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MicrosoftのAOL特許がFacebookへ 「敵の敵は味方」


 10億ドルで写真共有アプリケーションのInstagramを買収すると発表したばかりのFacebookが、今度はMicrosoftから650件の特許を買収すると発表した。買収額は5億5000万ドルで、Microsoftが4月上旬にAOLから取得したばかりのものだ。特許ポートフォリオの構築を狙った動きであることは間違いないが、この動きにはさらに意味がありそうだ。IPOを控えたFacebookと、Microsoftの思惑とは――。

特許獲得に血道を上げるテクノロジー企業

 Facebookが買収すると発表した650件の特許は、先にMicrosoftがAOLから10億ドルで買収した925件の特許(出願中を含む)に含まれるものだ。MicrosoftがAOLから買収した特許の約7割がそのまま移動することになる。またFacebookが支払う5億5000万ドルには、残りの275件の特許を利用するためのライセンス料も含まれるという。

 AOLを合わせた3社とも特許の内容は公開していないが、Wall Street Journalは消息筋からの情報として、電子メール、IM、Webブラウジング、Web検索、オンライン広告に関するものだと伝えている。PC Advisorはさらに、コンテンツ生成と管理、ソーシャルネットワーキング、マッピング、マルチメディアとストリーミング、セキュリティも含まれると紹介している。


Facebookの狙い

 Facebookの目的は何か――。まずは特許訴訟対策としての特許ポートフォリオの構築が挙げられる。Facebookは声明で、「Facebookの利益を長期的に保護するため、知的所有権ポートフォリオの確立を進めており、今回の取り引きはその重要な一歩だ」と述べている。

 Facebookは3月12日にYahoo!から特許侵害で訴えられている。2011年の売上高は37億ドル、純利益10億ドル。また現金39億ドルを手元に持つなど健全な財務体質、ソーシャルメデイアという成長分野、9億100万人もの月間アクティブユーザーなどの好材料に支えられてはいる。だがベンチャー企業の常として、多くの特許は持っていない。FacebookがIPOのために米証券取引所委員会(SEC)に提出した書類によると、2011年12月末時点で保有していた特許数はわずか56件(出願中が503件)にすぎない。

 特許訴訟では特許保有数がモノをいう。Facebookはこのところ急ピッチで知的所有権ポートフォリオを強化している。Yahoo!の提訴の約2週間後の3月22日、FacebookがIBMから750件の特許を取得したと報じられた。つまり、Facebookはこの1カ月で約1400件の特許をかき集めたことになり、同社は並行して4月初めにYahoo!を逆提訴している。

 こうしたFacebookの動きに対し、Yahoo!は強気の姿勢を崩していない。PC Advisorなどによると、Yahoo!側は「特許を買う企業は多くの場合、弱い立場を変えようとしており、自分たちのポートフォリオを強くするためにそのような動きに出る。Facebookの動きは、われわれの事例の有効性を実証するものだ」とコメントしている。

 だが一方で、Bloombergは「この取り引きは、Facebookの立場を強く、Yahoo!の立場を危うくするものだ」というPivotal Research Groupのアナリスト、Brian Wieser氏のコメントを伝えている。Wieser氏は、Facebookは潤沢な資金を使って、今後も、こうした防御策をとると予想している。


検索進出の足場固め?

 また別の見方もある。The Streetに寄稿した投資家Eric Jackson氏(2011年秋、Yahoo!がFacebookを訴えることを最初に予想した人物)は「MicrosoftとFacebookの取り引きがYahoo!に意味することは(内容が開示されていないので)誰にもわからない」とした上で、分析を披露している。

 Jackson氏は、FacebookとMicrosoftの特許取引発表直後にYahoo!の株価が上がったことに触れながら、Yahoo!との訴訟がなくてもFacebookは特許分野を強化する必要があったのではないかとする。そこで考えられるのがFacebookの検索分野進出だ。

 もし、Facebookが検索分野に進出すれば、同社にとって大きな収益源となる。さらにユーザーの“ソーシャルグラフ”を豊富に持つFacebookの検索サービスは、対Googleの強力な武器となる。だが、検索への進出にはYahoo!という障害がある。Yahoo!はOvertureとGoTo.comの特許を保持しており、その有効性はYahoo!対Googleの訴訟で実証済みなのだ。

 Facebookは次のYahoo!との訴訟に備えて特許ポートフォリオを強化している――というのがJackson氏の見方だ。同氏は、Yahoo!とFacebookが既に、別の訴訟につながる問題について話し合いをしていると考えている。


対Googleで手を組んだ

 このほか、一部のメディアは取引相手であるMicrosoftの関与を分析しようとしている。3月に特許を購入したIBMとは違い、MicrosoftはFacebookとの関係が深い。両社の関係は、2007年にMicrosoftがFacebookに2億4000万ドルを出資したことに始まり、Bing採用、Skype統合などいくつかの提携がある。MicrosoftがFacebookに買収をオファーしたが、Mark Zuckerberg氏が断ったという話も業界では知られている。

 New York Timesは「この取り引きは、両社が共通の敵であるGoogleに対抗するため手を組んだという証拠だ」とみる。Microsoftは、検索はもちろん、ドル箱の「Office」事業では「Google Apps」、モバイルOS「Windows Mobile/Windows Phone」では「Android」、ブラウザでは「Google Chrome」と全面的にGoogleと対立関係にある。

 一方、Facebookに対してGoogleは「Google+」で挑んでいる。Microsoftはソーシャルメディアには大きくフォーカスしていないため、MicrosoftとFacebookが対Googleで手を組むというのは図式としてわかりやすい。これをGartnerのアナリスト、Michael Gartenberg氏は、「“敵の敵は自分の味方”の例だ」とNew York Timesに語っている。

 Microsoftは今回の取り引きにあたって、「AOL特許オークションにおける目標を実現しながら、コストの半分を取り戻すことができる」と述べている。実はAOLの特許については、MicrosoftのほかAmazon、Google、eBayなどに混じりFacebookも入札していたといわれている。Gartnerの別のアナリスト、Brian Blau氏はPC Advisorに対し、Microsoftは自社が購入するAOL特許はすぐに売却できることを見越してオークションに参加した、と見ている。

 先述のJackson氏が示唆したように、Facebookが検索などへの事業拡大を考えていても不思議ではない。ユーザー数はいずれ伸び悩む。また、IPO後には成長のプレッシャーはさらに高くなる。そこで浮上しているのが、MicrosoftがBingをFacebookに売却しようとしているうわさだ。

 今回、MicrosoftからFacebookが取得する特許には検索も含まれているという。もし、Bingを取得すればGoogle対Facebook/Microsoftの対立構図はさらに強まるだろう。


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(岡田陽子=Infostand)
2012/5/1 06:00