft Worldwide Partner Conference 2012が開幕

「今年度は我々のものだ」、バルマーCEOが力強く宣言


 Windows 8のリリース日が発表されるらしい――。こんなうわさが初日キーノート直前にプレスの間を駆け巡った。9日(カナダ時間)、カナダ・トロント市にあるAir Canada Centerで開催されたMicrosoftの年次イベント「Microsoft Worldwide Partner Conference 2012」の初日基調講演、果たして予想通りというべきか、Windows 8 RTM(Release to Manufacture)が8月第1週に、正式な製品版であるGA(General Availability)が10月末に、それぞれ提供を開始するとの発表がなされた。

 そしてWindows 8だけでなく、世界中から集まった1万6000名のパートナーを前に、さまざまな発表が行われている。スティーブ・バルマーCEOも登場した初日キーノートから、同社の2013年度の方向性を分析する。


オープニングのシルク・ド・ソレイユのパフォーマンス

 

Windows 8のスケジュールが発表〜RTMは8月第1週、GA版は10月末

Microsoftのスティーブ・バルマーCEO
CFO Windowsプラットフォーム担当コーポレートバイスプレジデントのタミ・レラー氏

 毎年7月初旬に北米の都市で開催される本カンファレンス「WPC」は数あるMicrosoftの年次イベントの中でも非常に重要な位置を占めている。7月はMicrosoftの年度始めの月であり、そしてMicrosoftのビジネスはほぼ100%パートナー経由で展開される。新しい年のスタートにおいて、世界中から集結した文字通り盟友と言うべきパートナーを前に前年度を振り返り、新年度の方向性を提示する――つまりWPCこそがMicrosoftのキックオフイベントと言っても過言ではない。事実、バルマーCEOは今回のキーノートで「パートナーはわれわれのDNA」とまで言い切っている。

 そしてMicrosoftにとって「Windows 95以来の、ここ17年で最もエポックメイキングな製品」であるWindows 8が登場する今年、パートナーにとっての最大の関心事は「それがいつなのか」という点に尽きる。

 バルマーCEOは自身の口からそれを発表せず、かわりにMicrosoftのCFOでWindowsプラットフォーム担当のコーポレートバイスプレジデントも務めるタミ・レラー(Tami Leller)氏が登壇してその発表を行った。

 同氏によれば、Windows 8は8月第1週にDell、HP、LenovoといったOEMパートナーに向けてRTM版が提供され、一般提供となるGA版は10月末出荷開始とのこと。具体的な日付までは言及されなかったが、109カ国語/231のマーケットで一斉に提供が開始されることになる。RTM版が提供されると同時に、Windows StoreやMetroアプリマーケットなどから開発者向けの環境が用意されると見られている。

 周知の通り、Windows 8は“Metro UI”と呼ばれるタッチデバイスを意識したインターフェイスが特徴だ。レラー氏は「Windows 8はデスクトップPC、ノートPC、ネットブック、タブレットで“コンパチブル”なOS」と強調する。

 壇上ではレラー氏がWindows8搭載マシンをタッチで軽やかに操作し、タブレットに限らず、デスクトップやノートブックでも指先でアプリケーションを呼び出したほか、Windows 8環境をインストールしたUSBメモリを差すことで、どのマシンでもユーザー自身の環境を立ち上げることができる“Windows to Go”のデモが行われた。また、ARMプロセッサ搭載タブレットで動作するWindows RTも披露している。

 Windows 7からのアップグレードに関しては「われわれはこれまでWindows 7に関して6億3000万ライセンスを販売してきた。いまでは世界中の業務用デスクトップの半数がWindows 7に置き換わっている」と語り、Windows 7からWindows 8へのリプレースのためのアップデートプログラムを用意することを表明している。

 There is Windows 8.(Windows 8はたしかにここにある)――最後にレラー氏はこう強調した。これまで最もテストにテストを重ねたOSだというWindows 8。「パートナーの皆さんをお待たせする時間ももうすぐ終わる」と自信をもって宣言し、発表を終えた。


バルマーCEOとForbesの発行人Rich Karlgaard氏が対談する形式でキーノートが進められた 基調講演の様子。レラー氏がWindows 8のOEMマシンを次々に紹介。1つのOSがマルチなデバイスで動作することを強調

 

Surfaceはどうなる?などキーノートでの発表をまとめて紹介

 初日のキーノートではそのほかにもいくつか重要な発表がなされている。ここではそのいくつかを簡単に紹介したい。

・Office 365のパートナー向けオープンプログラム
 Microsoftが現在、最も力を入れているクラウドオファリングでもあるOffice 365のパートナー向けオープンプログラム「Office 365 Open」が提供されることが、Office部門のプレジデントであるカート・デルビーン(Kurt DelBene)氏より発表された。

 これにより、パートナーはOffice 365をMicrosoftから仕入れ、自身のバリューアドサービスとして直接顧客に販売することが可能になる。従来までアドバイザリモデル(手数料モデル)のみの提供だったOffice 365だが、オープンプログラムの提供で、よりパートナーの特徴を生かしたソリューションが増えることが期待される。

 

・Office 365の順調な成長、JALの導入事例はワールドワイドでも注目
 サービス提供開始から1年が経過したOffice 365だが、順調にユーザー数を伸ばし、ワールドワイドでも大規模事例が数多く発表されている。20万ユーザーを抱えるLowesをはじめ、バーガーキング、日本航空(JAL)などの名前がデルビーン氏から紹介された。経営再建中にあるJALが、トータルコストの削減のために2万ユーザーのメール基盤をOffice 365に移行した事例はワールドワイドでも高い注目をあつめている。なお、この事例を担当したパートナーは日本ビジネスシステムズ(JBS)である。

 

・YammerをSharePointに統合?
 6月のYammer買収は世界中を驚かせたが、現在、この企業向けソーシャル製品をMicrosoftがどう扱うかが大きく注目されている。デルビーン氏は「ソーシャルはわれわれにとって今後ますます重要になる。Yammerはエンタープライズ向けのバイラルコミュニケーション製品として非常にすぐれており、SharePointと同様の価値をわれわれにもたらす」とした上で、「近い将来、SharePoint、Officeクライアント、SkypeとYammerを統合していくつもりだ」と表明している。ただし、具体的なロードマップなどは提示されなかった。

 

・どうなるSurface?
 Surfaceのリリースに際し、Microsoft自身がハードウェアを提供するというニュースが先月報道され、「Microsoftも垂直統合モデルに進むのか?」という憶測も流れたが、バルマーCEOは「パートナーとの関係が弱まることはあり得ない」と断言する。

「われわれは今後12カ月で3億7500万台のWindows PCを売る。Surfaceはその中のほんのわずかでしかない。ただ、当社には多様性が必要だ。Surfaceはわれわれにとって新たな“デザインポイント”と見てほしい」とバルマーCEO。それ以上の言及はなかった。

 

・ラージスクリーンのタッチ操作も万全! Perceptive Pixelの買収
 ある意味、初日のキーノートで一番驚いた発表だったかもしれない。バルマーCEO自身の口からマルチタッチのインターフェイス技術で高い評価を得ているPerceptive Pixelの買収が発表されたのち、同社ファウンダーのジェフ・ハン(Jeff Han)氏が登壇、82インチという巨大スクリーンの前でマルチタッチ操作でWindows 8をストレスなく動かすデモを披露した。

 ピンチやズームといった手によるタッチ操作のほか、スタイラスペンによる手書き入力にも対応しており、そのなめらかな動きに会場のパートナーから大きな拍手が起こった。今後、MicrosoftのOEM戦略で重要な役割を占めると見られる。買収金額などは明らかになっていない。


Perceptive Pixelのデモ

 

 今回のWPCには世界156カ国から1万6,000名のパートナーが参加している。うち、最初のWPC参加者は4000名に上るという。昨年のWPCでバルマーCEOはクラウドコンピューティングに注力すると明言していたが、この4000名には同社のクラウド製品〜Office 365、Dynamics Online、Windows Intune、そしてWindows Azureの販売パートナーが数多く含まれる。

 クラウドで成功したのが2012年度なら、2013年度はWindows 8が主役になる年だといえる。それは単にデスクトップコンピュータへのインストールベースが増えることを意味しない。Windows 8はビジネスプラットフォームとして、モバイルを含むコンシューマライゼーション、クラウドコンピューティング、エンタープライズソーシャルなど、現在のITを取り巻くあらゆるトレンドに対応する必要がある。

 Windows 8のデモを行ったレラー氏は「Windows 8のアプリは、ユーザーにデスクトップかクラウドかを意識させないシームレスな環境を提供する」と言い切っていたが、今後はYammerやSkypeなど同社が買収してきたポートフォリオとMicrosoft製品の統合もWindows 8の成功には欠かせないはずだ。

 Windows 8を中心とする“Windowsエコシステム”は、周辺技術をパズルのピースをはめこむようにして完成させていく必要がある。そしてそれこそが2013年度のMicrosoftが描くロードマップとなる。

 今年度はわれわれのものだ――バルマーCEOの力強い宣言で初日キーノートは幕を閉じた。2日目のキーノートには、Windows 8を取り巻く関連技術、Windows Server、Windows Azure、Windows Phoneなどに関する発表が行われる予定だ。こちらも引き続き注目していきたい。

関連情報
(五味 明子)
2012/7/10 09:57