クラウド&データセンター完全ガイド:インタビュー

やがてIoT/AI活用の前提となる「分散型データセンター」――成長市場に挑むNousInfraの戦略と実践

クラウド&データセンターのこれからInterview

企業のデジタルトランスフォーメーションを導く2大潮流となりつつあるIoT(Internet of Things)とAI(人工知能)。これらがメインストリームに躍り出るとき、データセンターは必然的に「分散」に向かう――。2017年に日本市場展開を開始したNousInfraは、すでに多数の実績を有するモジュラー型データセンター製品で培った技術とノウハウをベースに、高付加価値と低コストを両立した分散型データセンター提供のロードマップを描く。来日したCEOのヴィンセント・フー氏に、クラウド&データセンター完全ガイドが、NousInfraが見据える分散型データセンターの可能性と将来像について聞いた。 Interview:河原潤(インプレス クラウド&データセンター完全ガイド 編集長) Text:小山健治 Photo:赤司 聡

やがてIoT/AI活用の前提となる「分散型データセンター」――成長市場に挑むNousInfraの戦略と実践 米NousInfra CEO(最高経営責任者) ヴィンセント・フー(Vincent Hu)氏
米NousInfra CEO(最高経営責任者) ヴィンセント・フー(Vincent Hu)氏
やがてIoT/AI活用の前提となる「分散型データセンター」――成長市場に挑むNousInfraの戦略と実践 インプレス クラウド&データセンター完全ガイド 編集長 河原 潤
インプレス クラウド&データセンター完全ガイド 編集長 河原 潤

IoT時代の本格到来を見据えて分散型データセンターを推進

――中国発で本社は米国と聞きました。まずは、NousInfraの成り立ちを教えてください。

 NousInfraは、中国のCloud Frameという、モジュラーデータセンター(DC)製品のプリマニュファクチャード(事前製造)メーカーで知り合った仲間と立ち上げた会社です。私たちは分散型DC市場の高い成長性に早くから着目し、そこに我々のモジュラー型DCを組み合わせながら、分散型DCのソリューションを実現していこうとしています。

――モジュラーDCの発展の先に、分散型DCがあるわけですね。

 はい。本質は「データと処理の接近」です。IoTやAIであれば、データの発生源のすぐ側で処理するのが理想です。もし処理する場所が離れていると、データ転送コストがかさむだけでなく、遅延のリスクが生じます。これは工場設備や自動運転車の制御、ビル管理システム、セキュリティシステムなどでは致命的な問題となりかねません。この問題を解決するのが分散型DCで、我々の技術やノウハウが最大に生かされるコアの領域だと考えています。

――なるほど、分散型DCビジョンに基づく現在の製品ラインアップを教えてください。

 3つの製品群で展開しています。「NousCloud」は、郊外型の空き地に素早くクラウドDCを立ち上げるための製品となります。「NousEdge」は、既存建築をベースにした都市型DC向けのモジュールソリューションです。「NousFog」は、データセンターに必要な機能をオールインワンでまとめたコンテナ型DCです。

 NousInfraの分散型DCビジョンでは、集中型のクラウドと分散型のフォグがあって、その間をエッジでつなぐことで集中と分散が補完関係で機能するさまを描いています。3つの製品群はこのビジョンを具現化するコンポーネントと位置づけられます。

やがてIoT/AI活用の前提となる「分散型データセンター」――成長市場に挑むNousInfraの戦略と実践 分散型DCビジョン概念図
分散型DCビジョン概念図

――今のお話で、分散型DCのビジョンがイメージできました。導入事例があれば聞かせてください。

 中国の大手EC企業JD.com(ジンドン)が、NousInfraのコンテナ型DCを採用しています。大規模な物流倉庫から常時大量のデータが生成されるわけですが、その現場にコンテナ型DCを置くだけで即運用を開始できることが決め手となりました。将来に向けたIoT応用の良い事例であると言っても過言ではありません。

 中国の通信キャリア向けに課金計算システムを提供しているAsiaInfoの事例も先進的です。中国では3大キャリアと30超の地域ごとに異なる複雑な通信料金に対応しなくてはならず、当社にとっても初の試みとなるAI処理のための分散型DCのインフラを提供しました。

米国市場でのパートナーシップで最新ソリューションを日本市場に

――日本は土地が狭くて、地価が高く、電力コストも高いです。日本のDC/クラウド事業者に向けては、どんなソリューションを提供していくのですか。

 私たちは、日本が特殊な市場だとは考えていません。地価や電気代の課題は世界中に存在します。

 現在、米国ではエッジDCの発展が著しく、地方都市を中心に1MW(メガワット)規模のDCが相次いで建設されています。こうしたエッジDC群によるインテリジェントルーティング(最適経路選択)により、大容量の動画データについても、従来型DCを経由することなくエンドユーザーに快適な動画を配信できるようになっているのです。

 また、エッジDCは、AWSやMicrosoft AzureなどのパブリッククラウドサービスをIoTに利用するためのプラットフォームとしても注目されています。ここは今後、グローバルで急速に需要が伸びていくと予測しています。

 そこで私たちが、米国企業とのパートナーシップを通じた最新のテクノロジーやソリューションを、NousInfraのコストパフォーマンスにすぐれた設備とソフトウェアと合わせてトータルで日本のお客様に提供していきます。

キャリア/クラウドニュートラルのCMPを2017年内にリリース

――直接的なDC領域以外での展開も計画していますか。話せる範囲でお聞かせください。

 先に話したように、IoT/AIの本格普及を見据えて分散型DCを提供していくことが私たちの最大のミッションです。その一環として、2017年内にCMP(Cloud Management Platform)を搭載したクラウド管理サービスNousInfra OS(仮)のリリースを計画しています。オンプレミスとクラウドをつなぐだけでなく、異なるクラウドを自由に選択し、それもオンプレミスと融合できるようにするマルチクラウド/ハイブリッドの管理プラットフォームとなります。

――新しいCMPでキャリアニュートラル、クラウドニュートラルな世界を実現することで、分散型DCのソリューションを強化するわけですね。

 そのとおりです。米国ではもちろん、中国でも同様の狙いを持つスタートアップが多数登場しています。IoT/AIの時代は、ニュートラルなビジネスモデルによるコスト削減が求められる時代になると考えています。だからこそ、それを支えるCMPは、キャリアニュートラル、さらにクラウドニュートラルなプラットフォームであるべきなのです。

 これにより企業はハードウェア資産を一切持たず、遅延の影響を受けることもなく、すべてのデバイスを遠隔制御可能になります。

 私たちはキャリア/クラウドニュートラルで提供したいと考えています。NousInfraのモジュラーDC製品と、AWS、Azure、あるいは国産クラウドサービスを柔軟に組み合わせて、最適なIoT/AIシステムを構築することができます。

――NousInfraが描く分散型DCビジョンとそのロードマップがよくわかりました。IoTやAIなど今の顧客企業のデジタル変革ニーズに応えるべく、次のコアビジネスを検討中の国内事業者であれば注目ですね。日本でも事例が登場するのを楽しみにしています。

お問い合わせ先

NousInfra株式会社

Tel:03-6869-5797(小林)

E-mail:customer@nousinfra.co.jp

Web:http://www.nousinfra.co.jp/

やがてIoT/AI活用の前提となる「分散型データセンター」――成長市場に挑むNousInfraの戦略と実践