Facebookのユーザーが減少? 巨大SNSの新しい課題


 Facebookのユーザー数が北米で減少しているという。トラフィックでGoogleを抜き、広告収入でも超える可能性さえあるといわれる時代の寵児だが、ユーザー数減少を示す調査結果が伝えられた。増減についてはほかに食い違うレポートも出ており、実際のところははっきりしない。だが、これをきっかけに、いつか訪れる「ユーザー数増がフラットになる時代をFacebookがどう乗り切るのか」に関心が集まっている。

 

米国で1カ月に600万人のユーザー減

 Facebook情報ブログInside Facebookが6月12日、「米国とカナダでユーザー数が減少」と報じた。それによると、Facebookのユーザーは世界で6億8700万人。7億人の大台に近づきつつある一方で、独自に入手したデータ(Inside Facebook Gold)ではこの1カ月、米国で600万人、カナダで152万人のユーザーを失った。英国、ノルウェーなどの国でも10万人減少しており、4月と5月の純増数が2カ月連続で過去12カ月の平均値を下回ったという。

 欧米メディアは、これを大きく取り上げ、「ついにFacebookの成長が止まったのか?」と報じた。BBCによると、Facebookはこれに対し、Inside Facebook Goldは広告ツールのデータから抽出した広告主向けの数字であり、Facebookの成長を追跡するものではない、と否定した。また、Business Insiderなどは、モバイルからのアクセスが数字に含まれていない点も指摘している。

 BBCやBusiness Insiderなどのメディアは、Nielsen、comScoreのデータではFacebookユーザーが増加していることを取り上げている。これを受けて、Inside Facebook自身も新しいブログで他社のデータを併記した。こうして、ユーザー数の増減論争は、必ずしも減少しているわけではないということで収束し、焦点はFacebookの今後の成長に移った。

 

ユーザー数から利用の密度へ

 Facebookは世界に浸透しつつある。Daily Mailは、イタリアのSNS専門家が作成したというトップSNSの世界地図を紹介している。2009年6月から2011年6月まで、半年ごとの地図を見ると、まずは米国、そして欧州、カナダ、中東へと広がり、アジアに押し寄せている様子がわかる。2011年6月時点で、Facebookが塗り替えていない国は、日本(有力SNSはミクシィ)、中国(同QZone)、ロシア(同V Kontakte、Odnoklassniki)、ブラジル(Orkut)ぐらいのものだ。

 しかし、世界のFacebookユーザー数は7億人に達しつつあり、新規ユーザーによる成長が期待できる時間はそう長く続かない。いずれは頭打ちになるはずだ。そこで問題になるのは、いかにして既存ユーザーにたくさんのサービスを利用してもらうかだ、とBusiness Insiderは指摘する。

 Business Insiderは、米国ユーザーの月間利用時間の平均が過去1年のうちに4.6時間から6.3時間に増加しているというデータを引用し、「まずは成功しているようだ」と分析している。

 

“Facebook疲れ”やユーザー年代の変化

 だが、ある期間使った後に飽きてしまう“Facebook疲れ”は以前から指摘されている。今回の減少データを探っていくうちに、このことも取り上げられた。ソーシャルメディア専門家のCraig McGill氏は、Daily Recordに対し、「新機能登場など(Facebookは)いつも変化している。これに疲れたのではないか?」「デジタル時代に永続はない」とコメントしている。

 また、ウエストオブスコットランド大学の研究者Jennifer Jones氏は「Facebookに魅力がなくなっている」とDaily Recordに述べ、詳細なプロフィールの提供が不要なTwitterの方がいずれ優勢になるだろうと予想した。PC Worldは、ユーザーが離れているとすれば、プライバシー問題や、これまでの“学生ノリ”から年齢を重ねて使い方が変わってきたことが原因ではないか、と推測する。

 Forbesのデジタルメディア担当ブロガーは、Facebookユーザーの平均年齢が40歳近くになっており、その一方で新しくSNSを使い始める子供たちは親と同じSNS(Facebook)を使いたがらないと指摘。「Facebookは現在、苦しいポジションにある」と述べている。

 実際のユーザーはどうだろう? Inside Facebookへのユーザーのコメントからは、確かに“疲れ”が感じられる。

 Simith Amandaと名乗るユーザーは「Facebookに飽きたし、プライバシー問題にも嫌気がさしたのでは」と書いている。Xavi Silva氏は「たくさんルールがありすぎる」「ステータスに応じて広告が出てくる」と不満だ。Steven A. Sherman氏は「なぜ新しい機能開発ばかりに注目して、ユーザーをスパムや偽造コンテンツから保護してくれないのか?」と書き込んでいる。

 大学内ネットワークだった時代から使っているというBaladi Viswanathan氏は「Twitterに移行した。(Facebookよりも)使える。たくさんの人が自分と同じではないか。“疲れ”は顕著だ」とコメントしている。

 

Facebookはユーザーを維持できるのか?

 SNSで怖いのは連鎖反応だ。1人のユーザーが動くと、そのユーザーのネットワーク全体がじわじわと反応するからだ。FacebookがほかのSNSからユーザーを獲得したように、今度はほかのSNSに奪われる可能性も十分にあるのだ。

 Daily Mailは、2007年にGawker.comが行った予想を取り上げている。すなわち、「SNSがすでに浸透している場合、たとえ新しいSNSの方が機能的に優れていても、友人ネットワークが出来上がっているので移行は難しく、一部の国ではFacebookが競争に勝てない」というものだ。

 しかし、Facebookは見事に予想を覆して見せた。Facebookは世界制覇の勢いを見せている。だが逆に今、いち早くユーザーを獲得して先行していた国々では新しいフェーズに入りつつある。今度は、獲得してきたユーザーを維持するという、これまで、どのSNSも実現できなかった課題に挑戦することになるのだ。

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(岡田陽子=Infostand)
2011/6/20 11:00