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データセンター急増で米国の配電網危機 原子力も本格利用へ

「送電網は瀕死の状態」

 AWSは1月、日本リージョンに2023年から5年間で2兆2600億円(約150億ドル)を投資すると発表。また、2月にはメキシコで50億ドル、3月にはサウジアラビアで53億ドルの投資計画を明らかにしており、国外のデータセンターを拡充している。

 その一方で、バージニア州へ2040年までに350億ドルを投資して、複数のクラウドデータセンター・キャンパスを建設する計画も進めている。海外プロジェクトに比べて額はケタ違いで、やはりメインは米国内であることを感じさせる。

 ところが、その米国内の電力供給が相当ひっ迫した状態であることを、3月7日付のWashington Postが報じている。「データセンターやクリーン・テクノロジー工場が全米各地に急増し、電力会社や規制当局が電力不足の危機に瀕している」状態という。

 背景にあるのは、AI利用と、暗号資産のマイニングによるデータセンター需要の増加だ。IEA(国際エネルギー機関)によると、2022年には米国のデータセンター(2700カ所)は国内総電力の4%を消費したが、2026年までに6%まで増加する見込みだ。

 また、電力を求めているのはクラウドプロバイダーだけではない。Baiden政権は、過去数十年来にないペースで、米国に工場を建設する企業(例えば太陽光発電パネルなどの工場)を誘致。工業用電力需要も急増しているという。

 電力を大量に使える土地を求めて、争奪戦が起こっている。「AIによる電力需要の急増で、ハイテク企業は、新しいデータセンター用地を求めて全国を探しまわっており、あまり知られていない多くの企業もまた、その候補地を探している」(Washington Post)

 クリーン エネルギー統合を専門とする調査会社Grid Strategiesの予想では、電力会社が今後5年間に必要とする電力量の予測はほぼ倍増し、さらに増加する見込みだという。これには既存のインフラでは対処できず、「送電網を瀕死の状態に追い込んでいる」という。

 そこで急浮上しているのが、送電線網に頼らない「オフ・ザ・グリッド」の動きだ。