Appleを追うLenovo 世界2位のPCメーカーから、スマホ、TVへ展開
中国Lenovoが、「スマートTV」を投入する計画を明らかにした。IBMからPC部門を買収して7年。今年第3四半期には、Dellを追い越して世界シェア第2位となったばかりで、タブレットも拡充している。また、地元中国国内ではスマートフォンも展開しており、そのラインアップは、まるでAppleを目指しているようだ。
■スマートTVとクラウドを2012年にローンチ
スマートTVの計画は、11月29日の自社イベントで発表した。Wall Street Journalなどの報道をまとめると、ブランド名は「LeTV」で2012年第1四半期に発表の予定。コンピューターのテレビへの統合は、Google TV、Apple TVなどが先行するが、Lenovoはクラウドサービス「Le Cloud」(Lenovo Cloud、中国名・楽雲)と合わせて展開する計画だ。
Le Cloudは20GBを無料で提供。ユーザーはクラウドを利用して、複数の端末でコンテンツ共有や同期、ソーシャルネットワークや個人情報の管理などができる。新戦略の中には、アプリケーションストアも含まれているようだ。
イベントで、Lenovoはスマートフォンとタブレットの最新機種も発表した。同社はスマートフォンは「LePhone」、タブレットは「LePad」(中国向け)と「IdeaPad」(国外向け)というブランド名で展開しており、ともにOSにはAndroidを採用している。例えば最新世代のLePadとして、1.2GHz~1.5GHzのプロセッサを搭載し、地元キャリアのWCDMA、EVDO、HSPAの通信規格に対応する5インチ、7インチ、10インチの3機種を披露した。
■スマートフォンは対iPhoneで苦戦
PC、スマートフォン、タブレット、TV、そして、これらをつなぐクラウドとくると、どうしてもAppleを連想する。Menafn.comは「明らかにAppleに対抗する戦略」と指摘する。LeTVの提供地域は公表されてないが、Lenovoが中国のPC市場で11年連続首位という一大ブランドであることから、中国で提供することは間違いなさそうだ。
ただ、スマートフォンでLenovoは、お膝元の中国国内でもiPhoneに負けたと伝えられている。LenovoはLePhoneで、Androidを改変して地元市場向けのサービスを統合するなどの差別化を図り、売り上げを伸ばしているが、それでも7-9月期に売上高でAppleに抜かれてしまったという。
GigaOmは、中国はAppleの将来の成長にとって重要な市場であり、中国ユーザーも高級ブランドとしてAppleを受け入れていると指摘。「中国人の購買能力が増す中、Appleはライバルを引き離して市場シェアをとるポジションにある」と分析する。富裕層はもちろん、経済力をつけてきた中流層がAppleに流れる可能性は十分にありそうだ。
一方、Lenovo側もスマートフォンで次の一手を考えているようだ。中国のモバイル情報サイト、iMobileが11月29日付で掲載したインタビュー記事で、Lenovoの製品マネージャーChen Yue氏は、Microsoftの「Windows Phone」を搭載したスマートフォンを2012年後半に投入すると述べた。中国のスマートフォンは現在、iPhoneとAndroidが主流であり、Windows Phoneをラインに加えて差別化を図るという狙いがありそうだ。
■ハードウェアメーカーはオンラインで成功できるのか?
もちろん、Apple以外にも競合社は多い。Samsung、LG、ソニーなどの総合メーカーが同じような戦略を持っており、これらとの戦いもある。Samsungは世界に通じるブランド力とAndroidをテコに、スマートフォンでAppleを抑えて1位となった。現在、タブレットでも猛攻をかけているところだ。ソニーも先に、Sony EricssonのEricssonとの合弁を解消して完全に傘下に収め、自社の次世代デジタル戦略の中心にしていくことを明らかにしている。
こうした動きについて、IDCのアナリスト、Bryan Ma氏はLenovoの課題は多いと見る。Ma氏はWall Street Journalに対し、PCでの成功が「そのままオンラインサービスに適用されるわけではない」と語る。だが、悲観しているのではなく、ハードウェアメーカーが「(ハードウェアは)もはや単なるハコではないことに気づいたのはよいことであり、勝負の行方はまだわからない」とも述べている。
LenovoのCEO、Yang Yuanqing氏は声明で「パーソナルモバイルインターネット端末で、世界のリーダーを目指す」と述べている。Dellを抑えて世界第2位のPCメーカーとなったLenovoだが、生き残りのために、PCにとどまらない多角的な戦略が必要なことを認識しているのだろう。
今後、注目されるのが、中国市場外での展開とOS・プラットフォームだ。
中国は最大規模の市場ではあるが、これを起点として中国以外の市場に、スマートフォン、タブレットを、どう売り込むのかは、気になるところだ。また、OS・プラットフォームでは、現在、PCでWindows、モバイル端末でAndroidを主力OSとしているが、AppleはといえばiOSで統一してアプリのエコシステムを確立している。価格での勝負であれば、コンテンツを持つAmazonも有望なライバルとなる。Lenovoがどう攻略していくのかが注目だ。