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三井不動産と日立、生成AIの活用でオフィスビルを統括する危機管理センターの災害時対応力を強化

 三井不動産株式会社と株式会社日立製作所(以下、日立)は15日、三井不動産が全国に保有する約200棟のオフィスビルを統括する「危機管理センター」における災害時対応力の一層の強化に向け、生成AIの一つであるSLM(Small Language Model:小規模言語モデル)を活用したオフライン型災害対策支援システムの開発・検証を開始したと発表した。

 同システムは、オンプレミス環境下においても実用に耐える精度を確保するため、ビル運営や災害対応に関する専門知見をAIに組み込んだ。日立の生成AI活用プロフェッショナルサービスを通じて、業務特化型の言語モデルとAIエージェントを活用し、現場で使える災害対策支援システムを実現する。

三井不動産の危機管理センター
現在実証中のオフライン型災害対策支援システムの画面

 三井不動産の危機管理センターは、常設の中枢拠点として24時間365日体制で宿日直(社員2人交代制)を実施しており、震度5強以上の揺れが観測された際には、センター内に災害対策統括本部を設置し、約300人規模で各地域の対策本部と連携して、全国の情報を一元管理し、ビル利用者への情報提供と機能の継続・復旧を迅速に進めてきた。

 一方、大規模災害時は、固定・携帯電話やインターネット接続が制限される可能性があり、通信に依存せず、また、宿日直者の習熟度に左右されない初動対応を可能にする仕組みが求められていた。

 そこで、三井不動産と日立は、危機管理センターの宿日直者が、通信障害などが発生するような大規模災害時でも適切に対応できることがビルを起点に活動する利用者の安全・安心な日常につながるとの考えのもと、通信環境に左右されずに的確な支援を受けられるよう、SLMを活用したオフライン型災害対策支援システムの開発・検証を開始した。

 三井不動産は、約200棟のオフィスビル運営で培った危機管理の現場知見、運用・災害対応マニュアル、BCP/BCMのガバナンスを提供し、要件定義・評価を主導。危機管理センターの運用実態に即した精緻な設計で、ビルごとの個別最適と運用実装性を担保している。

 日立は、エレベーターをはじめとするビル設備や、管制センター運営で培った知見、HMAX for Buildingsに代表されるデータにドメインナレッジと先進AIを組み合わせて新たな価値を生み出す次世代ソリューション群の開発力を武器に、軽量で信頼性の高いオフラインAIシステムを設計・実装する。デジタルシステム&サービスセクターが金融向けなどで培った、厳格なセキュリティ要件やミッションクリティカルな運用に根差したアーキテクチャで、三井不動産の高度な要求を満たしている。

 システムは、大規模災害時に想定されるネットワーク障害や外部サーバー障害に対し、ローカル環境で動作する仕組みを採用している。クラウド接続に依存せず、危機管理センターの意思決定を止めないシステム基盤を構築している。生成AI(SLM)は、この基盤上で初動対応の判断に必要な情報整理や対応案の提示を行い、センター員の判断を支援する。

 スマートフォンなどのデバイスから各ビルの被災状況を入力すると、生成AIが膨大な災害対応マニュアルを横断的に検索・解釈し、優先して実施すべき対応・作業をセンター員に提示する。立地・設備構成の異なるビル個別の要件に即した支援を行う。

 マニュアルの想定を超える現場事象にも備え、あらかじめ熟練者の知見や過去の対応ノウハウを生成AIに学習させている。宿日直者の習熟度に左右されない迅速・正確な初動を可能にする。

 大規模災害時においても、汎用的な大規模言語モデルと同等水準の回答精度および応答速度を実現する。回答時には、参照元となるマニュアル情報を合わせて提示することで、対応内容の根拠を確認しながら判断できる、高い説明性能を備えている。

 システムの精度向上に向けては、マニュアル内に含まれる図表情報にも対応できるVLM(Vision Language Model:視覚言語モデル)を適用した。さらに、災害対応に関する専門知識や、現場で求められる回答形式をAIに学習させるため、マニュアルや過去の質問応答データを活用したモデルのファインチューニングを行い、危機管理センターの業務に適した応答性能とした。

 システムに採用したSLMは、汎用的なLLM(大規模言語モデル)に比して軽量なモデル設計で、オフィスで使用される一般的なPCやスマートデバイスでも動作できる。これにより、通信障害時でも運用継続(クラウド不要)、知財・機密情報の保護(機密性の高いマニュアルや運用ノウハウを外部に置かない)、特定業務への高精度最適化(三井不動産の専門運用に集中学習)を同時に実現する。

 現在、両社はシステムの実証を進めており、技術検証と改良を経て、早期の本格稼働を目指す。また、システムを日立の「HMAX for Buildings:BuilMirai」のラインアップとしての提供を目指すことで、両社で確立した最先端の取り組みの成果を他のオフィスビル管理事業者にも提供し、持続可能でレジリエントな街づくりに貢献するとしている。