週刊海外テックWatch
AIエージェント同士が“結託” マルチエージェント環境の新たな脅威
2026年8月24日 11:25
マルチエージェントがもたらす深刻な脅威
エージェント群が想定外の行動をとる例はAnthropicからも報告された。Black Hatの講演から1週間後の8月13日、同社のフロンティア・レッドチームが公開したレポートは、同じ環境で動く複数のエージェントの奇妙な振る舞いを実験で確認している。
例えば、複数の企業が同じ製品を売る際の価格決定を模した実験では、早々に“談合”した。あるエージェントが「(卸値は皆同じだから)価格競争をすればみんなのマージンが削られるだけだ。どのニッチを誰が担当するか、喜んで調整しよう」と提案した。
その一方で、同じ目標を持っていても協力せず、てんでに勝手な行動をとって失敗することもあった。また、エージェントが自らの利益を優先して他のエージェントの作業を妨害し、「縄張り争い」する様子も観察された。人間の意図・期待から外れるさまざまな行動をエージェントたちは見せた。
こうした問題を扱った研究の最初は、強化学習アルゴリズムが自律的な談合を行うことを確認した論文(2019年)だ。
そして同じ年、オックスフォード大准教授のAllan Dafoe氏とGoogle DeepMindの研究者らが「Open Problems in Cooperative AI(協調的AIにおけるオープンな課題)」と題した論文を発表。AI同士・AIと人間の協調に関する未解決の問題を取り上げた。
その後、マルチエージェント環境でエージェント同士が、自発的に「秘密の共謀」を行う能力を持つとの研究も相次いでいる。
2025年2月、Dafoe氏らが中心となって設立された英国の非営利研究団体「Cooperative AI Foundation(CAIF)」は技術報告書「Multi-Agent Risks from Advanced AI(高度なAIがもたらすマルチエージェントリスク)」を発表した。その中で、「個々のAIシステムのアラインメント(AIの目標や行動を人間の意図に合わせる調整)だけでは、より広い安全性の確保には不十分だ」と結論した。
特にマルチエージェント環境では、アラインメントのできたエージェント同士でも破滅的な結果を招き得ると報告している。