Windows Server 2012 RTM版ファーストインプレッション


 9月1日にボリュームライセンスの販売を開始したWindows Server 2012。この時点で、製品が完成したと言っていい。実際、9月5日(日本時間)には、Windows Server 2012のRTM版が、TechNetやMSDNなどの会員に向けて提供開始された。

 5日に行われた記者発表会では、パッケージ版は9月26日にリリースされことが明らかにされたほか、Windows Server 2012をバンドルしたサーバーは、各ベンダーのスケジュールによるが、9月下旬から10月にはリリースが開始されるとのことだった。

 こうして、いよいよ実際の製品が見えてきたWindows Server 2012 RTMのファーストインプレッションをお届けしたい。

 

エディション構成とライセンスがシンプルになった

 まずは、Windows Server 2012の状況について軽くおさらいしていこう。

 Windows Server 2012では、Datacenter、Standard、Essentials、Foundation、組み込み(NAS)向けのStorage Serverの5つのエディションに変更された。ただ、TechNetで配布されているインストールイメージを見てみると、FoundationとStorage Serverは、1つのイメージで提供されている。最終的な確認をしたわけではないが、FoundationとStorageは、バイナリーとしては同じモノが使用されており、ライセンスとしての違いだけかもしれない。

 もう1つ、今まで無償で提供されていたHyper-V ServerもWindows Server 2012ベースのHyper-V Server 2012にアップデートされた。Microsoftの米国サイトには、無償でダウンロードできるようになっている。

 一方で家庭向けのWindows Home Server、中小企業向けのSmall Business Server(以下SBS)などは、Essentialsに統合された。

 ライセンスに関しては、DatacenterとStandardは、プロセッサ単位(ソケット数)のサーバーライセンスとクライアントアクセスライセンス(CAL)になっている。仮想インスタンスは、Datacenterは無制限、Standardは2つまで利用できる。

 Essentialsは中小企業向けのエディションで、25ユーザーを上限とする。前述したように、SBSやHome Serverの代替として位置づけられている。

 Foundationは、15ユーザーを上限とするエントリー向けのWindows Server 2012だ。Foundationに関しては現行のWindows Serverと同様、OEM専用エディションとなるため、サーバーベンダーがサーバーにプリインストールして提供することになる。


Windows Server 2012は、4つのエディションにまとめられている。Windows Server 2008 R2から比べるとシンプルになっているDatacenterとStandardの差は、仮想化インスタンスの権利だけが異なる。機能としては、DatacenterとStandardで差はない

 

Windows Server 2012の使い勝手は

 いつものように、手持ちのPCにWindows Server 2012をインストールした。今回は、8コアプロセッサのAMD FX8150、メモリは32GB、3Gbps SATAの500GB HDD、グラフィックカードにAMD Radeon HD 5700シリーズというハードウェアだ。

 Windows Server 2012のインストールに関してはほとんど問題なかったが、この構成では、Radeon HD5700シリーズのグラフィックドライバはインストールされなかったため、起動時は標準VGAで画面が表示された。

 これでは、使いにくいので、AMDのWebサイトからWindows 8 X64用のドライバをダウンロードしてインストールした(現在、Windows Server 2012用のグラフィックドライバは提供されていないため、同じアーキテクチャを採用しているWindows 8 x64のドライバを使用した)。


AMDのWindows 8 x64用のグラフィックドライバを利用したが、警告が表示されてしまった。もっとも、そのまま使ってみた感覚からいえば、重大な問題は起こっていない管理ツールのAMD VISION Engine Control Centerもトラブルなく動作している

 インストール作業自体ではトラブルは起こらなかった。印象としては、Windows Server 2012 RTMとWindows Server 2012 RC版でほとんど違いはない。Modernスタート画面(旧Metroスタート画面)、サーバーマネージャなどでも、違いは全くない。

 機能面では、Windows Server 2012 RC(リリース候補)版でほとんど完成していたのだろう。RC版からRTM版までで、バグの修正だったり、チューニングだったりが行われたのではないか。

 Windows Server 2012を使っていると、Modernスタイルを意識することがほとんどない。多くのサーバーアプリケーションは、デスクトップからアプリケーションをインストールしたり、設定/管理を行ったりする。このため、Windows 8のようにModernスタイルのメリットは全くない。第一、サーバーではModernアプリをほとんど利用しない。

 Windows Server 2012において、最も使いやすくなったのはサーバーマネージャーの存在だろう。Windows Server 2012が提供している機能を管理するには、ほとんどがサーバーマネージャーで済んでしまう。ほかのソフトを起動することは、ほとんどないといっていいだろう。

 またサーバーマネージャーは、ローカルサーバーだけでなく、ネットワーク上にあるほかのサーバーも一括して管理できるようになっている。このため、専用の管理ソフトウェアを導入しなくても、ある程度のサーバー群の管理が行えるようになっている。サーバーマネージャーのUIは、Modernスタイルを意識したデザインになっており(Modernプラットフォームを使っているわけではない)、シンプルで使いやすいソフトに仕上がっている。

Windows Server 2012のシステム情報Windows Server 2012のバージョンは6.2。RTM版のビルド番号は9200となっているWindows Server 2012のサーバーマネージャーは使い勝手がよく、ほとんどの操作はこの画面が行える

 

Modernアプリを使わないWindows Server 2012

 Windows Server 2012のModernスタート画面を見ると、Modernアプリは全くない。アプリケーションを検索しても、Modernアプリはゼロだった。Modernスタート画面にInternet Explore(IE)のタイルが登録されているが、Windows 8のようにModernアプリのIEではなく、デスクトップのIEへのショートカットアイコンだ。

 最も大きいのは、Windows 8にあるStoreタイルが存在しないことで、Windows Server 2012からMicrosoft Storeにアクセスすることができないため、Modernアプリをインストールする手段がない。

 StoreからModernアプリをインストールできなければ、Modernアプリのパッケージを手動でインストールするしか方法がないのだろうが、手順としては複雑になるし、インストールの流れをテストはできなかったので、最終確認はできていない。

 Windows 8とWindows Server 2012は同じアーキテクチャを採用しているため、Modernアプリを動かすためのインフラはそろっている。ただ、コンセプトとしてWindows Server 2012でModernスタイルを使うことを、Microsoftは可としていないのかもしれない。

 それに、セキュリティ的なリスクを冒してまで、Modernアプリをインストールするメリットは現状では全くない。サーバーで利用できるModernアプリはリリースされていないし、Windows 8のように、Metroスタート画面でタイルからいろいろな情報を確認するというのも、サーバーという用途を考えれば意味がない。

 このような状況であるため、サーバーでのModernアプリの位置づけは結構難しい。もしWindows Server 2012でModernアプリが使えるようになるのであれば、将来的には、ModernアプリはサーバーアプリケーションのUI部分を担当するようになるかもしれない。ロジック部分をC++/C#/VBなどで構築して、UIに関してはHTML5とJavaScriptを使って構築する、といった具合だ。

 しかしどのような形であれ、しばらくはデスクトップアプリケーションがメインとなるだろう。やはりサーバーにおいては、アプリケーションプラットフォームという面では、新しい変化よりも高い安定性/互換性の方が重視される。この意味では、Windows Server 2012世代では、Modernスタイルはほとんど使われない可能性がある。Windows Serverがあと2世代ほど進化すれば、サーバーでもModernアプリが利用されるようになるかもしれないが。


Windows Server 2012のModernスタート画面。UIのデザインは、Windows 8と同じだが、表示されているタイルの数が少ない。Microsoft Storeもないため、Modernアプリをダウンロードしてインストールできない検索で、Windows Server 2012にインストールされているアプリケーションを表示。リストを見てみると、Windows Server 2012には、Modernアプリは一切インストールされていないようだModernスタート画面のタイルとして表示されているIEを起動すると、デスクトップアプリのIEが起動される

 なおWindows Server 2012は、仮想化ハイパーバイザーのHyper-V 3.0の大幅な機能強化、ネットワークやストレージの仮想化、VDIで利用するRDP 8.0の機能強化など、さまざまな部分で機能が強化されている。Windows Server 2012は、単なるオンプレミスのサーバーOSではなく、クラウドを構築するためのベースとなるOSに機能アップしている。

 今後、このコーナーでは、じっくりとWindows Server 2012の機能を紹介していきたい。RTM版もリリースされたので、実際にベンチマークを行って、Windows Server 2012のパフォーマンスの高さが紹介できればと考えている。


今後サーバーOSは、クラウドを考慮したCloud OSへと進化していくWindows Server 2012の機能強化点Hyper-V 3.0の機能強化点。ライバルのVMwareを上回る機能を実現している
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