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APIに著作権保護適用? Android/Java訴訟の波紋


 Javaの知的所有権を巡り1年9カ月にわたって争われているOracleとGoogleの訴訟で、大きな展開があった。Oracleの保有する著作権の一部をGoogleが侵害しているとの判断を陪審員が下したのだ。これがAPIに関するものであるため、両社の関係やAndroidだけでなく、クラウドを含むIT業界全体にも影響する話となっている。

Oracleの一勝、ただしフェアユースの判断は保留

 訴訟は、AndroidがJavaプラットフォームの特許と著作権を侵害しているとしてOracleがGoogleを2010年8月に訴えたものだ。Oracleは同年1月、Sun Microsystemsの買収でJavaの知的財産権を取得しており、当初、61億ドルという破格の損害賠償を求めた。しかし、William Alsup判事がOracle側の主張を退け、4月中旬に始まった今回の審理までに、Oracleは対象特許を7件から2件に縮小し、損害賠償額も10億ドル程度となっている。

 審理は、著作権、特許、損害額の3つの段階に分かれ、まず第一段階の著作権侵害について審理が行われたところだ。OracleはAndroidがライセンスを受けず、自社の著作権を侵害したと主張し、Googleは、当時Javaの管理者だったSun MicrosystemsはAndroidでのJava利用を歓迎していたとして、ライセンスを取得する必要を感じなかったなどと主張。双方の主張は大きく離れている。

 これについて北カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で12人の陪審員が5月7日に下した評決は、Googleが37件のJava APIのコードについて、Oracleの著作権を侵害していると認定。また、「rangeCheck()」という9行の関数をGoogleがAndroidでコピーしていることなども認めた。まずはOracleの勝利である。

 しかし、陪審員は、Googleの使用が著作権者の許諾が不要な「フェアユース」であるかについては判断しなかった。フェアユースであれば、Googleは損害賠償の支払いを免れることになる。

 評決を受けた声明で、Google側の弁護士Robert Van Nest氏は、フェアユースと著作権侵害は表裏一体であり、「核心は、APIが著作権で保護できるかどうかだ」と述べている。Google側は評決無効を求めて著作権侵害とフェアユースについて新たな訴訟で審理するよう求め、Oracleは著作権侵害の部分は維持しながら、フェアユースについてのみ審理するよう要求している。


APIは著作権で保護されるのか?

 この評決は、両社の訴訟のみならず、広範囲に影響する可能性がある。とりわけAPIの公開が重要なWebサービスやクラウドサービスには重要だ。

 API(Application Programming Interface)は、あるプログラムが別のプログラムとやり取りしてそのプログラムの機能を利用する仕様だ。APIそのものはプログラミングを定義するものではない。Javaの場合はAPIを経由してモジュールとなるクラスライブラリを呼び出せる。Oracleが問題にしているのはこのようなAPIの記述で、GoogleはAndroidでJava APIを不正に利用していると主張した。

 電子フロンティア財団(EFF)やFree Software Foundation(FSF)などのオープンソースやフリーソフトウェア推進派はAPIの著作権に強い危機感を持っている。EFFのJulie Samuels氏は「APIはあらゆるプログラム開発に偏在し、基礎となっている。あらゆる開発者が自分のソフトウェアと他のソフトウェアと連携させるためにAPIを使っている」と説明。一方で著作権の考え方はプログラミングを考慮して作成されたものではないため、APIが著作権で保護されるとなると、「相互運用性に深く大きな悪影響を与える。これはイノベーションにも影を落とす」と述べている。

 法律専門家はどうだろう。スタンフォード大学のBrian Love氏は、まず、フェアユースかどうかの決着なくして著作権侵害かどうかを決めることはできない、とCNet Newsにコメントしている。この考え方に基づくと、フェアユースについての見解確立を求めるGoogleのやり方の方が妥当なようにみえる。

 一方でサンタクララ大学で著作権法を専門とするTyler Ochoa氏は、APIへの著作権適用が可能であるか、使用がフェアユースに当たるかの他にも重要な要素があり、このことが訴訟を複雑にしていると指摘する。Ochoa氏は「(著作権適用に関係なく)意図的にライセンスを取得しなかった」という点で、Googleに不利だとCNet Newsに述べている。そして、APIを著作権の範囲とするかについては、Alsup判事が決断を下すべきだとしている。


Android以外への影響は

 その後の報道によると、Alsup判事はフェアユースについて別途審理が必要との考えを示唆している。いずれ、APIの著作権についての判断が示されるだろう。では、APIが著作権で保護されるとどうなるのだろう。

 まずはJava。JavaはSunの時代にオープンソースとなっているが、Ars Technicaは今回の訴訟の影響として、「Javaはこれまで考えられていたようなオープンソースではないということになる」とする。「プログラマーは難しい立場に追い込まれるだろう。Javaはオープンソースの言語だが、開発者がどのぐらい自由に使えるかは明確ではなくなった」としている。

 また、Android以外への影響については、サンタクララ大学のOchoa氏に解説を求めている。それによると、Androidは「唯一の標準的ではないJava実装」であるため「未知数」としながら、「OracleがJavaで知的所有権をたてにライセンスを迫るとみられた場合、利用者側に萎縮効果が出るだろう」と予想する。Oracleは、Googleとの戦いには勝っても、業界の戦いで負ける可能性があるという。

 CNet NewsのStephen Shankland氏は、クラウドなどの分野のプログラマーへの影響を懸念する。「著作権で保護されたAPIは、市場に参入するにあたって新しい障壁となる可能性がある」としながら、APIの知的所有権を保有する企業がライバルを阻止する新しい方法となる可能性もあり、企業は製品開発に弁護士を用意しなければならなくなるかもしれないと言う。

 Shankland氏が例に挙げるのは、WindowsなどのOS、自社の処理能力やプラットフォームなどをインターネット経由で提供するクラウド技術などだ。Shankland氏は、弁護士のOssi Niiranen氏の「プロバイダのプラットフォームを使ってアプリケーションを開発する場合は問題ないが、競合する場合は問題となる」との言葉を挙げている。

 Sun時代、Javaの収益化が課題とされ続けたことを思えば、Oracleはこの訴訟で、Javaをどう活用するかを見せたようにも感じられる。一番のポイントは、開発者がこの事態をどう受け止めるかだろう。


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(岡田陽子=Infostand)
2012/5/14 10:05