「世界の今を知りたい」 ヒートアップするリアルタイム検索サービス


 インターネット検索に「リアルタイム検索」という新しい潮流が起こっているようだ。ブログやニュース、動画など膨大なインターネットコンテンツの中から、最新で、目的に合ったものを検索できるサービスで、「今何が起こっているか」「いまの旬な話題は何か」を知ることに重きを置いている。リアルタイム検索は次のパラダイムになるのだろうか――。

 このところ毎週のようにリアルタイム検索の新サービスがスタートしており、6月18日などは、CrowdEyeとCollectaという2つのサービスが同時にローンチした。メディアにも頻繁に取り上げられ、Scoopler、Topsy、Twazzup、Yauba、Surchur、OneRiot、Tweetmeme、Almost.at、DailyRT、Friendfeed、Itpintsといったサービスの名があがっている。そのほとんどが、できたばかりのベンチャー企業だ。

 対象とするコンテンツは、ブログ、Flickr、YouTube、Diggなどが入るものがあるが、Twitterの“Tweet(つぶやき)”検索を中心としていることは共通。公開後数十分から数分、速いものでは数秒しかたってないものまでヒットする。

 「人々は、今、何が起こっているのかを知りたがっている。そのニーズにGoogleはうまく応えていない」。速さや自動更新などの機能で注目を集めているScooplerの共同創設者A.J. Asver氏は、San Francisco Chronicle紙にこう述べ、既存の検索サービスと一線を画すものであることを強調している。

 Scooplerの画面は、2つの検索結果コラムがあり、左は「LIVE」と呼ぶリアルタイム検索の結果、右は「POPULAR」と名付けた、より一般的な検索結果を表示する。左はTwitterに加え、Flickr、Digg、Deliciousが主で新しいものを優先。右は動画や画像が主で、人気の高いコンテンツが上位に来る。多くのサービスが、こうした「最新の情報」と「価値ある情報」の2つの面からの検索を工夫している。

 Scooplerの場合、さらに結果を自動更新し、検索に該当する新しいTweetを次々に追加表示してゆく機能を持っている。この機能は“ストリーム”とも呼ばれ、ほかにCollectaなども採用している。

 これらリアルタイム検索ブームの背景には、Twitterの存在感の高まりがある。

 最近では、大きな出来事があると、必ずTwitter上に大量の関連情報が流れる。VentureBeatによると、Michael Jackson氏の死去の際は、いち早く報じたTMZ.comのサイトがトラフィック殺到でダウン。大手メディアにもニュースが出ない中、ユーザーはまずTwitterに集まり、検索キーワードで「Michael Jackson」と「cardiac arrest(心停止)」が一挙にトップになったという。イランの大統領選後の騒乱でも、改革派支持者たちが、Twitterを使ってデモを組織し、海外メディアに抗議し、情報を発信し続けた。

 ユーザー側から見れば、Twitterから重要な情報を得られるかもしれず、ひょっとすると、歴史的な大事件にナマで遭遇できるかもしれない。リアルタイム検索サービスは、こうしたニーズにも応えるものだ。

 昨年スタートして、最近、リアルタイム検索機能を導入したOneRiotは、伝統的検索とリアルタイム検索の技術面での違いを、次のように説明している。

 Googleのような従来型の検索エンジンは、Webをロボットで巡回して、ページ間のリンクの状態を参考にしてインデックス化する。これに対し、リアルタイム検索サービスは、SNSサイトのフォローや共有の状態をそのコンテンツの重要度と判断する。

 「OneRiotは、どのページをインデクス化するかを決める際、ソーシャルWeb上のリアルタイム活動をコンテンツの重要な要素としている。ユーザーが“tweeting”“diggiing”しているかを重要な要素とみている」(ジェネラルマネジャーのTobias Peggs氏)という。

 さらにOneRiotは共有されているコンテンツにフォーカスした作りになっており、同社の「Pulse Rank」アルゴリズムでは、より新しい話や、その時点でポピュラーなドメインからリンクされているものなどを優先しているという。

 こうしたリアルタイム検索サービスが新たな巨大マーケットをつくり出すと見る関係者は多い。GoogleやTwitterに初期段階で出資したエンジェル投資家のRon Conway氏は「考えられるあらゆる広告主が興味を持つ。巨大なもうけの機会を生むだろう」と、The Wall Street Journalに述べている。

 それに、リアルタイム検索は、Google、Yahoo!、Microsoftなど検索サービス大手がまだ手を着けていない、“希望の荒野”でもある。雨後のたけのこのように現れたベンチャーが、しのぎを削っているのもそのためだ。

 しかし、このブームに“騒ぎすぎ”とクギを刺す見方もある。WebProNewsのMike McDonald氏は「リアルタイム検索は、まだ、コンセプトにすぎない」(Real Time Search Still Just a Concept)と題した記事で、「検索結果は、せいぜい概略を示す程度であることが多く、質の面でGoogleには及ばない」「あまりに“Twitter中心的”」と述べ、リアルタイム検索が本当の価値を発揮できるには、なお3、4年かかるとしている。

 もちろん、GoogleもMicrosoftも、リアルタイム検索技術の開発に取り組んでいる。またTwitter自身も検索の強化を進めており、さらにほかのソーシャルメディア・サービスからは、Facebookがリアルタイム検索のテストを開始したと伝えられている。リアルタイム検索関連の動きは、ますます活発化しそうだ。



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(行宮翔太=Infostand)
2009/6/29 08:50