特別企画
学校導入? 家庭負担?――学校タブレット導入ケース別のメリット・デメリット
(2014/6/20 06:00)
「一人一台・学校導入」~三雲中学校の場合
三重県松坂市立三雲中学校では、総務省における実証研究「フューチャースクール推進事業」の実証校の1つとして、一挙に約500台ものiPadを導入し、全校生徒一人一台のタブレット環境を整えた。タブレットは学校導入となっており、教室内のタブレット専用キャビネットにて保管。そのほか、電子黒板・実物投影機・教師用PC・Apple TVが4点セットとして、各教室や体育館などに配備されている。
同校 研究主任の楠本誠氏によると、「もともとiPadを持っている先生はおらず、情報教育に関する研究も過去に行われたことはなく、ゼロからのスタートだった」という。それが一挙に数百台もの端末、無線LANなどがそろい、「夢のような話だった」と当時を振り返る。
その一方で教師間には不安が漂っていた。「部活動が忙しく研修を受ける暇がない」「効果あるの?」「ネット利用で生徒がトラブルに巻き込まれないか」「故障したらどうするの?」「視力や書く力は低下しないか」「システムトラブルは誰がサポートしてくれるの?」といった声が挙がったという。
「最初は使いこなそうと意気込んだため、空回りすることもあった」というが、それでも導入から3年が過ぎ、最初に教師が触る時間を取ったり、全体研修に加えて職員室内での研修も行うほか、現場で試行錯誤しながら慣熟へ。
今では主要5教科から、体育・技術・美術、はては生徒会選挙まで、まさに全方位でタブレットを採り入れている。試行錯誤を通じて、先生の話を聞く際はタブレットを裏返しておくなどのルールも整備されていった。
では、一人一台・学校導入のメリット・デメリットは何だろうか。一斉導入だったため、ここでは活用面での効果と課題という形で説明された。
楠本氏が効果として挙げたのは「個に応じた学びの提供」「振り返りの促進」「使い方の共有」の3点だ。「一人一台のタブレットがあるので個に応じたきめ細やかな学びができる。本年度からは持ち帰り学習も検討する予定で、保護者への説明を進めてきた」という。
持ち帰り学習の実現に向けては、家庭のネット環境整備率が75%程度なため、単元ごとの教材をダウンロードする機能を実装するなど、オフラインでの活用方法を確立させる。また、今までは学校ネットワークの出口にWebフィルタリングを導入していたが、端末ごとに同機能を搭載する予定だ。あとは「大人のいない一人学びをどうするかを考えなくてはいけない」と語る。
「振り返りの促進」としては、学習履歴を見られるのが大きい。「実験を動画や写真で記録し、子どもがもう一度見る。音や色を残すことができ、オシロスコープの波形のような本来目には見えないものも可視化できる」(楠本氏)。
一方、課題として挙げたのは環境整備と学習規律の徹底だ。「例えば、約500台が動かせるネット環境なのか。それも8時間で500台ではなく、最初の10分で500台が一斉に動くので、相応のネット環境が必要となる。また、使っていくうちにアプリのデータ量も大きくなってくるので、端末には何を保存するかを考え、勝手にデータを保存してはいけないなどのルールを整備する必要がある。持ち帰りの際は充電をどうするかも課題。端末の故障も発生しているので、今後、学校と家庭のどちらで負担するのかなども考えていかなければならない」という。
効果 | 課題 |
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・個に応じた学びの実現 ・振り返りの促進 ・使い方や操作法が共有しやすい | ・ネット環境、データ保存などの環境整備 ・持ち帰りの管理、充電 ・学習規律の徹底が必要 |