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仮想JVで中国市場進出 Webサイト性能改善技術のCloudFlare

「中国側を信頼」IPをBaiduに移管

 米国企業が中国に進出するのは簡単ではない。コンシューマー分野では、Facebookのような大手ですら中国進出を実現しておらず、Googleはいったん進出したものの撤退した。SaaS大手のSalesforceやオンラインストレージDropboxなども正式参入していない。ビジネス向けSNSのLinkedInや宿泊サービスAirbnb、配車サービスUberは中国進出にあたり、政治的なコネを利用したり、中国の投資家を利用して自社で事業を確立しようとしている。だが、「中国政府はインターネットが国境でどのように動き、制御されるのかを非常に気にしている」(New York Times)ため、ビジネスは非常に困難だ。

 CloudFlareはこうしたルートを採らず、“中国のGoogle”といわれる老舗ネット企業Baiduと手を組むことを選んだ。提携の下、CloudFlareは自社のセキュリティ、Webサイト性能強化などのIP(知的所有権)をBaiduに移管し、Baiduのサービスとして提供するという。

 New York Timesはこれを「仮想ジョイントベンチャー」と形容している。「両社は新しいビジネスモデルを確立し、今後、政治的に簡単ではない中国のハイテク業界で事業展開したいほかの米国企業が追従する可能性がありそうだ」と予想する。

 一方で、CloudFlareがとる仮想ベンチャーの動きに対し、ブログメディアのMotherboardは危険だとして異を唱える。Motherboardは3つの点で危険視するが、その1つがCloudFlareのIPの移管だ。「これこそ中国政府が欲しがっているもので、米国や西側の企業は回避すべきだ」とする。中国はサイバースペースが西側に独占されることを危惧(きぐ)しており、技術のIPを中国に移すことで西側の企業に対抗し、最終的に置き換えてしまうような中国企業の誕生を促進してしまうというのだ。

 なお、IPの移管についてCloudFlareの共同創業者でCEOを務めるMatthew Prince氏はNew York Timesに対し、深いレベルでの信頼と提携を実現するものであり、IPは自社にとって最重要部分ではないとの見解を語っている。

(岡田陽子=Infostand)